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第零話

 「どぅわ~~~~~~~・・・・・!!!!!」

 『落ちる!落ちる!落ちる!落ちる!落ちる!』


 気付けば、俺は空から雲を抜け地上に向かってまっ逆さまに、凄まじい勢いで落下していた。


 一瞬で俺は怒りでパニック状態となり、「ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!」と、手足をバタつかせたが、そんなことで勢いが弱まるわけもなく地面にまるで吸いつけられるように落下していく。


 『俺も、これまでか・・・・』と、覚悟を決めると、これまでの人生がまるでフラッシュバックの様に頭に浮かぶ・・・・




 『なぜ、こんな事になってしまったのか・・・』


 俺の家族は、母1人子1人の母子家庭だった。俺の父親はどうしようもないチンピラで、ある日、喧嘩で呆気なく死んでしまったのだそうだ。


 お袋は昼夜関係無く働いて、女手一つで俺を育ててくれた。俺は、そんなお袋に心配掛けないように学校や近所では真面目な優等生を演じてきた。

 

 まあ、昔から腕力と体力はあって、小さい頃は喧嘩で負けたことが無かったので、近所では下手なちょっかいは掛けられなかったと言うのもあって、ぼろもでなかった。


 それに、やはり子供心にお袋に心配かけたくないという思いが強くて、からかわれてもかなり我慢が出来ていたと思う。


 そんなこんなで、小学校中学校では問題なくすごした。


 しかも、中学二年には気立てが良くて学校で俺と一・二位を争う才女、その上、校内でトップクラスの美女という彼女が出来た。

 彼女とは家族ぐるみでの付き合いとなり。俺は、この大切な人たちを守っていきたいと思った。


 今、考えるとこの頃が一番幸せだったと思う。


 この頃には、お袋が立ち上げた事業が軌道にのり財政的にも豊かになっていた。


 しかし、幸せというものは、永遠には続かないものらしい。


 俺が、高校一年のときお袋が突然死んだ。過労死だった。


 その時、近所の不良がほざきやがった・・・俺が、お袋の葬儀を終え初めて学校に登校したとき、「お前のお袋は、夜のネオン街で毎晩、男とやりまくって体がボロボロになって死んだんだってなー。」と、その瞬間、俺はキレた!!


 俺は、駆け付けた教師に羽交い締めにされるまで、奴の顔が原形をとどめなくなっても殴り続けていた。俺は、それから2週間停学となった。


 その日の夜、彼女の母親から電話がかかってきた、「娘が帰ってこない」と。俺は、それから1週間思い付く限りのところを探し回った。


 そして、見つかった。


 朝早くの学校で、飛び降りて死体となった彼女が。


 俺は、彼女の死体の前で発狂しそうになっていた。

 周りでは野次馬と、それを散らそうとしている警察官がいた。


 野次馬が噂をしていた、「彼女が1週間、不良どもに、犯され続けて身も心もボロボロにされていた」と。


 随分離れたところに、俺がフルボッコにした不良の仲間がこちらを見て嫌らしい笑みを見せた。

 俺は、その顔がすぐ目の前に見えた様に感じた瞬間、頭の中で何かが弾けた、と同時に記憶が途切れた。


 次に、気が付いたら、俺は不良共が溜まり場にしていた潰れたゲームセンターで、血溜まりの中に立ち手を真っ赤に染めていた。


 そして、俺は警察に逮捕され少年院に入れられた。


 後で聞いた話では、不良達は、顎を砕かれた者、腕を折られた者、足を折られた者、目を潰された者が多数、そして、全員・玉を潰されていたと聞いた。

 それを俺が、全部やったらしい。


 その日から、俺は怒り以外の感情を全て失った。


 それから、俺は身を持ち崩し喧嘩に明け暮れた。

 二十歳はたちになる頃には周りからさげすまれ、ヤクザやチンピラからは狂犬と呼ばれるようなどうしようもないクズに成り下がっていた。


 そんなある日、俺は食い物にしていた女に呼び出された、「一緒に旅行に行こ」と。


 俺達は、彼女の車で温泉を巡り海に来た。

 その海辺を二人で散歩した。

 彼女は楽しそうに微笑んでいたが、俺にはなんの感情も浮かばなかった。


 そうして岬まで来ると、風がふぶいて彼女の母親の形見だと言うスカーフが飛ばされた。

 俺は反射的にそれを追いかけ崖の手前で掴まえた。その瞬間、彼女が背中から抱きつき、「一緒に死んで」と、崖から俺もろとも海へ飛び込んだ。

 俺は落下の途中、何故か、『彼女だけは助けたい』と、強く思った。

 そして、なんとか背中の彼女を前に持ってきて、彼女の頭を抱き抱えて海に突っ込んだ。





 ・・・・『彼女は、無事だろうか?気立てはよかったから、俺が居なくなればきっと幸せになれるだろう。』と、思っていると、突然、死んでしまいそうな位の押し潰されるような激痛が全身に走り、肺が押し潰され、「か、はー!!」と、肺の中の空気が全て押し出された。と、同時に、目の前に真っ白な強烈な光が瞬いたかと思うとすぐ真っ暗になった。


 『結局、俺は、大切な人を、誰も守れないのか‥‥‥』


 それから、どれくらい時が経ったのか。


 全身に激痛が走るのを感じながら目を覚ますと、目の前に怪物が立ちはだかっていた。


 体長はアフリカ像の3倍以上あるのではないかと思われる巨体で、ライオンの様な(たてがみ)を持ち虎のような顔と体で全身に虎縞模様、尻尾は巨大なコブラが生えておりこちらを威嚇している。


 口のまわりには血糊がベッタリとつき、血が地面にしたたり歯には噛み千切られた人の腕がぶら下がっていた。


 そいつが今まさに俺に食らいつこうと、巨大な口を開き迫ってきた。


 俺に普通の感情があれば、身動きがとれなくなるか脱兎のごとく逃げ出していただろうが、今の俺には怒りの感情しかない。

 全身の痛みへの怒りと理不尽な俺への攻撃に対する怒りが俺の頭の中で爆発し、その化け物の顎に下から上へネジリ込むように拳を突き上げた。すると、バゴオン!!と、いって化け物の頭が木っ端微塵に吹き飛んび、体が膝から崩れ落ち地に倒れ込んだ。


 俺は一瞬呆気に取られたが、ふと、周りに人や化け物の気配を感じ後ろを振り返ると、そこに1人の女性がヘタリ込んでいた。

 俺はその女性の顔を見て、「お袋!?」と、口に出してしまった。

 なぜなら、その顔はお袋の若い頃の顔にそっくりだったのだ。

 いや、よく見てみると顔つきは似ているが、お袋より目鼻立ちがはっきりしており、髪は綺麗な銀髪で瞳は深い藍色をしており、お袋より遥かに別嬪な欧米人だった。

 しかし、服装はなんとなく違和感のある和服を着込んでいた。


 俺はその女性に近づき、「ここは、何処だ。お前は誰だ。」と、声を掛けようとした瞬間、目の前が真っ白になり意識を失った。

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