監視者3〔パートナー〕
美紗子は微笑みながら、愛奈の顔を懐かしそうに見つめた。
「懐かしいわね〜。あんな小さい子供がこんなに立派になるなんてね〜!」
愛奈は美紗子が言った言葉に最初は驚いていたが、次第に笑顔になり目を輝かせながら美紗子を見た。
「み、美紗子様………憶えていらっしゃたのですね……嬉しいです!」
「当たり前じゃない〜!こんな、可愛い子を忘れる訳ないじゃない〜!」
美紗子は笑顔で答えた。
しかし、陽子は不安そうな顔をして美紗子の横顔を見ていた。
(ちょっと、本当に憶えているの?美紗子………)
美紗子は陽子のそんな思いなど、知らずに愛奈と会話をしていた。
愛奈は先程から美紗子が憶えていてくれたので、嬉しくて堪らなくて興奮していた。
影二は愛奈と陽子達との間にそんな事があったのを知らなかったので、美紗子と愛奈の会話を聞いて驚いていた。
「ちょっと待て、愛奈!そんな事があったなんて初耳だぞ!」
愛奈は影二の顔を見て溜息を吐いた。
「当たり前じゃない!影二には話したことないんだから!」
「話してないって………普通はパートナーには話すだろ!」
影二がそう話すと愛奈は軽蔑した目で影二を見た。
「はぁー?何で影二に私の過去まで話さないといけないのよ!影二とは、ただのパートナーでしょ!ひょっとして、影二は私の秘密が知りたいの?」
「ば、馬鹿を言うな!た、確かにそうだが………お前の事がし………だよ!」
「ねえ、何って言ったか聞こえないよ!」
「………」
影二は言いづらかったので、最後の方が小さい声になって喋ったので、愛奈は聞き取る事が出来なかったので影二に聞き直した。
「ねぇ〜最後の方、何て言ったのよ?」
「そ、それは………お前の事が………」
「聞こえない!男ならハッキリと言いなさいよね!」
「もういい!こ、この話はもう終わりだ!!」
影二は顔を真っ赤にしながら話しを終わらせた。
「何勝手に終わらせているのよ!」
愛奈は自分から話しを始めたのに、勝手に終わらせた影二に不満な顔をしてブツブツと文句を言っていた。
陽子と美紗子は二人の会話聞いていて、ニヤニヤして影二の顔を見た。
「はは〜ん、そういう事ね!」
「影二クン………頑張ってね〜!」
影二は二人の言葉にギクッ!としながら、慌てて言った。
「よ、陽子様と美紗子様は何を言っているんですか!自分は別に愛奈の事など気にしてません!」
影二は陽子と美紗子にそう言うと、陽子と美紗子は目を細めて影二を見た。
「あら、私が言いたかったのは、二人はパートナーだったんだと言いたかったのよ。誰も愛奈ちゃんをどう思っている何て聞いてないわよ。ねぇ〜美紗子!」
「そうよ〜どうしたの影二クン〜?でも、そんなに否定しちゃって何か怪しいわね〜。ひょっとして影二クンって愛奈ちゃんの事が本当は気になっているんじゃないのかな〜?」
「そ、そんな事はありません!」
「なら〜愛奈ちゃんに良い人を紹介しちゃおっかな〜!愛奈ちゃん可愛いから、直ぐに彼氏が出来るわよ〜!」
「本当に美紗子はお節介好きよね!でも、面白いかもね!」
「そんなの駄目です!」
「あら〜影二クンは愛奈ちゃんの事なんて気にしてないんでしょ〜?」
「そうよ!愛奈ちゃんは、ただのパートナーなんでしょ?」
「そんな事ありません!!自分はあいつの事を大切に思っています!」
陽子と美紗子はニヤニヤしながら、影二を見た。
「言ったわね!」
「そうね〜!」
「!?………」
影二は顔を真っ青にして陽子と美紗子の顔を見て思った。
(最悪だ………はめられた………)
しかし、鈍感な愛奈は三人が何を言っているのか分からなかったので、何かムカついて影二に肩パンチを放った。
「痛!?………お前、無言で肩パンはやるなって言ったよな!」
影二は殴られた肩を摩りながら、愛奈の方を見ると愛奈は頬を膨らませて影二の顔を見ていた。
「だって、私が分からない事を陽子様達と話すから、何かムカついたの!」
「お前………本当に分かってないのか?」
「だから、早く説明してよ!」
「お前って………ひょっとして鈍感?」
「ど、鈍感って何よ!失礼ね!!」
影二はガックリと肩を落として深く溜息を吐いた。
その姿を見ていた陽子と美紗子は苦笑いをしていた。
「苦労するわよ影二クン………」
「長期戦になるわね〜………覚悟しといた方がいいわよ〜」
「………はい」
三人の会話を聞いていた愛奈は、未だに理解出来ずに頬を膨らませていた。
寛子と由美も母親達の会話を聞いていたが、寛子は一体何を話しているのかが分からなったので、こっそり由美に聞いた。
「ねぇ、何を話しをしているの?由美は分かった?」
その質問に由美は唖然として、寛子を見て言った。
「ち、ちょっと、本気で聞いてるの寛子?」
「うん!本気で聞いてるよ!」
「………ここにもいた!愛奈さんに負けてない鈍感が………」
「ちょっと、凄く失礼な事を言ったでしょ!」
「うん!言ったよ!」
「私の何処が鈍感なのよ?」
「寛子………ちょっとは自覚した方がいいよ………」
寛子は由美に鈍感と言われて、頭に来たのか零の方を見て聞いてみた。
「零さんは、分かったの?」
(………俺に振るな!!)
零は咄嗟に寛子に振られたので、苦笑いをしながら答えた。
「ああ……分かったよ!」
「本当に?流石は零さんだね!」
「………寛子さんは本当に分からないのか?影二と言う男の気持ちが?」
「何で?影二さんの気持ちが関係してくるの?」
寛子の答えに、零も唖然として由美の方を見て聞いた。
「由美さん………寛子さんは大丈夫なのか?」
零の質問に由美は顔を横に振った。
「恐らくは末期です………」
「そうか………」
「零さんも覚悟しといた方がいいですよ!」
「な、何を言っているんだ!」
零は由美に言われた言葉に慌てた。
由美は零の慌てぶりに笑いながら思った。
(へえ〜、零さんもこんな表情するんだ!)
一方、寛子は自分だけ話しについていけないので、ムスッとしていた。
寛子達を眺めていた陽子と美紗子は苦笑いをしていた。
「陽子〜………貴女の娘も重症みたいよ〜!」
「………それ以上言わないで、美紗子………」
陽子と美紗子が話しをしていたが、愛奈が二人に話しを掛けて来た。
「取り込み中すいませんが、そろそろ本題に戻っても宜しいでしょか?」
愛奈の言葉に陽子と美紗子は会話を止めて、謝った。
「ごめんなさいね!話しが脱線していたわね!ちょっと待ってね!寛子!由美ちゃん!零クン!ちょっといいかしら?」
陽子に呼ばれた三人は陽子の顔を見ると、返事をした。
「何、お母さん?」
「何でしょうか?」
「何ですか?」
陽子は三人が返事したのを確認すると、聞いてみた。
「あなた達、本当に私達の実家に行きたいの?」
陽子の質問に寛子は由美と零の顔を見て頷いた。
「「「行ってみたい!!」」」




