久しぶり!
陽子は麗華の携帯を借りると、麗華の母親の【黒柳 瑠璃子】に電話を掛けていた。
寛子達は陽子の様子を、不安な心境で見ていたのだが、その中でも麗華は複雑な心境であった。
麗華は自分の為に、怒ってくれている陽子に心から嬉しかったのだが、相手が(あの冷酷な、お母様だから陽子様に酷い事を言わないでしょうか?………)と思い、不安な気持ちでもあった。
何故、麗華が自分の母親に対して冷酷と思うのは瑠璃子は麗華が生まれてから、ずっと【黒柳】の跡継ぎに相応しい人物に育てる為に、何時も厳しく教育して来たのであった、だから麗華は母親が笑った姿を余り、見た事がないのである。
だからこそ、自分の母親が友達の親を傷付けないのか不安になっていた。
寛子達が緊張して見守る中で陽子は中々、電話に出ない瑠璃子に対して苛々していた。
何度かコールがなった後に「ガチャ!」となったので、相手が出たのが分かった。
瑠璃子と思われる人の声が聞こえると、陽子は言葉を返した。
『はい、もしもし麗華なの?あれ程、余程な事が無ければ電話はしないように言いましたわよね!』
『…………………』
『もしもし、返事をしなさい!麗華!』
『…………お宅の娘は預かった!返して欲しければ金を用意しろ!』
『はい?………誘拐ですの?』
『そうだ!……だから、金を用意しろ!』
『お金は用意しません!捕まる娘が間抜けなのです!犯人さん、娘に自分でどうにかしなさいと、お伝え下さい!では失礼しますわ!』
ガチャ!プップップッー
「……………………」
「「「「…………………」」」」
(ち、ちょっとお母さん!何してるのよ〜!)
寛子達は陽子の冗談らしき会話を聞いて、全くツッコミが出来なかった!寛子はせめて心の中でツッコミを入れた。
陽子は青筋を立てて、また瑠璃子に電話を掛けた。
プルル、プルル、プルル、ガチャ!
『しつこいですわね!何度、電話をして来ましても、お金は出しませんわよ!』
『…………久しぶりね〜瑠璃子!』
『えっ?だ、誰ですの?』
『誰なのか、当ててみてよ!』
『わ、分かりませんわ!気味が悪いですわ!貴女は一体、誰ですの?』
『…………秘密だ!』
『貴女!ふざけてますわね!』
『一体、私は誰だ?』
『いい加減にしないと、切りますわよ!』
『……………5歳の時に犬にお尻を噛まれた!』
『!?………ど、どうして、それを………まさか!?』
『…………6歳の時に猫を抱っこして、猫に本気で嫌がれて凹んだ!』
『………………ちょっと!何故、その事もしってますの!…………貴女の正体が分かりましたわ!』
『私は誰だ?』
『貴女!陽子でしょ!』
『ようやく、わかったみたいね!』
『貴女!今まで何処に、行っていたのよ!それに何故、娘の携帯を持っているのよ?』
『瑠璃子!質問をいきなり、何個も言わないの!』
『………ごめんなさい!』
『慌て者ね!その辺は昔から変わっていないわね!』
『いいわ!質問に答えるわ!今ね、私の家にに麗華ちゃんが来てるの!だから、携帯を借りて瑠璃子に電話を掛けてるのよ!』
『!?……何で、陽子の家に麗華がいるのよ?』
『うふふ!それは、麗華ちゃんとうちの子が友達になったみたいだからよ!』
『えっ?麗華と陽子の子供が友達になったの?』
『そうみたいよ!だから麗華ちゃん、私の家に来ているの!』
『はぁ〜、一体、どういう偶然よ!』
『そうね!私が家を出てから瑠璃子とは、一度も会ってないものね!』
『そうよね!陽子と美沙子が、一族を出てから全く、会ってないわよね!それに、陽子の両親達もずっと陽子の事を気にしていたわよ!』
『………そうなの?でも、あの家にはもう二度と帰りたくないのよ!』
『………ごめんなさい!無神経で!』
『いいのよ!でも、瑠璃子にこんな大きな子供がいるなんて、思わなかったわ!』
『それは、こっちの台詞よ!まさか、陽子に子供がいるなんて、それに麗華と友達になるなんてね!』
『確かに、凄い偶然よね!それと、もう一つ瑠璃子がビックリする事があるわよ!』
『な、何よ?……さっきのでも十分に驚いたのに、これ以上は遠慮したいわよ!』
『言うわよ!麗華ちゃんが友達になったのは、私の子供だけでは、ないのよ!後二人いるんだけど、その一人がね美沙子の子供なのよ!』
『!?…………えっ?えぇぇぇぇ−−−!?』
『いいリアクションを取ってくれるわね、瑠璃子は!』
『ちょっと、当たり前じゃない!誰だって驚くわよ!でも、何なのよ!シナリオに書いた様な、出会いじゃない!何
だか怖いわね!』
『………多分、瑠璃子が言ってるように、偶然ではないと思うの!時期が近付いていると、思うのよ!だから、必然なのかも知れないの!』
『…………それって、陽子が言っていた【天使】が、関係してるの?』
『多分、そうね!』
『……………分かったわ!近い内に、美沙子と一緒に遊びに来て!詳しくはその時に聞くから!』
『分かったわ!美沙子と一緒に遊びに行かせて貰うわね!』
『子供達も連れてきてね!会ってみたいから!』
『ふふふ、了解!それから、もう一つ言わせて貰うわね!』
『な、なによ?まだ、何かあるの?』
『瑠璃子……麗華ちゃんから聞いたわよ!』
『な、何を聞いたのよ?』
『瑠璃子!この前、麗華ちゃんが集めた珍しい物を隠したでしょ!』
((((えっ?隠した?捨てたの間違いではないの?))))
寛子達は陽子の言った言葉の意味が分からなかった。
『…………はぁ〜!折角、今まで隠して来たのに陽子のせいでバレたじゃない!』
『やっぱりね!瑠璃子の性格からして、そうじゃないかな〜って、思ったの!』
『ひょっとして、私の趣味も話したの?』
『………話したわよ!ダメだった?』
『陽子!!!!何、勝手に話しているのよ!』
『いいじゃない!どうせ、遅かれ早かれバレる事だったんだから!』
『私のイメージが……………』
『凹まない、凹まない!』
『もういいわ!麗華に帰ったら、話しがあると伝えて!………でも、久しぶりに陽子と話せて嬉しかったわ!』
『私もよ!瑠璃子!』
『じゃあ、また今度ね!バイバイ!』
『分かったわ!バイバイ瑠璃子!』
ガチャ!
陽子は通話を切ると、携帯を麗華に「ありがとね!」と、言って返した。
寛子達は、陽子と瑠璃子の会話を聞いて呆然としていた。




