自己紹介
「その子は篤の妹よ!」
「えっ?」
由美の発言に京香は信じられない様な顔をした。
「それは一体、どういう意味なのでしょうか?篤様が急に妹様に変わるなど意味がわかりませんが………?」
「ふ、普通に考えるなら、理解出来ないわよね………私も何でこうなったのか分からないけど、確かにその子は篤の妹の凛ちゃんなのよ!」
「そ、そうなのですか………しかし、御主人様からお伺いしていた内容とかなり違うで取り乱してしまいました。」
「しょうがないわよ!普通に考えるならこんな事はあり得ないからね!」
「申し訳御座いません………メイドとしてまだまだ修行不足でした。」
「そんな、謝らないで下さいよ!」
「いえいえ、そう言う訳には御座いません!」
「………意外と頑固者なのですね!」
「はい、昔からよく言われます。」
「そうなんですか?」
「そうなんです!」
「「……………」」
「「…………ぷっ!」」
「「あははは!!」」
二人は会話が路線からズレだ事に気が付くと、思わず笑い出してしまった。
そんな二人に放置されていた凛が恐る恐る二人に話し掛けた。
「…………あの〜」
由美と京香が、あっ!?した表情で凛の方を見ると凛は苦笑いをしながら笑っていた。そんな凛を見て由美と京香は申し訳なさそうに謝った。
「ゴメンね……凛ちゃん」
「私とした事が………申し訳御座いませんでした」
二人が頭を下げて謝ると凛は顔を横に振りながら、笑顔で話し掛けた。
「二人共、顔を上げて下さい。私は全然気にしていませんから!」
「でも………」
「しかし………」
「いいんですよ!それに私が京香さんの質問にハッキリとお答えしなかったのが悪いのですから!」
「そんな事は………」
「もう過ぎた事はこれぐらいにして、改めて自己紹介をさせて下さい。」
「………はい」
「遅れましたが、私の名前は海外 凛です。先程、由美さんが言いましたが海外 篤の妹です。初めまして京香さん!」
京香に向かって頭を深く下げて挨拶をする凛に対して京香も頭を下げて挨拶を交わした。
「こちらこそ、初めまして!私はこの屋敷のメイドの天音 京香と申します。」
「えっ?」
由美は京香の苗字を聞いて思わず声を出してしまった。
そんな由美を不思議な思った京香がどうしたのか聞いてみた。
「どうしたのですか由美さん?」
「い、いいえ……なんでもないわ」
「そうですか?」
京香は首を傾げながら再び凛の方を見て話し出した。
「凛様に聞きたいのですが、その天使みたいな姿は一体………」
「これは………私達一族の血が起こす現象なのです!」
「凛様達の一族の血が起こす現象ですか?」
「そうですが、この姿については一族の血だけが原因とは言えないのですが………」
「どういう事ですか?」
興味深々に訪ねてくる京香に凛は少し困った顔をした。
「うーん……どう説明して良いものか困るのですが……私のこの姿は本来は私の姿では無いのです」
「「はい?」」
由美と京香は凛が言っている意味が理解出来なかった。
「えーと、私の現在の身体はお兄ちゃんの身体を借りているのは分かりますよね?」
「う、うん………」
「はい………」
「この姿は、本来はお兄ちゃんの姿なんですよ!私はお兄ちゃんの能力をお借りしているだけであって、本来ならばこの姿になる事は出来ないのです!」
「そ、そうなの?……なら、その姿は篤の本来の姿なの?」
「はい!由美さんの言う通りです!」
「知らなかった………篤と一緒の姿になれるんだ?」
「それはお兄ちゃんの身体……あっ!?」
急に凛はハッ!っとした表情なると額から汗を流した。
「ど、どうしたの?」
由美が心配そうに訪ねると、凛は言葉を詰まらせながら喋り出した。
「お兄ちゃんはこの姿を秘密にしていたんだった………」
「???………一体どうしたのよ?」
凛は独り言の様に喋っていたが、目の前で何を話しているのか理解出来ていない由美に対して聞いて見た。
「あーー京香さんの目の前で変身しちゃった!………見られましたよね?」
「何だか分からないけど、バッチリ見たと思うよ!」
由美の言葉を聞いて凛は京香の方を見て見るとそこには瞳を輝かせて凛の姿を見ている京香の姿があった。
「あちゃー………私、取り返しのつかない事しちゃった………」
凛は〝やらかしてしまった!″と思うと宙から降りて、そのまましゃがみ込んでしまった。
しゃがみ込んでしまった凛に、由美は慌てて駆け寄ると何があったのか訪ねた。
「え、え、一体どうしたの凛ちゃん?」
「すいません……見苦しい姿をお見せしてしまいました………」
「もぉ〜!いきなりしゃがみ込んだりするから、びっくりしちゃったわよ!」
「ごめんなさい由美さん………」
「それで、一体どうしたの?」
「そ、それは………」
「凛ちゃん!!」
「はい!ちゃんと説明します!」
「うむ、宜しい!でっ、どうしたの?」
「実は………お兄ちゃんは、この姿をお母さんと由美さんと美砂子さんの三人以外に見せた事がなかったみたいなのです。多分、秘密にしておきたかったと思うんですが………」
「それを凛ちゃんがバラしてしまったのね?」
「………はい」
凛は申し訳ない表情で頷くと、目に涙を浮かべてウルウルとさせていた。
「どうしよう………お兄ちゃん、絶対怒っちゃう!」
今にも泣きそうな凛に対して由美は優しく語り掛けた。
「大丈夫よ!篤はそんな事じゃ怒ったりしないわよ!」
「でも、私……お兄ちゃんの秘密をバラしちゃった………」
「確かに篤は怒りやすい単細胞だけど……でも、そんな事で凛ちゃんの事を絶対に怒ったりしないわよ!そんなことより、凛ちゃんに会えたんだから気にしないと思うわよ!」
「でも………」
「大丈夫!私が保証するわよ!それに万一凛ちゃんを起こったら、私が篤を怒ってあげるから心配しないで!」
「えっ?だ、ダメだよ由美さん!お兄ちゃんを怒らないであげて!」
「ふふふ……嘘よ!でも、やっぱり凛ちゃんは優しいよね………篤の事を庇うなんて」
「由美さんの意地悪!それに私はお兄ちゃん程、優しくないよ………」
「ううん………凛ちゃんは優しいよ!だって、〝あの時″も私を庇って………」
「由美さん!!それは言わない約束でしょ!」
「そうだったわね……ごめんね!」
「謝らないで下さい。〝あの時″はしょうがなかったんですから………ですから、もう〝あの時″の事は忘れて下さい」
「そうだね………分かった!もう言わない」
「そうですよ!お兄ちゃんのお陰だけど、現に私はこうして由美さんと再び会える事が出来たんですから!」
「そうだね……まだ、夢を見てるみたい!」
「また、そんな事言って!夢じゃありませんよ!」
「篤に感謝だね!」
「そうですね!お兄ちゃんに感謝ですね!」
「「…………」」
「「ぷっ!!あははは!!」」
凛と由美が声を出して笑いあってる中、一人取り残された京香は会話に入るタイミングを計っていた。




