意外だよね
寛子達は陽子と瑠璃子の会話を聞き終えて、唖然としていた。
特に麗華が一番に驚いていた。
まさか、自分の母親があれ程、感情を表に出すとは思わなかったのだ。
瑠璃子は何時も堂々とした態度で、どんな事があっても、決して動揺などしないクールなイメージがあり、娘の麗華との会話でも、最低限の会話しか、しない人物なのに陽子と話していた母親は、自分が今まで見た事のない姿だったのだ。
そんな姿の母親が事が気になって、麗華は陽子に母親の昔話を聞いてみた。
「陽子様、少しお聞きたい事がありますが、宜しいでしょうか?」
「いいわよ!何が聞きたいの麗華ちゃん?」
「お母様について何ですが!」
「ん、瑠璃子についてなの?いいわよ!」
「はい!先程の陽子様との会話を、聞いておりましたが、あんなお喋りをするお母様は初めて見ました。………です
から、私は、どちらが本当のお母様なのかが分からくなってしまいました!」
「………そうね!麗華ちゃんに生まれてから麗華ちゃんに接して来た瑠璃子の態度は知らないけど、私達と一緒に過ごした瑠璃子の事なら教えてもいいけど………」
「お母様の昔の事を是非、教えて下さい!」
「はぁ〜………分かったわ!でも、私から教えちゃっていいのかな〜?………麗華ちゃん、私がこれから話す内容は瑠璃子には、内緒よ!いいわね!」
「はい!絶対にお母様には言いません!」
「頼んだわよ!瑠璃子に恨まれたくないからね!」
「陽子様、お願いします!」
「なら、話すわね!瑠璃子は昔は男勝りな性格で、負けず嫌いでね!三人で遊ぶ時は、大抵は能力を使った戦いをしていたわね!自分で言うのも何だけど当時、私達の能力は普通の大人ぐらいの力はあったと思うのよね!よく能力を使用した時は、家の壁や屋根を壊して怒られていたわ!」
「………そ、それは、陽子様達が何歳の時ですか?」
「そうね、9歳ぐらいじゃなかったかな〜?」
「えっ?………9歳で普通の大人並に能力があったのですか?」
「ええ!三人ともあったと思うわよ!」
「「「「…………………」」」」
寛子達は陽子の言葉にビックリしていた。
普通、一般の9歳では能力を使って、火を作り出してもライターぐらいの火力しか作り出せないのだ。
それに9歳ぐらいで能力を使うにはまだ、不安定な為に最悪の場合、暴走する可能性があるのだ。
その事は一般常識なので皆が知っているから、陽子が言った内容が寛子達には、信じられなかった。
しかし、少しの間でも会話を交わした麗華も和美も、陽子が嘘を付くような人物ではないと思えたので、陽子の言葉を素直に受け入れてビックリした。
麗華が驚きながらも、母親の事が聞きたくて、再び陽子に質問した。
「でも、陽子様達は小さい頃から、何故そのような能力をお持ちになられていたのですか?」
「それは、私達は特別な家庭だったから、小さい頃から特訓をしていたのよ!」
「えっ?でも、能力が覚醒するのは、8歳ぐらいではないですか?一年ぐらいで、そこまでの能力を持つには不可能と思いますが!」
「………そうね、普通は一年では無理だけど、私達の一族はね、特別な特訓があるのよ!短期間で成長させる事が出来るね!」
「!?……そ、そんな事が可能なのですか?」
「可能よ!でも、かなりキツイけどね!」
「一体、陽子様の言われる一族とは、どの様な方々なのでしょうか?」
((ギクッ!?))
寛子と由美は麗華の質問に冷汗を流した。
陽子は動揺する事もなく麗華の質問に答えた。
「私の一族に付いてはノーコメントよ!いくら、麗華ちゃんが瑠璃子に聞いても教えてくれないと思うわ!」
「そ、そうなんですか………分かりました。」
「後はね、瑠璃子はとても可愛い生き物が大好きなの!………でも、どうしても好かれないのよね!」
「それは一体、どういう意味ですか?」
「それはね、瑠璃子の不幸体質と言うべきかな?………瑠璃子はね、子猫や子犬が大好き何だけど、どうしても嫌われてしまうのよ!瑠璃子が子犬を触ろうとした時にね、母親犬が子犬を守ろうと瑠璃子のお尻に噛み付いたのよ!」
「…………そんな事がお母様にあったのですか……」
「それだけじゃ無いの!………子猫が道端に捨てられていて、三人で子猫を拾って、こっそりと飼っていたのよ!」
「お母様に、そんな一面があったのですか?驚きです!」
「まぁ〜、小さい頃だったしね!」
「それで、どうしたのですか?………何故か嫌な予感がします!」
「良い勘してるわね!……その子猫はね、私と美沙子には懐いていたのよ!何時も抱っこして可愛いかっわ!………でも、瑠璃子が子猫を抱っこしようとすると、子猫は瑠璃子の腕の中で何時もオシッコをしていたわ!今思えば、子猫の抵抗だったのかしら、瑠璃子は何時も胸をオシッコで濡らして、凹んでいたわ………」
「………お母様、可哀相………」
「そうね、私と美沙子は何時も瑠璃子のそんな姿を見ていて、何も言えなかったわ!」
「お母様が陽子様達にも、お気遣いをお掛け致しまして、申し訳ごさいません!」
「いいのよ!麗華ちゃんが謝らなくて!麗華ちゃんは、性格は瑠璃子に似て無いわね!瑠璃子より、しっかり者ね!
「そ、そうですか?」
(((…………陽子さん[お母さん]、騙されていますよ!!)))
寛子と由美と和美は、心で陽子にそう思った。
一方、麗華は陽子に褒めらて嬉しがっていた。
そんな事を四人が思っていたら、陽子が続きを話し出した。
「後はね、麗華ちゃんと同じで珍しい物を集めるのが趣味みたいよ!その辺は麗華ちゃんは似たみたいね!だから、麗華ちゃんのコレクションも、家の何処かに隠しているみたいよ!………後はないかな!」
「え、コレクションがあるのですか!?…………諦めついたのに、嬉しいです!それに、お母様の知らない一面を聞けて嬉しいです!」
「ふふふ、良かったわ!麗華ちゃんが、喜んでくれて!」
「………陽子様、もう一つだけ聞きたいのですが!」
「どうしたの?」
「篤さんの容態は大丈夫なのでしょうか?」
(((ギクッ!?)))
麗華の質問に陽子と寛子と由美はヤバイと思った。
陽子は少し動揺しながら答えた。
「あ、篤は大丈夫よ!ちょっと、知り合いの病院に入院してるだけだから!」
「そうなんですか………分かりました!陽子様、麗華が心配していたとお伝え下さい!」
「えっ、ええ!分かったわ!伝えとくわ!」
(……………この女!)
由美は、麗華に対して敵意を出していた。
麗華は、由美の敵意など全く気付かないで、陽子にお礼を言った。
「今日は、楽しかったです!ありがとうございます!」
「私も久しぶりに、楽しかったわ!」
麗華は陽子に頭を下げると腕の時計を見てみた。
時計は既に18時30分を過ぎていたので、「あっ!?」と声を上げた。
麗華は寛子達に「門限を過ぎてますので、先に失礼しますわ!」と言うと、慌てて帰る支度を始めた。
つられて和美も「私も、そろそろ帰るね!」と言い出したので、由美も「皆が帰るから、私も帰るね!」と寛子に言うと、三人は玄関先まで行くと、靴を履いて陽子と寛子に頭を下げて、「今日は、楽しかったです!ありがとうございました!」と言って帰ろうとした時に、陽子が何かを思い出して麗華に話し掛けた。
「あっ!麗華ちゃん!」
「はい?何でしょうか、陽子様?」
「瑠璃子からの伝言でね!帰ったら話しがあると言っていたわよ!」
「お母様がですか?」
「そうよ!確かに伝えたわよ!」
陽子がそう言うと、麗華は「ありがとうございます!」と返事をしたら、由美達と一緒に帰って行った。
寛子と陽子が、由美達を見送り家に戻り、陽子は夕食の準備をしようと台所に行こうとしたので寛子も「私も手伝うよ!」と言って、陽子の後を追って台所に行こうとした時に、寛子の身体に異変が起こった。
「!?……い、痛い!身体が痛いよ!」
陽子も寛子の言葉で、振り向いて寛子の姿を見て、固まった。
そこには、篤になった我が子の姿があった。




