訪問者
昨日の由美達の訪問から、一夜開けてから寛子は朝食を済ませて陽子に「行って来ます!」と挨拶をして、玄関口を出ると既に由美が待っていた。
寛子が由美に「おはよう!」と挨拶をすると、由美も挨拶を返してきた。
寛子達は学園へ歩いて行きながら、昨日の事を話していると目の前に黒いベンツが通り過ぎたかと思うと、車は急に停車して黒い服の男が運転席から降りてきた。
寛子と由美は男に見覚えがあったので、(多分、麗華が乗っているんだろう!)と思っていたら、男が後部席のドアを開けると寛子達の予想通り麗華が降りてきた。
麗華は黒い服の男に「ありがとう!此処で、結構ですわ!」と言うと男は寛子達の方を見て「昨日はお嬢様がお世話になりました!」と言って、頭を深く下げてお辞儀をしてきたので、寛子達も「昨日は楽しかったです!」と言ってお辞儀した。
男は少し嬉しそうな表情になると、直ぐに麗華の方に振り返り「では、失礼します!」と言うと再び、運転席に乗ると車で去って行った。
車が去ってから、麗華は寛子と由美に「おはようございます!昨日はお世話になりましたわ!」と言って挨拶をして来たので、寛子と由美も「おはよう!」と挨拶を返した。
寛子と由美は麗華と一緒に学園へ登校する事になった。
三人は歩きながら昨日の事を話しだして、寛子が麗華に質問した。
「ねえ、麗華さんは昨日は帰ってから、お母さんに何か言われたの?」
「はい!帰って直ぐにお母様の部屋に呼ばれましたわ!」
「それで、麗華さんは何を言われたの?」
「昨日、陽子様に何処まで話しを聞いたのかを聞かれましたわ!」
「それで、何て答えたの?」
「お母様の昔のお話しは言いませんでしたが、私と同じ趣味を持っている事を陽子様から聞きましたと伝えましたわ!」
「やっぱり、怒られたの?」
「いえ、深く溜息をついていましたが、その後に私の捨てられていたと思っていたコレクションを返して頂きましたわ!」
「良かったわね!」
「はい!これも陽子様の御蔭です!」
「それから、お母さんとの接し方も変わったの?」
「…………変わりましたわ!お母様の性格が180°変わりまして、私はどうやって接して良いのか悩みましたわ……」
「そ、そんなに変わったんだ………」
「ええ、それはよく笑われますし、自分のコレクションを自慢げに延々と3時間程、見せてもらいましたわ!」
「………それは、大変でしたね!」
「………はい、まさかお母様があんな性格とは思いませんでした!」
「うちのお母さんの友達だから、普通ではないと思ったけでそれほどまでとは………」
「陽子様には失礼ですが、私も同感です!」
寛子と麗華がお互いに溜息を吐くと由美が自慢げに自分の母親の事を言った。
「私のお母さんはいたって常人よね!」
由美の言葉に寛子がツッコミを入れた。
「由美…………それはないよ!」
寛子のツッコミに由美が反論した。
「どうしてよ?」
「思い出してみてよ!由美のお母さんて私のお母さんを手玉に取るのよ!その時点で常人ではないわよ!」
由美は寛子と陽子が泊まりに来た時の事を思い出した。
「…………………………」
「由美、思い出した?」
由美はあの陽子を強引に泊まらせたり、弱みを握り脅迫したりしている美沙子を思い出した。
「う、うん………私のお母さんも同類かも………」
「分かれば宜しい!」
三人はそれぞれの母親に対して、深く溜息をついていたら、後ろの方から「おーーーい!待ってよーー!」と言う声が聞こえたので振り向いて見ると、和美が走って来ていた。
和美が寛子達の元に来ると息を切らせて「お、おはよう!ハァハァ!」と挨拶をして来たので、三人も挨拶を交わした。
寛子が和美に「朝から元気だよね!」と言うと和美は「だって、朝から元気じゃないと寛子ちゃんのファンクラブの会長は務まらないわよ!」と言ってきたので、寛子は(まだ、そんな事を言ってるのか!早く解体してくれ!)と思った。
和美は呼吸を整えると寛子に話してきた。
「寛子ちゃんごめんね!昨日の写真は見事に陽子さんのチェックに引っかかって、殆どが削除されちゃったの!」
「そ、そうなの………それは残念ね!」
(良かった!ありがとうお母さん!)
「だから、私は考えたの!」
「な、何を考えたの?」
「家がダメなら、学園内はオッケーなんだよね!だから、寛子ちゃんの学園生活を写そうと思ったのよ!これなら、陽子さんのチェックも入らないしね!」
「ダメです!」
「えーーー!何でよーー?」
「私のプライバシーの侵害です!直ちに辞めて下さい!」
「寛子ちゃんのケチー!」
「ケチで結構です!私は普通の学園生活が送りたいのです!」
「「「…………それは、無理と思うよ!」」」
「な、何で三人でハモるのよ!それに麗華さんには言われたくないです!」
「寛子さん酷いですわ!」
「「確かに麗華[ちゃん]には言われたくないわよね!」」
「ちょっと、由美さんも和美さんも酷いですわ!」
麗華が怒りながら三人を追い掛け回していた。
四人とも走り疲れて、「ハァハァ!」と呼吸を乱していたが、でも四人とも楽しそうな表情で笑い合っていた。
寛子がちょっとした事を思いだしたので、皆に聞いてみた。
「そういえば、麗華さんとに助けて貰った時には気にしなかったけど、握手を求めてきた後輩が言っていた「憧れてました!」って、どういう意味で言ったのかな?」
「そうだよ!何で私達が握手を求められたの?」
「私も、存じてませんわ!」
「…………………………」
寛子と由美と麗華の言葉に和美が無言のまま視線をそらしたので、三人は怪しいと思い和美に言い寄った!
「和美さん何か知らないかな?」
「そうよ!何か隠してない?」
「早く言った方がいいですわよ!」
「………あれね、私が作ったファンクラブのサイトに寛子ちゃんと由美の対戦の動画をアップしたの………だから、皆はそれ見たんだと思うんだよね……………ごめん!」
「「「犯人はお前かーーーー!!!」」」
必死に逃げる和美を寛子達は追い掛けて行った。
そんな事をしながら学園の近くに着くと、正門の所に人集が出来ているのが見えた。
寛子達は「一体何だろ?」と話しながら正門に歩いて行くと、そこには、背の高い白髪の男が立っていた。
寛子はその男を見て「………な、何で此処に零さんがいるの?」と無意識に声に出していた。




