決着
透が、能力を自分の限界まで上げると右腕を寛子の方へ突き出すと、大きな火の玉を作り出した。
そして、寛子に向けて放つと透はニヤッと笑うと寛子に「これは防げまい!」と自信満々に言った。
寛子は無言のまま、迫って来る火の玉を避けないで、見ていた。
麗華と和美が「避けて!」と叫んだが、火の玉は寛子に直撃して、大きな衝撃音と煙が上がっていた。
麗華と和美は絶句していた。
透は大声を出して、笑っていた。
「ざまあみろ!僕に逆らうから、こんな事になったんだよ!ハハハ!」
「貴方、何をしたのか分かっているの!」
麗華が透に向かって叫んだ。
透は麗華の方を見ると、笑いながら答えた。
「麗華クンが悪いんだよ!君が僕のモノに、なっていればこんな事にはならなかったのになぁ〜!それより、早くお友達を病院に連れて行った方がいいと思うよ」
「貴方って人は、最低ですわ!」
麗華が興奮して、透に叫んだ。
透は寛子が立っていた方を見た、煙が晴れてきて寛子の姿が見えて来るはずと、皆が思っていたが、そこには寛子の姿が無かったのだ。
透は慌てて周りを見渡したが、寛子の姿を見付ける事が出来なくて、次第にイライラして来て、大声で叫んだ。
「何処に逃げた!卑怯だぞ、姿を現せ!」
シ−−−−−−−ン
透の声は虚しく消えて行った。
すると、透の後ろから声が聞こえたので、透は直ぐに振り向くと「よそ見は禁物ですよ!」と言いながら、寛子が上段回し蹴りを放って来る途中だった。
透は寛子の攻撃を避ける事が出来なくて、寛子の蹴りを顔に喰らいながら、「どうやって、後ろに………」と言いながら、飛ばされた。
麗華と和美は茫然としていたが、由美は落ち着いて寛子を見ると、ある事に気が付いた。
(寛子………空間干渉能力を使ったわね!それに蹴りを放った足には氷の能力を纏っているみたいね!………痛そう〜)
由美が冷静に寛子のした事を分析しながら、思った。
一方、寛子の蹴りを喰らった透は埃塗れになりながら、4m程、飛ばされて倒れていた。
寛子は倒れている透に向かって「先輩、ひょっとして、これで終わりなんですか?………早く起きて下さいよ!」と言ったが、透は起き上がる気配がなかった。
寛子は倒れてままの透を黙って見ていたが、起き上がる気配が全くないので、寛子は由美に話し掛けた。
「ねえ由美………」
「な、なによ寛子!」
「あの人……起きないけど終わったのかな?」
「………寛子、油断はしない方がいいわよ!」
「………そうね!」
寛子は戦闘体制を解除せずに、その場に立っていた。
しばらくしてから、急に寛子の周りの温度が上がり出した。
寛子はヤバイと思って、後に跳んで氷の盾を作って、防御の体制を取った瞬間、寛子の目の前で大きな爆発かが起こった。
寛子は咄嗟に氷の盾を出したので、爆発は防げたが衝撃が伝わってきた。
爆風も落ち着き、寛子は倒れている透を睨むと、言葉が聞こえた。
「勘が良いみたいだね!もう少し先程の場所にいたら、病院行きだったけどね!」
「………やられたフリからの不意打ちですか、先輩!やってくれますね!」
「何を言っているんだ!勝負に卑怯も無いだろ!勝負に綺麗事は必要ないよ!」
透はそう言いながら、起き上がった。
「それにしても、先程の君の移動はビックリしたよ!ただの肉体強化だけで、僕の後をとる事は出来ないから、何か能力を使ったね?」
「………それに関しては、ノーコメントです!」
「まぁ〜いいさ!厄介な能力には、変わりは無いが気を付ければ、どうにか対処は出来るからね!」
「………そうですか……」
「でも、君の得意な能力が分かったよ!」
「何ですか?」
「君は氷系の能力が得意みたいだね!僕とは正反対だね!」
「正反対で良かったです!先輩と同じ何て、嫌ですからね!」
「ふふふ、言うね!」
「でも、先輩の予想は半分しか、当たっていませんから!」
「半分か………戦えば分かる事だから、いいさ!」
「なら、闘いを再開しましょか?」
「そうだね。始めようか!」
「はい!」
透は右腕を真横に突き出して火を集めると、火は長く伸びると剣の形を作った。
寛子も同じ様に、右手を突き出して、氷を出現させて氷の剣を作り出した。
透が寛子に「ヘェ−、僕に接近戦を挑むんだ!」と言ってきたので、寛子は「どうですかね?」と返事を返すと、透は「どうでもいいさ!さぁ、僕から行くよ!」と言うと、寛子に真っ直ぐにダッシュで間合いを詰めて、炎の剣を横一線に切り付けてきた。
寛子は後に跳んで、炎の剣を避けると空振りしたままの透に向かって、氷の剣を上から斜めに振り下ろしたが、透は氷の剣を左に跳んで避けた。
寛子は氷の剣を空振りの反動を利用して、一回転して左に跳んで避けた透に向かって右脚で蹴りを出した。
透は寛子の蹴りを避ける事が出来なくて、腹に喰らった。
透は蹴られた腹を庇いながら、無数の火の玉を作り出し寛子に向かって放った。
寛子も無数の火の玉を作り出し出して透に放って、透の放った火の玉を相殺した。
透は自分の攻撃が相殺された事が信じられなくて呆然と見ていたが、寛子はその隙を見逃さなかった。
寛子はダッシュで透との間合いを詰めると、氷の剣を消して両手を透の前に出して、黒い塊を作り出して透に放った。
「!?」
透は直ぐに両手でクロスを作り防御をしたが、寛子が放った黒い塊は透に触れると、大きくなり透を包み込んで透を地面に押し潰し始めた。
由美達は、寛子の放った黒い塊が重力の能力だと気付いて、ビックリしていた。
「ね、ねえ、由美さん………」
「な、何?麗華………」
「……寛子さんは、重力制御能力の持ち主だったの?」
「私も喰らった身だから、余り覚えて無いけど、そうみたいよ!」
「えっ?由美は寛子の重力制御能力を喰らった事がありますの?」
「………うん!危うく死に掛けたけどね………」
「し、死に掛けた………」
「そうだよ!麗華ちゃん!体育の授業で由美と寛子ちゃんは対戦して、アレと同じものを喰らって死に掛けたよ!」
「………………」
「そうだったわね………」
由美は苦笑いをしていたが、麗華は茫然としたままだった。
一方、重力の攻撃を喰らった透は地面に押し潰されながら、寛子の顔を見ながら気を失っていった。
寛子は、透の意識が無くなったと同時に重力の能力を解除した。
 




