堕ちた者
陽子が男の攻撃を防ぐと、男は意外な表情していた。
陽子が男に向かって、話し掛けた。
「貴方の相手は私がするんだから、勝手に他の人にちょっかいを出すのは辞めてくれる?」
陽子の言葉に男は不気味な笑みを浮かべると、陽子に向かって、話してきた。
「………お前【天羽】の一族の者だな………丁度良い……お前の血を頂くとしよう………」
男がそう陽子に言うと、陽子は指を鳴らしながら答えた。
「そんな事が貴方に出来るの?」
男は陽子の言葉を聞くと、いきなり大声で笑いながら話してきた。
「これは、これは、威勢の良い獲物だ………お前の血はさぞかし旨そうだな………」
陽子はクスッ!と笑うと、男に言葉を返した。
「ええ、旨いわよ!でも、貴方には一滴もあげるつもりは無いから!」
寛子と由美は、目の前で話している異常な会話に、ただ茫然と立ち尽くしていた。
陽子が後ろにいる零の方を見て話し掛けた。
「と、言う事だから零クンも手出しは無用よ!」
「えっ?でも…………」
陽子は、納得出来ない表情をしている零に対して低い声で言い放った。
「手出しは無用よって言っているの!………もし、私の闘いに横槍を入れて来たら………分かっているわよね………」
「………………」
零は陽子の鋭い視線に思わず黙り込んでしまった。
それを見ていた美沙子が零に苦笑いながら、言った。
「零クン、ごめんなさいね〜!なんだか陽子はさっから、気が立っているみたいなのよ〜………私も陽子に言われたのよ〜!『この闘いは、一対一で闘うから、邪魔をするなって!』だから、零クンも大人しくみていてね〜!」
美沙子は零の顔を見てウィンクをしたら、零は呆気にとられて、茫然と立っていた。
自分の母親の行動を見ていた由美は、(いい歳なんだから、ちょっと辞めてよね!)と思いながら、美沙子を呆れながら見ていた。
一方、寛子は由美の横で深刻な表情をして考え事をしていた。
(………お母さんのあんな表情、初めて見た……何時ものお母さんとは、別人みたいだよ!)
寛子は、母親の先程の零を威圧した時の、陽子の表情を思い出して不安が過った。
(………ひょっとして、お母さんにも[黒の刻印]の因子があるの?)
寛子は今日闘った、透の時の事を思い出した。
あの時の自分は、怒りで我を忘れて目の前の透を二度と起き上がれない程に痛めつけたい衝動を寛子は今思えば、あの時に感じた気持ちは自分の中にもある[黒の刻印]の因子が何だかの関係をしているのではないかと思えてきた。
(でも、私が持っているって事は、お母さんも持っているはずだから………[黒の刻印]の影響を受けてるの?)
そう思ったら、寛子はある事に気が付いて陽子の方を見ると思わず叫んでしまった。
「お母さん!!その人と闘ってはダメよ!!」
寛子は母親に向かって、焦りながら言葉を掛けた。
寛子の声に陽子は視線を寛子に移すと、先程の冷酷な表情とは正反対な笑顔で、寛子に話し掛けた。
「全く、心配性だね!寛子は………大丈夫だよ![黒の刻印]に引き寄せられていないから、久しぶりの闘いだから、楽しみなだけよ!」
陽子の言葉に寛子は、納得したようなしないような少し複雑な心境だった。
(………本当に大丈夫なの?)
寛子は母親の顔を見ながら不安な気持ちが中々、離れなかった。
陽子は寛子の顔を見てクスッ!と笑うと、独り言を言った。
「さぁ〜てと、娘に心配かけていられないわね!」
陽子はそう言うと、再び男の方を見ると男に喋りだした。
「そろそろ、始めましょう!準備は出来ているわよ!」
陽子がそう言うと、男は笑いながら答えた。
「………そうだな……始めようではないか……」
男はそう言うと、戦闘体勢をとると、能力を一気に解放した。
能力を解放した男の周りに黒いオーラみたいなものが漂っていた。
男が能力を解放した後に陽子も戦闘体勢をとり何時でも、攻撃が出来るように備えた。
寛子と由美はというと、男の能力に干渉を受けて、先程とは比べものにならない程の吐き気がした。
二人は口に手を当てて、必死に吐くのを我慢していた。
((うっぷ!…………何これ………気持ち悪すぎだよ……お母さん達は何で平気なのよ!))
寛子と由美がそんな事を思っている内に、闘いが始まった。
男が自分の周りに、無数の黒い雷の矢を作ると、陽子に向かって、一斉に放った。
「天羽流 光玄武!」
陽子は先程の光の盾を自分自身を覆うぐらいの大きな盾を作ると、男の放った雷の矢を受けた。
男の放った雷の矢は、陽子の光の盾に全て命中した。
陽子の周りは煙が立ち、陽子が無事なのか視界では確認出来ない状況だった。
男は煙が晴れるのを待とうした瞬間、煙の中から自分に何かが飛んで来るのが分かったので男は、直ぐに右に身体を反らして飛んで来た物を避けた。
男は、自分に飛んで来た物が光の矢だと理解すると、再び光の矢が放たれた陽子がいる場所を見ると、煙は晴れていき陽子を確認出来る筈なのに、その場所には誰もいなかった。
「!?」
男は自分の背後に力を感じたので、慌てて自分の後ろを振り向くと、そこには大きな球体の光を集めている陽子が、ニヤニヤとして男に話し掛けた。
「うふふ………余所見をすると痛い目に見るわよ!天羽流 朱月光!」
陽子は至近距離で、男に作っていた光の球体を男の背中に放った。
男は光の球体にスッポリと包み込まれると、光の球体は少しずつ縮小し始めた。
男は必死に抜け出そうとしたが、光の球体はみるみる縮小して、男を包み込んだまま消えてしまった。
寛子と由美は、何が起こったのか理解出来ないで茫然と見ていたが、男のが光と一緒に消えたのを見て、陽子が勝ったと思い喜んだが、しかし先程からの干渉が未だに続いているに、気付いて表情を引き締めた。
((…………あの人……まだ……生きてる!))
寛子と由美が、そう思った瞬間、光が消えた場所から黒い塊が現れると、そこから男が現れた。
陽子は楽しそうな表情して、男に話し掛けた。
「ふふふ、どうしたの?息が荒いわよ!それにしても、まだまだ闘えそうね………楽しいわ!」
陽子の言葉に男は少し息を切らしながら言った。
「………お前のその能力………アンチ能力だな………」
 




