女の中に男が一人
陽子の爆弾発言から、どれほど時間が過ぎたのだろうか……
寛子達は未だに固まったままであったが、見兼ねた陽子が三人を現実に戻す為に、話し掛けた。
「ちょっと!何時までそうしているの?」
「「「!?」」」
寛子達は陽子の言葉で我に返った。
「ち、ちょっとお母さん!マジて言ってるの?」
陽子は娘の質問に首を傾げて言った。
「もちろん本気よ!寛子こそ何言ってるの?」
「何って!零さんも泊める気なんでしょ!普通に考えておかしいでしょ!」
「もちろんよ!別に寛子と一緒に寝せる訳じゃないんだし、別にいいんじゃないの?ひょっとして寛子………零クンの事が気になるの?」
「な、何言ってるのよ!そんな事ないよ………」
寛子は頬を赤くして否定したが、言葉の最後の方は小さくなってしまったので陽子はニヤリとして言った。
「そんなに否定しなくてもいいんじゃないの?何か怪しいわね!」
「そ、そんな事ないよ!」
「本当に〜?」
「お母さんしつこいよ!」
「あらあら、そんなに怒らなくてもいいじゃない!」
「お母さん………からかっているでしょ!」
「別にからかって何かないわよ!」
陽子はニヤニヤした表情を、真剣な表情に切り替えて答えた。
寛子は母親の表情を見て怪しいと思った。
二人がそんな会話をしている中で零は頭を痛めていた。
(こんな無茶振りは初めてだ………どうすればこの状況を打破出来る?考えろ!)
「ふふふ………悩んでいるわね〜」
「誰だ!?」
「わ・た・し・よ!」
零が声のする方を振り向くと、そこには怪しい笑顔を浮かべた美紗子がいた。
「み、美沙子さん………」
「零クン…今、どうやってこの状況を切り抜けようか考えていたでしょ〜!」
「クッ!!」
(どうする!考えが読まれている……この人まで参戦すると俺の手には負えなくなる!!)
「図星かな〜!何か面白い事になってきたわね〜
!」
「…………」
(た、楽しくねーーーー!!この人は絶対にこの状況を楽しんでいる!!)
零は背中に汗を流しながら、一歩後ろに下がった。
しかし、美沙子は怪しい笑顔を浮かべたまま下がった零を追い詰める様に、零の前に一歩進んだ。
「な、何ですか美沙子さん?」
「あら〜零クンが下がったから、私が進んだだけよ〜!それより、何か言いたそうね〜?」
「い、言う事など………何もありません!」
「そうなの〜?でも、間が空いたわよ〜!どうしてかな〜?」
「………美沙子さん……俺で楽しんでいますよね………」
「そんな事ないわよ〜」
美沙子の表情を見ていた由美は思った。
(いや………絶対に、零さんで楽しんでいる!)
零は美沙子にこれ以上、何を言ってもネタにしかされないと思い、何も言わない事した。
無言になった零を見て美紗子は陽子の方を見て言った。
「そっちの話しは終わった〜?零クンも観念してくれた見たいよ〜!」
「えっ?」
零は自分の意思とは関係なく話しが進められたので、驚いて声を出してしまった。
しかし、陽子はこの流れを見逃さなかった。
「そうなんだ!零クンの気持ちは、よく分かったわ。今夜は楽しそうね!と、言う訳だから寛子いいわね!」
「ぐっ!?………零さんが、そこまで泊まりたがっているなら仕方がないわ………分かったわよ!」
(おい!!俺は一言もそんな事は言ってないぞ!!)
零は陽子と寛子の会話にツッコミを入れたかった。
そんな零の気持ちを知らずに、寛子は母親の言葉に反論出来ずに返事をした。
(何なんだ!!この流れは………俺に発言権は無いのか?いや、その前に俺に人権は無いのか?!これは、神が与えた試練なのか!?)
零はガックリとその場に膝をついてしまった。
そんな零を見た由美は、零の肩に手を添えて言った。
「零さん………これからが本当の地獄ですよ!」
「ああああ……」
零は余りのショックに自分で、何を言っているのか分からなかった。
そんな零の両腕をガッチリと掴んで、陽子と美沙子は零を家の中に連行していった。
寛子達は家の中に入ると、一階のリビングのソファーに座ると、今日の出来事で皆は汗をかいていたのでお風呂に入る順番を話し合っていた。
中々、決まらないので、陽子が皆に聞いてみた。
「ね〜美沙子!順番どうする?」
「そうね〜……子供達に先に入って貰おうかしら〜?」
母親達に、そう言われた寛子と由美は「いいよ!」と返事をしたが、寛子は一つ疑問に感じたので聞いてみた。
「まさかと思うけど………一人ずつだよね?」
寛子の言葉を聞いた陽子が返事をした。
「寛子……何を言っているの?時間も遅いんだから、二人で入るに決まっているじゃない!」
「えーーーーーー!」
「そんな事を言ってもダメよ!それに前に由美ちゃんとは、一緒に入ったじゃない!今更、恥ずかしいなんて言わせないわよ!」
「そ、そんな〜………」
「諦めなさい!じゃあ、由美ちゃん頼んだわ!着替えは準備してあるからね!」
「はい、分かりました!」
「二人とも、話しを聞いて!!」
陽子にそう言われて由美は返事をすると、嫌がる寛子を連れてお風呂場に連れて行った。
お風呂場に着くとさっそく由美は服を脱ぎ始めて、下着姿になると寛子の方を見て言った。
「ねえ?何でこっち見ないの?」
いきなり、下着姿になった由美の方を見る事が出来ないで、顔を真っ赤にしている寛子は由美に言い返した。
「そんなの無理に決まっているじゃない!」
「もう、お互いの身体は見てるでしょ!何を恥ずかしがってるのよ!」
「そんなの事言われても………恥ずかしいもん!」
「後が詰まっているんだから、早く脱いで脱いで!」
「ち、ちょっと!」
由美は嫌がる寛子の服を脱がせて裸にすると、寛子は近くにあったタオルで身体は隠した。
「ちょっと、由美!勝手に服を脱がさないでよ!心の準備も出来なかったじゃない!!」
「心の準備なんて要らないから、早くお風呂に入ろうよ!もう、汗でベタベタで気持ち悪いのよ!」
「………話しを聞け!!」
「はいはい、聞いてわよ!早く中に入ろうよ!」
「………聞いてないでしょ!!」
由美はそう返事をすると、下着を脱いで嫌がっている寛子の手を握ってお風呂場に入っていった。




