闘いの行方(中編)
男は陽子の自信満々な台詞に対して、鼻で笑って言った。
「フン!………誰をボコボコするんだ………?」
男の態度に陽子は頭に青筋を立てて、男に言った。
「まあ〜見てなさいよ!絶対に後悔させてやるからね!」
陽子は構えると、両手に光の膜を作り出すと、男に一直線に向かって行き、交互に拳を男の顔を狙って繰り出した。
男は陽子の両手から放たれる拳を、余裕の表情で首を振って交わしながら、陽子に言った。
「………そんな単純な攻撃が当たるか………ガッカリしたぞ………」
陽子はただ空を切る拳を繰り出しながら、男に言い返した。
「ふふふ………そんな事を言っていられるのも、今のうちよ………喰らいなさい!」
「!?」
陽子は、男の目の前で両手で猫騙しすると、両手から眩しい程の光が溢れ出して、男は思わず目を閉じた。
直ぐに陽子は両手と両足に光を纏って構えると、男に向かって攻撃を始めた。
「覚悟はいいかしら?行くわよ!」
まず男の腹に右足で前蹴りを入れると、男の身体はくの字の体勢になったので続けて陽子は攻撃をした。
「まだまだ!」
次に男のがら空きの顎に向かって右手を下から勢いよく上に向かって拳を振り上げるて男の顎に拳を当てると、男は後ろによろけたので陽子は休む暇を与えない為に、男の腹や顔に交互に拳と蹴りを繰り出しながら乱舞していた。
陽子は、男を決して倒れないように攻撃を繰り出していた。
男が倒れそうになると直ぐ様、顎にアッパーを当てて男の身体を起こす感じにして、また乱舞を繰り出していた。
それを見ていた四人は陽子のえげつない攻撃に茫然としていた。
寛子が思わず、口を開いた。
「………ねえ?零さんのお兄さん………死んじゃうんじゃないの………?」
寛子の言葉に由美が答えた。
「………わ、分からないけど………流石に意識はないんじゃないのかな………?」
次に零が口を開いて喋った。
「………由美ちゃんの言う通り、多分意識は無いだろう………陽子さんは両手、両足に[黒の刻印]とは真逆の能力[白の天御]を纏いながら乱舞技を決めているから………兄貴にしてみれば、陽子さんの一撃、一撃が相当、効いているのだろう………意識が無い方が幸せだろう………それにしても、兄貴も相手が悪かったな………」
寛子と由美は、まだ続いている一方的な殺戮を見て、目を閉じて手を合わせて言った。
「「迷わず天に召されて下さい………」」
その行動を見ていた美沙子は声を上げながら笑っていた。
「アハハハハ………可笑しい過ぎる〜………アンタ達、そこは手を合わせる所じゃないでしょ〜!………はあ~~お腹が痛いよ〜……」
美沙子は、お腹に手を当てながら必死に笑いを堪えようとしていた。
そんな母親を少し呆れて見ていた由美は思った。
(こんな状態で笑っていられるお母さんてどんだけ肝が座っているのよ………それに……最近のお母さんのイメージが壊れていく感じがする…………)
由美がそんな事を思っている中で、美沙子は笑いながらも小さく呟いた。
「陽子………早く気付いた方がいいわよ〜………」
美沙子の言った言葉は、寛子達には聞こえなかった。
寛子達がそんな事をしている間にも、陽子は休ます男に対して打撃を当て続けた。
陽子は攻撃をしながらも疑問を感じていた。
(………おかしいわね?………もう、とっくに意識を失っている筈なのに、結界が解除されていない………)
陽子はこのまま、留めを刺そうと思い、思いっ切り右足で男の腹を蹴り上げると男は3m程、宙に浮くと陽子は両手で目の前に光の円を描くと円は魔法陣みたいに円の内側に文字らしく物が浮き上がり光陣が完成すると、陽子は叫んだ。
「塵となれ!天羽流 天覇光斬波!!」
陽子がそう言うと、光陣から、8個の光の球が現れると光の球は回りながら光陣の中心に集まり、一つの光線となって男に向かって一直線に飛んでいった。
一つになった光線は男に直撃すると、男を身体を包み込んで男の身体ごと吹き飛ばした。
光線と一緒に吹き飛ばされた男の身体は、光線から弾き出されて落下して行き、そのまま地面に叩きつけられて倒れた。
陽子は少し息を乱して、横たわっている、男を見て思った。
(………余り、手応えを感じなかった………あの男は何かしているわね………)
陽子は倒れている男をずっと見ていると、倒れている男が起き上がった。
「「「!?」」」
男が起き上がるのを見ていた寛子達は思わず絶句した。
寛子達は絶対に陽子の攻撃で勝負は着いたと思っていたのに、男はよろけながらも立ち上がったので、寛子達は茫然としていた。
一方、陽子は男が一体、何かをしている筈なのにその正体が分からないので頭を悩ませていた。
男は立ち上がると服に着いた埃を手で払うと、黙って陽子の方を見た。
陽子は苦笑いで、男に向かって叫んだ。
「お早いお目覚めね………貴方って、結構打たれ強いのね!」
陽子の言葉に男はただ無言のまま陽子を見ていたのだった。
陽子は男に得体の知れない不気味さを感じていた。
(ヤバイわね………早くあの男の使っている能力の正体を暴かないと、私が先にへばっちゃうわ………)
陽子は休み無く男に、3分間ぐらい乱舞を放っていたが、20年のブランクがある陽子にとって、先程の攻撃で体力の7割程を使用してしまったのだ。
男は風の能力を発動させると、宙に浮かんで陽子のいる場所まで飛んで移動した。
男は陽子の目の前に立つと、口から出ている血をコートの袖で拭うと陽子に言った。
「………先程の攻撃は効いたぞ………」
男の言葉に陽子は苦笑いで答えた。
「ええ、私も貴方を倒すつもりで攻撃したんだもの効いて当然よ………でも、あれだけの攻撃を喰らって平然としている所を見ると、貴方……何かの能力を使っているわね?」
陽子の質問に男は笑みを浮かべて答えた。
「さあ~………どうだろうな………」
陽子は男の言葉に少し苛立ち、構えると男に言った。
「なら、貴方の身体に聞くまでよね!」
「………お前はチャンスを逃した………折角、攻撃を食らってやったのにな………」
「貴方って人を苛つかせる才能があるみたいね………」
陽子は男の言葉に苛々した。
そんな陽子を見て、男は笑みを浮かべながら構えた。
二人が睨み合ったまま、緊迫した状態の中で、いきなり叫び声が響いた。
「二人とも、その辺でストップよ〜!」
陽子と男は、声のした方を見てみると、そこには仁王立ちした美沙子の姿があった。
陽子は、苛立ちながら美沙子に向かって叫んだ。
「邪魔しないでよねって言ったわよね美沙子!」
美沙子は陽子の顔を見て怪しい笑みを浮かべて答えた。
「いいのかな~?このまま闘っていたら、陽子の体力切れで負けじゃないかな~?それに、零クンのお兄さんが使っている能力の謎も分かっていないんでしょ〜?」
「…………痛い所をついて来るわね………」
陽子は美沙子に図星を言われたので、顔を引き攣らせた。
美沙子は陽子の引き攣らせた顔を見て、更に微笑んだ。
陽子はそんな美沙子の顔を見て、苛立ちながら言った。
「相変わらず、ムカつく笑みをするわね………なら聞くけど、美沙子にはこの男の能力の秘密が分かったの?」
陽子がそう言うと、美沙子は「やだ!恐い、恐い!」と言いながら自信満々な態度で答えた。
「ええ、分かったわよ〜!」




