緊急事態2
寛子は携帯を取り出すと、陽子に電話を掛けた。
プルル、プルル、プルル、ガチャ!
(相変わらず、早いよお母さん!)
『はい!もしもし寛子?……いきなり電話して、どうしたの?』
『うん、ちょっとお母さんにお願いがあったの!』
『珍しいわね!寛子がお願い事なんて?』
『あのね………この前、話した陽菜ちゃんに付いてなんだけど………』
『【黒羽】の一族についてなの?』
『う、うん………あのね、陽菜ちゃんが私と由美の能力の干渉を受けたみたいで、能力が覚醒しようとしているみたいなの』
『ハア~……やっぱり、そうなったか………』
『えっ?お母さんは、陽菜ちゃんの事が予想が出来てたの?』
『ある程度はね!』
『由美と二人で話したんだけど、陽菜ちゃんを助けて!』
『…………分かったわ!近くに零くんはいるの?』
『うん!いるよ!』
『なら、今から私が言う所にその子を連れて来て貰って!』
『分かった!で、何処に連れていけばいいの?』
『零くんに代わって!』
『う、うん!』
陽子にそう言われて、寛子は零と電話を代わった。
『もしもし、貴方が零くん?』
『初めまして、零です!』
『ごめんね!何かうちの子が、切っ掛けを作ちゃったみたいで!』
『いえ!そんな事はありません!妹も寛子さんと遊んで貰って、嬉しがっていました!』
『そう言って貰えると嬉しいわ!』
『でも、妹は助かるのでしょうか?』
『うん!大丈夫よ!』
『本当ですか?』
『うん!私の知り合いに、その道の専門家がいるから!』
『あ、有難う御座います!』
『お礼は、陽菜ちゃんだっけ?その子が助かってから言いなさい!』
『はい!それで、何処に妹を連れていけば宜しいのですか?』
『言うわよ!…………の場所に連れて行きなさい!』
『分かりました!』
『医師には、「陽子の紹介でお願いします!」と言えばいいから!』
『はい!直ぐに妹を連れて行きます!』
『なら、うちの娘に変わって!』
『はい、分かりました!』
陽子がそう言うと、零は「寛子に変わるように」と寛子に伝えると、電話を代わった。
『もしもし、寛子?』
『何?お母さん?』
『さっき、零くんに陽菜ちゃんを連れて行く場所を伝えたから、貴女達はついて行ったらダメよ!』
『えっ?どうしてなの?』
『これ以上、【黒羽】に関わるとダメだから!』
『う、うん!分かった………』
『心配する気持ちは分かるけど、これ以上【黒羽】に関わると貴方達が不幸になるからダメなの!』
『分かった………私達はこれ以上、首を突っ込まないよ!』
『分かれば宜しい!』
『ねえ、お母さん………』
『何?寛子?』
『ありがとね!』
『うふふ、どういたしまして!それじゃ気を付けて帰って来るのよ!』
『うん!分かった!』
ガチャ!
寛子は陽子にそう言うと、電話を切った。
零が寛子の方を見て、嬉しい表情をして話してきた。
「有難う!寛子さんのお母さんには、何て言ったら分からないぐらい世話になったよ!」
「良かったですね零さん!」
「ああ、これも君の御蔭だ!」
「そんな、私はただ、陽菜ちゃんに生きて欲しいから、当然な事をしたまでです!」
「いや、君が居なかったら、妹は死ぬのを待つだけだったんだ!」
「いいえ、零さんが一生懸命に陽菜ちゃんの事を思って、方法を捜した結果です!」
「………そうなのか?」
「そうですよ!」
「しかし、方法を捜してくれたのは君だから………」
「「「はい!ストップ!!!」」」
いきなり、由美と和美と麗華が零と寛子の会話を遮断した。
会話を遮断された二人は、由美達の方を見ると「いきなり、どうしたの?」と言った。
由美が溜息を吐いて、二人に話し出した。
「いい、二人共!まだ、陽菜ちゃんが助かった訳じゃないでしょ!」
「「………確かに!」」
「だったら、零さんは直ぐにでも、陽菜ちゃんを連れて陽子さんが紹介した場所に行かないと!」
「そ、そうだった!」
「だったら、今も苦しんでいる陽菜ちゃんを早く連れて行かないと!」
「分かった!」
「それに、傍からアナタ達の会話を聞いたら惚気あってるみたいに聞こえるのよ!」
「「そ、そんな事は………」」
「そう聞こえるの!そうでしょ麗華、和美!」
「「うん!!!惚気にしか聞こえない!!」」
零と寛子は顔を少し赤く染めて、俯いた。
「「「はぁ~~~~!」」」
由美達は二人を見て溜息をついた。
しかし、零が気を取り直してテーブルに置かれたレシートを取ると寛子達に言った。
「今日は本当に君達に会って良かったよ!ここのお代は俺が払っとくから、次は元気になった陽菜と会ってくれ!今日は本当に世話になった!」
零にそう言われて、寛子達は笑顔で返事した。
「陽菜ちゃん元気になるといいですね!」
「また、遊びたいと伝えて下さい!」
「私からも伝えて下さい!」
「私も陽菜さんに会いたいですわ!」
零にそう言うと、零は寛子達に手を振って「ああ、伝えとく!それじゃ、また今度な!」と言うと、会計を済ます為にレジの方へ歩いて行った。
寛子達は零に手を振って「頑張って下さい!」と言って零を見送った。
零は店を出て不思議な気配を感じていたが、気配は直ぐに消えたので、零は気にせずに陽菜の所へ向かった。
一方、零が店から出て行ってから、寛子達は会話を始めた。
「陽菜ちゃんは助かるといいよね……」
「大丈夫よ!陽子の紹介なんでしょ?」
「きっと大丈夫だよ!寛子ちゃん!」
「それにしても何故、私達が付いて行ってはダメなのですか?」
「それはついては………私も分からない?」
「そ、そうよ、麗華!余り寛子を困らせない!」
「由美の言う通りだよ!麗華ちゃん!」
「な、何故ですの?……いつの間にか、私が悪者に、なっていますわ」
「ご、ごめんね麗華さん!そんな、つもり無かったのに!ちょっと、由美、和美さん!」
「いいのよ!麗華には、弄られキャラが似合ってるし!」
「そうだね!確か麗華ちゃんは、弄られキャラだよね!」
「な、何ですの?その弄られキャラとは、どういう意味なのですの?」
「「そのままの意味!!」」
「あ、貴女達!……もぉ〜、頭に来ましたわ!もう許しませんわ!」
「…………何をしてるのやら……」
麗華が由美と和美と言い争っているのを、寛子は溜息を吐いて見ていた。
すると、寛子達の席に二人の男が近付いて来て、寛子達に話し掛けて来たので寛子達は一斉に男の方を見た。
「こんにちは!盛り上がっている所を済まないが、一つ聞きたい事があるんだ!」
「「「「!?」」」」
「あの白髪の男との関係が知りたいな〜麗華君!」
「何故、此処にいるのですか?………生徒会長……」
麗華の言葉に、寛子達は茫然としていた。




