再会(前編)
珍しく連続投下です。
お昼の休み時間も終わり、由美と麗華と和美は午後の授業に戻るので凛は一人で時間を潰そうと思っていたのだが、運悪く廊下で暁とバッタリ会ってしまったのだ。
暁は又もや独裁者ぶりを発揮して、午後からも凛に授業を受けるように命令したのだ。
暁の事を黙っていた見ていた麗華だったが、余りの態度に段々と腹を立てて抗議を始める。
暁と麗華の言い争いは15分も続いたのだが、暁の前には麗華も歯が立たず、凛は午後からも授業を受ける羽目になった。
由美達が暁の文句を言ってる中、凛は凄く楽しかった。
(やっぱり、学校って楽しいな〜これも、お兄ちゃんのお掛けだね!)
凛はそう思いながら教室へと向かった。
午後の授業も終わり、凛は由美と二人で下校していた。
「麗華って、本当にしょうがない子よね!」
「私の為に麗華さんが………」
「気にしない方がいいって!あれは麗華の性格だからしょうがないのよ!」
「でも……和美さんが巻き添いになって………」
「た、確かに和美は流石に可哀想だと思ったよ………」
由美も凛も黙り込んでしまった。
今から遡ること10分前の出来事だった。
昼休み終わりに暁とバトルを繰り広げた麗華はだったが、どうしても暁の事か許せなかったのか、放課後になると直ぐ様、職員室にいる暁の元へ再び抗議をしに向かったのだ。
そんな麗華を和美が必死に抱き付いて止めようとしたのだが、パワーに自信がある麗華は和美を引きずりながら、職員室に到着したのだ。
「和美さん着きましたわ!」
「えっ!!?つ、着いたの?」
「参りますわよ!」
麗華が暁の前に立つ、暁は不敵な笑みを浮かべて麗華を見た。
「来ると思っていたぞ!ヒヨッコ!」
「だ、誰がヒヨッコですって!?」
「今度は仲間を連れて来たようだな!」
暁はそう言いながら和美を見る。
「わ、私は関係ありません!!」
必死に否定する和美の言葉など無視して麗華が戦闘状態に入る。
「頼みますわよ!和美さん!!」
「来い!ヒヨッコ共が!!」
「だから、私は関係ないってーーー!!」
そして、ただ止めようとしていた和美を巻き込んで、暁と麗華の戦いのゴングが鳴ったのだった。
遠い場所から、一部始終を見ていた凛と由美にはどうする事も出来なかった。
「可哀想な和美………」
「何でこうなったの………」
と、いう事があったのである。
由美は先程から和美と麗華のことで、落ち込んでいる凛を思って話題を変えた。
「そういえば、篤はどうなってるの?」
「お兄ちゃんですか?」
「うん、凛ちゃんの中に今いるんだよね?」
「はい、確かにお兄ちゃんの存在は感じるのですが………」
「どうしたの?」
「私が語りかけても、返事をしてくれないんです………」
「それって……ヤバイの?」
「そんな事は無いのですが…このままだと、私がずっと表に出た状態になってしまうのです!」
「成る程ね!だから、さっき凛ちゃんが篤に戻れなかったのね!」
「その通りです!だから、お兄ちゃんが表に出て来ないと、私と入れ替わる事が出来ないのです」
「なら、いい機会だし今を満喫しちゃえばいいじゃん!」
「で、でも……」
「いいのよ!凛ちゃんは長い間、一人で過ごして来たんだから、幸せになる権利はあるはずよ!!」
「………いいのかな?」
「いいのよ!」
由美は凛の手を握ると、家へと走りだした。
由美と凛は海外家の前に着いていた。
由美がチャイムを鳴らそうとボタンに手を伸ばす。
「待って由美さん!!」
突然、凛が由美を止める。
「ど、どうしたの急に?」
「やっぱり、私はお母さんに会うべきではないと思うんです………」
凛の言葉に由美は驚く。
「どうして?……会いたくないの?」
由美の言葉が胸に突き刺さる。
凛は本当は母親に会いたかったが、あの時の記憶が蘇る。
篤の中から見た、あの記憶が………
冷たくなった自分の身体の横で涙を流している母親の姿が………もし、母親と会ってもいずれ別れが来る。その時、母親はまた悲しんでしまうのではないのか?凛はそう思うと、胸が張り裂けそうになる。
やっぱり、自分は母親と会ってはいけない!
凛はそう決意すると心の中で、何度も「会ってはいけない!」と繰りし会いたい気持ちを押し殺した。
「私は本来なら存在しないのです………それに何時かは、消えてしまうのですから、お母さんに2度も淋しい思いをさせたくないんです!」
「そうだったね………凛ちゃんを失って、一番悲しんだのは陽子さんだっよね………気が付かなくて、ごめんなさい………あっそうだ!だったら今日は私の家に泊まる?」
「そうして貰えると助かります!由美さん」
凛は自分の気待ちを理解してくれた由美に感謝した。
「でもね、一つ困った事があるのよね………」
「なんですか?」
「私の家ってお母さんいるじゃん!」
「あっ!」
「多分、凛ちゃんの姿を見たら……直ぐに陽子さんにチクりそうで、怖いのよ!」
「………確かに言いそうです!」
「でしょう!」
「困りましたね………」
「うん、困ったね……」
二人が悩んでいると、突然玄関の扉が開いた。
「人ん家の前で五月蝿いわね!誰?」
不機嫌な顔をした陽子が玄関から顔をだした。
「「!?」」
(よ、陽子さん!?)
(お、お母さん!?)
咄嗟の出来事に由美と凛は固まる。
陽子は家の前で騒いでいたのが、由美だと気付くと普段の表情になり、由美に話し掛けてきた。
「あら、由美ちゃんだったの?誰かと思ったわ!」
陽子の言葉に固まっていた由美は、ぎこちなく挨拶をする。
「こ、こんにちは!陽子さん………」
陽子は由美の態度に首を傾げる。
「どうしたの由美ちゃん?何か変よ?あら、そっちの子は由美ちゃんのお友達なの?初めまし………!?」
凛に気付いた陽子は、由美のお友達と思い挨拶をしようとしたが、途中で言葉を止めた。
(ヤ、ヤバイ!!)
凛は咄嗟に顔を隠したが手遅れだった。
陽子は信じられない表情して声を震わせながら言った。
「そんな………貴女……凛なの?」
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