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覚悟!

零は能力を全力で解放して陽子の腕を掴み自分の胸から離した状態だったが、陽子は突然、一瞬だけ零を上回るの程の能力を解放すると零の腕を振りほどき零から一歩下がり距離を取る。


「クッ!?」


零は一瞬だけだったが、自分を上回る陽子の力に怯んでしまった。


そんな零を見て陽子は腕を組んで余裕な表情で零を見た。


「あら、それが貴方の今の力なのね………流石は[黒の刻印]の血を引いている事はあるわね!その辺の人では太刀打ち出来ないわね………でもね………それだけじゃ足りないのよ………」


「そんな事は言われなくても知っています!!」


零は陽子を睨みながら叫んだ。


「そっか………諦めてくれないんじゃ仕方が無いわね………」


陽子は深く溜息を吐きながらそう答えると組んでいた腕を崩し右手を真横にゆっくりと伸ばすと手から光の剣が現れた。


「!?………そ、それは………」


零はその光に見憶えがあった。


その光は先程、自分の兄との闘いで見せた[黒の刻印]の天敵である陽子の能力[白の天御]であった。


陽子は光の剣を完成させると剣を持ち直した。


陽子は光の剣を水平にすると、剣先を零の胸へと狙いをつけて腰を少し落とし構えた。


そして、獲物を狩る様な目付きで零を睨み低い声で話し出した。


「これは私が与えられる最後のチャンスよ………悪い事は言わないわ………あの子の事は諦めなさい!」


「………無理です!!!寛子さんの事を諦める事なんて出来ない!!こればかりは陽子さんが、いくら反対してもこれは俺達の問題だ!!」


陽子の威圧感に怯みながらも零は必死に答えた。


零の言葉を聞いた陽子は、先程とは比べものにならない程の殺気を零に放ちながら零を見た。


「………貴方………本気で殺すわよ………」


「こっちも素直には殺られない!!最後の最後まで抵抗させてもらいますよ………でも、訳が分からないまま闘いたくはありません!せめて理由だけでも教えて下さい!」


「フッ………理由ね………それは私があの子の母親だからよ………」


「えっ!?」


意外な返事に零は思わず呆然としてしまった。


しかし、陽子は今にも零の胸に向けて剣を構えたままでふざけている訳でも無く真剣に答えた様だった。


「別に貴方が嫌いな訳じゃないのよ!むしろ、私も貴方の事は気に入っているわ………でもね……それとこれは別なの………あの子と一緒に生きて行くって事は嫌でもあの子が背負っている宿命の渦に巻き込まれてしまう事なのよ………これから先、危険な事は絶対に起こるはずなの………最悪、命を落とす事もあるかもしれない………だから、半端な気持ちであの子と付き合って欲しくないのよ!もし、貴方が死んだらあの子はとても悲しんでしまう………そしたら、あの子は二度と人を愛せなくなるかもしれないのよ!私はそんな子供の姿なんて見たくないわ!だから、あの子が貴方への気持ちがハッキリする前に恋愛ごっこは辞めて欲しいのよ!………ごめんなさい………私の勝手なわがままで、貴方達を振り回して………」


陽子は悲しそうな表情で零に言った。


そんな陽子の姿を見て零は何かを覚悟したのか、突然右手で陽子が持つ光の剣の刃を握った。


「!?………な、何をしてるの?辞めなさい!この能力は貴方にとって天敵なのよ!早く離しなさい!」


陽子が叫ぶように零に言ったが、零は言う事を聞かず力一杯に刃を握った。


「は、離しません!!」


刃を握る零の手から煙が上がっている。しかし、零は苦痛な表情は見せず掴んだ刃を自分の胸へ持って行こうしていた。


「辞めなさい!!死ぬつもりなの?」


「今更、何を言っているんです?俺は寛子さんの為なら、この命を差し出す覚悟はありますよ!」


「………貴方」


零は刃をどんどん自分の胸に近付けて行き後、1mmで胸に刃が刺さりそうになった時だった。


「!?」


零が握っていた刃が消えたのだ。


零は直ぐに陽子の方を見ると、陽子は顔を横に振りながら溜息をついた。


「負けたわ………私は貴方の覚悟を試す為にしたんだけど、ちょっとでも命乞いや情けない事を言ったら二度とあの子に会わせないつもりだっんだけど………まさか、自分から命を差し出すとは思いもしなかったわ………貴方の覚悟、見せて貰ったわ!」


「有難う御座います!陽子さん」


「でも、一言言わせてもらう事があるわ!」


「な、何ですか?」


「この先どんな事が起ころうが、決してあの子の為に自分の命を犠牲にする事は辞めて欲しいの!………絶対にあの子は一生、自分自身を許せないと思うから………だから、あの子の為にも生きて欲しいのよ………お願い出来る?」


「………はい!約束します!」


零は力強く頷くと陽子が突然、零の刃を握っていた手を握った。


零は突然の事で顔を真っ赤にして慌てた。


「うふふ……傷を治してあげるだけよ!」


「た、大した事ありませんよ!」


「ダメよ!!私のせいで零クンが傷は物になっちゃうでしょ!」


「で、でも、その〜………」


「恥ずかしがらなくてもいいのよ!本当に純粋なのね零クンは………あ〜あ、私がもう少し若ければね………残念ね!」


「そ、そんな事は無いですよ………陽子さんは今も……綺麗だと思いますよ!」


「嬉しい事を言ってくれて、ありがとうね!お世話でも嬉しいわ………でも、あんまり調子に乗っちゃうと、お父さんと娘に怒られちゃうからこの辺で終わり!」


「そうですね!」


二人はそんな会話しながら、傷の手当てをしていた。


「傷の痛みはどう?」


陽子が零の手に治癒能力を掛けながら聞くと、零は首を横に振った。


「大丈夫みたいです!痛みもありませんから……でも、先程の能力を解放したのは、他の皆さんに気づかれたのでは………」


「ん?その事なら大丈夫よ!まぁ〜見てなさい!」


陽子が指を鳴らすと、結界が崩れて行った。


「ねっ!大丈夫でしょ!」


「い、いつの間に結界を創っていたのですか?」


「あの子が、部屋を出て行った直後に創っていたわよ!結界を張らないと鬱陶しいのが起きちゃうでしょ?」


「…………はい」


零は陽子が言っている人物が分かった。


(美砂子さんの事だな………。)


零がそんな事を思っていると、治療も済んだのか陽子が手を離した。


「もう大丈夫見たいね!零クンには迷惑を掛けたわね………ごめんなさい!」


「謝らないで下さい!陽子さんがした事は当たり前の事だと俺も思います!だから、謝らないで下さい!」


「そう言って貰えると嬉しいわ………これからも、あの子の事を守ってあげてね!」


「はい!絶対に寛子さんの事を守って見せます!」


「約束よ………それと、命は大切にしなさいよ!いいわね?」


「はい!」


「よろしい!では、立ち話もキツイから座りましょうかね?」


陽子の言葉に零も頷き二人はソファーに座り込むとテーブルの麦茶を飲んだ。


「では、零クンの覚悟も分かったから、そろそろ零クンが知りたがっている先程の話しの続きを始めるわね………」


「………お願いします」





陽子は何やら昔を思い出す様に、目を閉じて語りだした。

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