一緒に夕食
寛子が零の姿を見て驚いていると、陽子が「どうしたの?」と言いながら、玄関まで歩いてきた。
零は陽子に気付くと「こんばんは!」と頭を下げて、挨拶をした。
陽子はそんな零の姿を見て「………貴方が昼間に電話で話した零クンよね!」と言ったので、零は「………そうです!妹の件は本当に有難う御座いました!」と言ってまた、深く頭を下げた。
寛子は我に返ると、零に話し掛けた。
「一体、どうしたんですか?」
寛子は、そう聞くと零は少し躊躇いながら、答えた。
「妹の事で御礼を言いに来たかったんだ!それに、少し気になる事があったから、少し迷ったがやはり直接君達に話すべきと思って来たんだ。」
寛子は零が言った「気になる事」に付いて聞いてみた。
「零さん……気になる事って何ですか?」
「そ、それは此処ではちょっと話せない………済まない。」
零は申し訳なさそうに、寛子に言った。
寛子は零の事を気遣って返事をした。
「分かりました。今は何も聞きません………」
「済まない!」
「うふふ、何か零さんて会う度に謝っていますよね。」
「そ、そうか?」
「そうですよ、何時も謝っていますよ!」
「そ、そうだったのか………全然、気付かなかった!………済まない」
「ほら、また謝っている!」
「ハハハ、本当だな!」
「二人共、ストップ!」
「「!?」」
零と寛子は、由美の声で少し驚いた。
由美は呆れながら、寛子と零に言った。
「二人共、私達の前でイチャつくのも程々にしてよね!」
「えっ?何を言ってるの由美?」
「別にイチャついてなどない!」
「はぁ〜、二人共、無自覚は何よりも罪作りよね!寛子!陽子さんを見なさい!」
寛子は陽子の方を見てみると、ニヤニヤした表情の陽子がいたので寛子は陽子に少し怒り口調で話し掛けた。
「ちょっと、お母さん!何をニヤニヤしてるのよ!」
「だって、寛子にもそんな人が出来たのかな~って思ったら、思わずニヤついちゃった!」
「そんなんじゃないですから!残念でした!」
「あらあら、そんなに否定すると零クンが可哀相よ!」
「ちょっと、零さんも言ってあげてよ!」
「……………………」
「黙り込まないで!」
「仲が良いわね~!」
「お母さん、まだ言うか!」
「あらあら、怖いわね!寛子は!」
「もういいもん!」
そんな、寛子と陽子のやり取りを見ていた零だったが、急に真剣な表情をして陽子に話してきた。
「すいませんが、話しを戻して貰ってもいいですか?」
「あら、ゴメンね零クン!話しいいわよ!」
「はい、大事な事なんです!」
「………その表情………ただ事じゃななさそうね!」
「………………はい!」
「分かったわ、家に上がって!」
「すいません!」
陽子が零にそう言うと、次に美沙子の方を見て「美沙子達も早く上がって!」と言うと、美沙子と由美は頷いて寛子の家に入って行った。
零と美沙子達が寛子の家に上がってから、陽子は「夕飯をリビングのテーブルに移動するから、それまで座って待っていて!」と言って零と由美を美沙子をソファーに座らせた。
陽子と寛子が夕飯の移動が終えると、二人共ソファーに座って会話を始めた。
「零クンはご飯食べた?」
「い、いえ……まだですが………」
「丁度良かったわ!零クンも遠慮せずに食べて!」
「で、でも…………」
「へえーー、私が作った物が食べれないの?」
「そ、そんな事はありません………わ、分かりました………食べさせて貰います。」
「うんうん、素直が一番よ!」
陽子は零に遠慮させないように、脅して食べるようにした。
それを見ていた三人は苦笑いをして(…………可哀想……)と思っていた。
寛子達が夕飯を食べ始めてから、陽子が零に話しを聞いた。
「それで、妹さんの具合はどうなの?」
「はい、陽子さんの御蔭で先生からも大丈夫だと言われました。」
「そうでしょうね!あの先生は昔から、その手の研究ばかりしていたもの。だから安心していいと思うわ!」
「はい、本当にどう御礼をして良いのか………本当に有難う御座います。」
「いいのよ!聞く所によると、たった一人の妹さんでしょ?」
「そうです!俺の大事な妹です!」
「なら、これからも零クンが守ってあげないといけないわね!」
「そうですね!」
寛子と由美は、陽子と零の会話を聞いて(陽菜ちゃんいいな~………私も兄妹が欲しかった……)と思っていた。
寛子も由美も一人っ子なので、時々街中で見かける仲の良い兄妹を見かけると、兄妹が欲しいと思ってしまうのであった。
陽子と零は寛子達の気持ちを知るはずもなく会話を続けた。
「はい、妹さんの御礼は気持ちだけで十分だから、これから先は零クンがさっき言っていた『直接、話しをしないといけない!』に付いて話して貰うわよ!」
「はい、そのつもりで今日は此処に来ました。」
「それで、一体どんな内容なの?」
「先に謝らないといけないのですが……………すいませんでした!」
「???………一体、どうしたの?」
「………実は勝手に親父と一緒に寛子さんと由美さんに付いて調べさせて貰いまして、お二人が【天羽】と【光守】の血を引く人だったとは驚きました。」
「…………調べたんだ………」
「すいません!どうして妹を助ける為に、お二人の能力の秘密が知りたかったもので…………」
「………はあ~、見事にバレちゃったわね、美沙子!」
陽子が美沙子を見て、会話を振ってきたので美沙子も「はあ~」と肩を落として答えた。
「やっぱり、宿命なのかしら~?こんなに早くバレるとわね~。」
「そうね、どうしても私達は【血】からは逃れられないようね………」
「そのようね~!娘達が【黒羽】と関わってから嫌な予感はしていたのよね~!」
「これも、運命なのかしら………それに【あの事件】から決まっていたのかしらね………」
「そうかもしれないわよ~!でも、心配はしてないけどね~!」
「そうね、その事については私も同感よ!」
「でも、厄介なのはこの先よ~………陽子!」
「分かっているわ!でも、出来れば会いたくは無いわね………」
「無理よ~!零クンが此処に来たからには、きっと【あの人達】にも報告は行っているはずよ~………」
「…………出来れば逃げてもいいかしら?」
「無理に決まっているでしょ~!」
「いや−−−−!!!会いたくない!!!」
「駄々をこねないでね~陽子!私だって本当は今直ぐにでも、逃げたいんだから~………」
「ごめんなさい…………とり乱しちゃったわ!」
「分かれば宜しい~!」
陽子と美沙子は二人して大きく溜息を吐いていた。
そんな二人を見ていた寛子と由美と零は、陽子達の会話の内容が全く理解出来ないでいた。
 




