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気持ちの行方

陽子は零の言葉に絶句して、零に聞き直した。


「い、いきなりで話しの内容が全く理解が出来ないから、申し訳ないと思うけど、最初から詳しく説明して貰えないかな?」


陽子は濡れた髪を、タオルで拭きながらソファーに座ると零の方を見た。


零が先程の出来事を話すと陽子は最初は呆気に取られた表情をしていたが、やがて眉間にシワを寄せて寛子達の方を見ていた。


陽子に睨まれた寛子と由美は、慌てて陽子との視線をそらして気まずそうにしていた。


そんな中で、それを見ていた美紗子はニコニコして笑みを浮かべて見ていた。


気まずい空気の中で、寛子と由美はずっと顔を俯いていたのだが、突然頭の中に声が聞こえたので、二人は身体をビクッとさせた。


『ちょっと、貴女達!聞こえる?』


『えっ?…お、お母さん?いきなり、テレパシーで話すから驚いたじゃない!!』


『そ、そうですよ!陽子さん……』


寛子と由美は突然、テレパシーで話して来た陽子の方に視線を向けた。


しかし、陽子は睨む様に、寛子達を見ていた。


『貴女達!自分達がやった事、分かっているわよね!』


『『はい………すいません……』』


『全く、どうするのよ!零クンは貴女達も知っていると思うけど、凄く真面目な人なんだから、今更"ごめんなさい……冗談でした!"なんて通じる訳ないわよ!』


『『ごもっともです………』』


『私に助けを求めるぐらいだから、聞くだけ無駄だと思うけど、二人とも何か対策は考えてるの?』


『『………無いです』』


『やっぱりね……こんな事だろと、思っていたわ!』


陽子は溜息を吐きならが、顔を横に振った。


寛子と由美は、陽子に何とか助けて貰おうと必死に謝った。


『何でもするから、お母さん助けて!!』


『陽子さん、寛子を助けて下さい!元々は私が悪いんです!』


二人の必死な呼び掛けに、陽子も何とかしてあげたいとおもったが、目の前にいる零の顔を見てみると、男として覚悟を決めて陽子の返事を待っている零を見て、陽子は顔を横に振った。


『ごめんね………やっぱ無理だわ!』


『えーどうにかならないの?』


『寛子………貴女、零クンの顔を見て御覧なさい!』


陽子にそう言われた寛子は、チラッと零の顔を見てみると、そこには真剣な眼差しで陽子を見ている零の姿があった。


『うん………無理みたい!』


『そうでしょう………貴女達は、からかう相手が悪かったとしか言えないわ!絶対に冗談が通じる相手ではないわよ!』


『で、でも、お母さんが交際を認めないなら大丈夫じゃない!!』


『そうだけど………ちょうど良いわ……寛子、お母さんは反対しないわよ!』


『えっ!?な、な、何を言ってるの?』


『だって、寛子から今まで恋沙汰な話なんて聞いた事なかったし、お母さん結構、心配していたのよね〜!それに、零クンみたいな男の子って、今時いないわよ!』


『そ、それは認めるけど………私は彼氏なんて要らない!!!』


『あら、何でなの?』


『だって、私は今は寛子だげど、篤でもあるんだよ!お母さん、ひょっとして忘れていない?』


『忘れてないわよ!それに、どっちだっていいじゃない!お母さんは早く孫の顔が見たいわ!』


『鬼!!』


『何とでも言いなさい!私は痛くも痒くもないから!』


『この鬼畜!外道!最低○○○!!!』


『ふふ〜ん!私には褒め言葉にしか聞こえないわ!』


陽子は娘に罵倒を浴びせられても、平然として鼻で笑っていた。


寛子はこの母親に何を言っても、効果が無いと思いガックリと肩を落とした。


そのやり取りを黙って見ていた由美は、この親子にどうツッコミを入れて良いのか分からなかったが、由美はある事に気が付いたので、陽子に聞いてみた。


『陽子さん!零さんは【黒羽】の人間なんですが、確か私と寛子に【黒羽】の人間に関わるなって、言いましたよね!』


『ええ、言ったわよ!』


『それなら、認めるのはマズイのではないでしょうか?』


『それはね、【黒羽】に関わると【天羽】に私達の居場所が見つかるから、関わっては駄目って事だったのよ!でも、今は【天羽】に私達の居場所を知られた以上、もう【黒羽】の人間と関わっても問題ないわ!』


『そうだったんですか?』


『そうよ、由美ちゃん!だから、何にも心配しなくていいのよ!』


『………はい』


由美は陽子に、そう言われると黙り込んだ。


そんな中、美沙子は一人、笑みを浮かべでお茶を飲んでいた。


お茶を飲み終えた美紗子が、テーブルに湯飲みを置くと、静かに陽子と寛子に話した掛けた。


「二人とも〜零クンが、返事を待ってるみたいなんだけど〜!」


美沙子の言葉に、陽子も寛子も零の存在を思い出すと、慌てて零の方を見た。


「待たせたわね、零クン!」


陽子がそう言うと、零は顔を横に振り陽子を見て返事をした。


「いいえ、突然こんな事を言い出した俺が悪いので、何時迄も待ちます………」


陽子は零の礼儀正しい態度に、後ろめたさを感じていたが、零を余り待たせるのもいけないと思い、零に返事をした。



「零クン………返事何だけど、別に構わないわよ!どうせ、二人の問題なんだから、二人でよく話し合って決めなさい!」


陽子がそう言うと、零は興奮してソファーから立ち上がると、陽子に対して頭を深く下げて言った。


「有難う御座います!お母さん!!」


ガタガタガタッ!!!


零の陽子に対して「お母さん!!」と言った所に、美沙子以外の三人はコケてしまった。


零は三人を見て驚いたが、自分が言った事で三人がコケた事に気が付いていなかった。


美沙子はそんなコントみたいな状況を見て楽しんでいた。


陽子達は体勢を戻すと、零の言葉にツッコミを入れた。


「ちょっと零クン………交際は認めると言ったけど、まだ、貴方にお母さんって呼ばれるのは認めないわよ!」


「そうよ、零さん!唐突過ぎるのよ!」


「………零さんがこんなキャラだったなんて、何か意外です………」


零は陽子達が言った内容をやっと理解出来たので、顔を赤くして右手で頭をかいて照れながら答えた。


「す、すいませんでした……結構テンパっていて、自分でも何を言ったのか覚えていなくて………でも、寛子さんに対しての覚悟と気持ちは本気です!」


「えっ?……気持ちって、どういう事ですか?」


寛子は零の言葉に、意外な言葉が入っていたので驚いた。


零は寛子の質問に、赤くしていた顔を更に真っ赤にして、話し辛そうだったが真剣な表情で寛子の顔を見ると話し出した。


「あ、あ、あの………」


「な、なんでしょうか?」


「お、俺は今まで女性に対して興味は無かったんだが……は、初めて君と出会ってから、日が経つに連れて、段々と君の存在が俺の中で大きくなり出したんだ………今まで自分の周りには、いないタイプの女性だったし、それに………俺の…こ、こ、こ、好みのタイプだったんだ!!!」


言い切った零は、寛子の顔をまともに見れなくなって思わず下を見てしまった。


一方、寛子は零にそんな事を言われて、頬を赤くして慌てだし、手を振りながら零に言い返した。


「き、急にそんな事を言われても、こ、困ります!」


零は寛子の返事に、顔を上げてガックリした表情をしていたが、やがて普通の表情に戻すと寛子の目を見つめて言った。


「やっぱり、突然こんな事を言って、君を困らせたのは十分に分かっている………俺だけ先走って、君の気持ちを考えないで申し訳なかった………」


零は寛子に頭を下げて謝った。


そんな零を見ていた寛子は、零を黙って見ていたのだが、零が下げて頭を上げるのを確認すると、零に話し掛けた。


「………零さんが先程言った言葉は、本当の気持ちですか?それとも、その場の勢いで言ったのですか?」


零は寛子の意外な言葉に、目を大きくしてたが自分の気持ちに偽りなど無く本心で思ったので、寛子に向ってハッキリと答えた。


「ああ、嘘、偽りなど無い!本当に俺は思った事を言った………」


「そうですか………」


寛子は、零の言葉を聞くと静かに黙り込み、何か考えていた。


少しの間、沈黙した中で時間だけが流れた。


寛子と零を黙って見ていた陽子達も、息を飲んで寛子の言葉を静かに待っていた。


どれほどの沈黙が流れただろうか?

零は緊張で、手が汗ばんでいるのが分かった。


そんな中、寛子は何やら決心したみたいで、静かに零の方を見るとゆっくりと口を開いた。


「零さんの気持ちは、よく分かりました………そんな事を言われたのは、余り経験が少ないので戸惑ってしまったけど、とても嬉しかったです………でも、零さんに対する私の気持ちは、今は自分でもよく分からないから何とも言えないのです。だから………」


寛子はそこまで言うと、言葉を詰まらせた。


零は今までの、寛子の言葉からして大体の予想は出来たので、内心少し落ち込んでいた。





零がそんな事を思っている中、寛子が話しの続きを話し出した。

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