二人だけの時間2
暗いリビングで寛子は、零が返事をするのを待っていた。
零は頭の中がパニックのままで、寛子からの質問に答えられるか不安だった。
しかし、目の前に自分の答えを待っている寛子を見てゆっくりと口を開いた。
「お、俺は………君の……」
零は必死に言葉を頭の中で選んで話そうとしたが、全く言葉が纏まらなかった。
寛子は膝の上に手を置いてギュッと拳を作って零の言葉を聞こうと待っていたが、零の言葉が途中で途切れてしまい、再び黙り込んでしまった零を見て寛子は零に謝った。
「変な事を聞いて、ごめんなさい………今、私が言った事は忘れて下さい………」
「え、えっ?ちょっと待ってくれ寛子さん!」
寛子が先程の質問を無かった事にしようと謝ってきたので、零は慌てて寛子の肩を掴むと必死な顔で話し出した。
「待ってくれ寛子さん!!全然、君が謝る事はないんだ!悪いのは、寛子さんの質問にハッキリと答えられない俺が悪いんだ!!」
突然、零に肩を掴まれて目の前まで近寄った零の顔を見て、寛子は顔を真っ赤にして少し顔をそらして零に言った。
「あ、あの〜………零さん………そんなに見つめられると………は、恥ずかしいです………」
「あっ!?………す、すまない………」
零は自分が寛子の顔の直ぐ傍まで顔を近付けている事に気が付き、慌てて寛子から離れた。
寛子は、慌てている零の表情を見てまた、微笑った。
「もぉ〜零さんって、本当に謝ってばっかりですね!」
「た、確かにそうだな………」
寛子と零はお互いの顔を見つめると、"ぷっ!"と吹き出して笑い出した。
「アハハハ……お腹が痛いですよ!零さん!」
「フハハハ……俺も腹が痛い!」
二人はソファーに寝っころがりながら、笑い続けていた。
寛子と零は笑い疲れて、乱れた呼吸を整え終わると零が寛子に話しを掛けた。
「そういえば、寛子さんの空間干渉能力ってどんな場所でもいけるの?」
零の質問に寛子はビックリしたが、零の言った事について少し考え込んだ後に、ちょっと自身なさげに答えた。
「う〜ん………多分、私が知っている場所なら、いけると思けど………」
「そっか………なら、試したい事があるんだけど、ちょっといいかな?」
「うん………でも、何をするんですか?」
寛子は零が一体、何をするのか凄く気になって仕方がなかった。
(零さんは一体何をするつもりなの………凄く気になるよ………)
寛子がそんな事を思っていると、零が突然、寛子の右手を握ってきた。
「!?」
(えっ!?ちょっと、れ、零さん?)
突然手を握られた寛子は心臓をドキドキさせながら顔を真っ赤にしていると、零が寛子に話し出した。
「すまない!驚いただろ!でも、今から言う事をよく聞いて欲しいんだ!」
「は、はい!」
「これから、君の手で俺の頭を触って貰いたいんだ!」
「えっ?零さんの頭をですか?」
「そうだ!それから、君の能力で俺のイメージした場所を読み取って欲しいんだ!」
「そ、そんな事、私に出来るかな?」
「大丈夫だ!自分を信じるんだ!君なら出来る!」
「……………分かりました」
寛子は零の言う事を信じる事にした。
零は寛子の右手を自分の頭にそっと置くと、目を閉じて黙り込んだ。
寛子も意識を集中させて静かに目を閉じて能力を開放し始めだした。そして寛子はサイコメトリーの能力を応用して零の記憶を読み取りだした。
すると寛子の頭の中に、零から風景らしき物が流れ込んできた。
「!?」
寛子は自分の中に流れてきた風景を記憶すると、零の頭から右手を離した。
「れ、零さん………さっきのは?」
寛子が困惑しながら零に尋ねると、零は上手く寛子が読み取ってくれたのを確信して嬉しそうに話し掛けた。
「流石、寛子さんだね!上手く伝わったみたいだね!」
「え、ええ!ハッキリと記憶しましたけど………これからどうすれば良いのですか?」
寛子が少し不安そうに尋ねると、零は寛子の予想しなかった事を言い出した。
「寛子さんの空間干渉能力で、その場所に一緒に来て欲しいんだ!」
「ほ、本気で言っているんですか?だって、私がこの能力を使えるようになったのは最近ですよ!!もしも、移動中に何かあったら………」
寛子は先程より更に不安がっていると、零が寛子の傍に寄って来て寛子をそっと抱きしめた。
「あっ…………」
寛子は零の行動に驚いていた。前に弘雅に抱きしめられた時は嫌な気分になったのだが、零に抱きしめて貰うと不思議と安心して落ち着いてしまう自分がいたので、寛子は内心混乱していた。
(何だろ?この気持ち…………)
寛子がそう思っていると、零が寛子の耳元で囁いた。
「大丈夫!自分を信じるんだ!それに………俺も傍にいるから!」
「はい!」
寛子は零の言葉に頷くと、零の体から離れて右手を自分の正面に突き出して目を閉じると能力を先程より更に開放した。
すると、寛子の正面の空間に人が通れるぐらいの大きな穴が出来た。
寛子は零の方を見てまた頷くと、零も優しい笑みで寛子を見て頷いた。そして零は寛子の右手を掴んで空間の穴に中に一緒に消えていった。
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寛子は零と空間の中を移動している最中に零に先程の場所の事を聞いてみた。
「ねぇ…………零さん!」
「ん?どうした?」
「うん………これから向かう場所なんだけど………一体何処なんですか?」
「それは………」
「それは?」
「着いてからのお楽しみ!」
「もぉ~~!!零さんの意地悪!!」
「怒らない怒らない!着いてからのお楽しみだよ!」
「もういいですよ!!零さん何かキライ!!」
「おいおい!怒るなよ!」
寛子は零に向かって怒っていると、そんな寛子を見て零は嬉しそうにしていた。
二人がそんな会話をしていると、やがて目の前に光の穴が飛び込んで来た。
二人は光の中に包まれると、次の瞬間先程、寛子が零の記憶で見た風景が現れた。
「わぁ~~~…………す、凄い!!」
寛子が見た風景は静かな森の高台で空を見ると星がよく見える場所だった。
手を伸ばせば星に届きそうな感覚で、見渡す限り星一杯だったのであった。
寛子が空の星に見とれていると、零が寛子に話し掛けてきた。
「ここは俺と兄貴と陽菜の秘密の場所なんだ…………」
「えっ?」
寛子はそんな場所に私を連れてきてもいいのだろうかと思った。
「そんな大事な場所に私なんかを連れて来ても良かったのですか?」
寛子がそう言うと零は寛子の方を見て笑顔で答えた。
「ああ………君だから連れてきたんだ!」
「い、いきなり、そんな事言うなんて…………ずるいです………」
寛子は零の言葉に顔が真っ赤で、まともに零の顔が見れなかった。
しかし、零は寛子の傍に寄ると真剣な眼差しで寛子を見つめて話し出した。
「さっきの君の質問に答えるから、聞いてくれ…………」




