意外な訪問者
寛子と由美が学園に着いて教室に入ると、和美が寛子と由美に挨拶をして来たので、寛子達も挨拶を返した。
寛子と由美は和美に話しがあるのと言って、廊下に和美を連れ出した。
和美は「一体どうしたの?」と寛子達に聞いてみると、寛子と由美は真剣な表情して和美に話し出した。
「和美!よく聞いてね!」
「う、うん!どうしたの?」
「昨日、出会った零さんと陽菜ちゃんの事なんだけどね!」
「二人がどうしたの?」
「零さんが使った黒い能力に付いてなんだけど、あの能力に付いては私達だけの秘密にしようと思うの!」
「えっ!どうしてなの?」
「零さんの能力に付いては下手に触れない方がいいのよ!下手に触れると大変な事に巻き込まれるからね!」
「言ってる意味が分かんないよ!」
「ごめんね和美!………詳しくは言えないの!」
「何か、言えない訳があるのね!」
「うん、そうなの!和美を危険な目に巻き込みたくないの!だから分かって!」
「……………分かった!二人が言えない理由も今は聞かない!………二人を信じているから、何時かきっと話してよ!約束だよ!」
「うん!絶対に和美には、ちゃんと説明する!だから、零さん達とは二度と関わったらダメよ!」
「分かった!二人の言う通りにする!」
三人は話しを終えると、教室の中に入って行った。
寛子は弘雅の机を見たが弘雅は来てなさそうだった。
寛子は弘雅の事は気にするのを止めて、自分の席に着いて暁が来るのを待った。
暁が教室に入って来るといつものHRが始まり、暁は出席を取り始めたが、弘雅の名前を読んだ後に溜息を吐いて「アイツはまたサボりか!」と呟いて、その後の出席を取り終えると教室を出て行った。
相変わらず、授業が始まり、休憩になると廊下には他のクラスの生徒が寛子の教室を見ようと、人混みが出来ており、翼を筆頭に男子生徒達が懲りずに壁を作っていた。
毎度の光景に寛子は呆れて、何も言えなくなっていた。
昼休みになってから、寛子と由美と和美で机を引っ付けて一緒にお昼を食べる事にして今朝、作ったお弁当を机の上に出すと三人でたわいもない会話をしながら食べていたら、いきなり教室の扉が勢い良く開いて一人の女子生徒が入って来た。
寛子達は女子生徒の方を見て唖然とした。
入って来たのは黒柳 麗華だったのだ!
麗華は教室に入って来ると、教室を見渡して寛子達を見つけると傍に歩いて来て、寛子達を見ると「私もお昼をご一緒していいかしら?」と聞いてきたので、三人は更にビックリしたが、麗華が「返事は?」と聞いてきたので寛子達は麗華の勢いに負けて顔を縦に振った。
麗華は嬉しそうな表情を浮かべて、「失礼しますわ!」と言って、空いてる席を勝手に寛子達の席に引っ付けると、そのまま座って持参のお弁当を机に出した。
寛子達は麗華が机に出したお弁当を見てその豪華さにビックリした。
寛子は麗華に質問してみた。
「黒柳さん!ちょっと聞いていい?」
「何でしょ?」
「黒柳さんは何時もそのお弁当なの?」
「いいえ!何時もは私専属のシェフが、作ってくれますの!」
「「「えっ!専属のシェフ!?」」」
三人は一斉に声をあげた。
一方、麗華は首を傾げて寛子達を見て答えた。
「三人とも、何を驚いてますの?」
「「「普通に驚きます!」」」
麗華にとって、今まで自分の専属のシェフに作って貰うのが当たり前だったので、寛子達の言っている事が理解出来なかった。
寛子達は自分とのギャップに驚いたが、麗華ならしょうがないと思い、あえてスルーした。
寛子が何故、自分達とお昼を一緒に過ごしたいのかを聞いてみた。
「ねえ、黒柳さんは何で私達と一緒にお昼を過ごしたいの?」
「そ、それは………か、監視の為ですわ!」
「監視?」
「そうですの!また、学園の物を壊したり、勝手にファンクラブを作ったりしないかを監視してますの!」
「「………嫌味ですか?」」
由美と和美が冷めた目で麗華を見つめて言った。
麗華は二人の視線を無視して寛子に聞いてきた。
「寛子さん、少し聞いても宜しいですか?」
「は、はい!何でしょう?」
「貴女のお兄様の篤さんは身体の具合はどうですの?」
寛子は全く予想外の麗華の質問にあたふたした。
寛子は、何とか落ち着いて麗華の質問に答えた。
「あ、兄ですか?」
「はい、そうですわ!」
「どうして、いきなり兄の容態を聞いたのですか?」
「そ、それは生徒会として休まれている生徒を気遣うのは、当たり前ですわ!」
「本当にそれだけですか?」
「な、何をおっしゃりますの!」
(な〜んか、怪しいな〜!)
寛子は麗華が何か、別の理由で質問して来たのではと思った。
そんな事を思っている寛子の横で、由美が何かに気付いた表情して、鋭い視線を麗華に送りながら、こんな事を思っていた。
(………この女の態度………多分、篤の事が気になってるみたいね!……でも、あの篤を何時から気になりだしたの?………分からないわ?)
由美は女の勘が働いたのか、寛子[篤]に麗華を近付けるのはダメと思い、二人の会話に無理矢理、入ってきた。
「ねえ、早くお弁当を食べようよ!休憩時間がなくなちゃうよ!」
由美がそう言うと、麗華も寛子も「そうだね!」と返事を返して、食事にした。
食事も終えて、休憩時間も後、少しになったので麗華は机を元に戻すと、寛子達に御礼を言ってきた。
「寛子さん、由美さん、和美さん、今日は楽しかったわ!」
「「「い、いいえ!こちらこそ!」」」
「それでね、お願いあるの!」
(((………嫌な予感!)))
「「「な、なんでしょう?」」」
「私とお友達になって欲しいの!」
「「「!?………はい?」」」
三人は疑問形で答えたつもりだったが、麗華は「Yes」の方で取ってしまい嬉しそうな表情をして、呆然としている寛子達から携帯番号とアドレスを聞き出すと、自分の携帯に登録して寛子達に手を振って自分のクラスに帰って行った。
寛子達は、台風が去って行った感じがしていた。
三人はただ麗華が去って行った方を呆然と見ていた。




