秘密
寛子と由美は零がさっき使った黒い炎について、零に聞いてみた。
「あ、あの零さん、先ほど使われていた黒い炎は一体なんですか?」
寛子が零に質問すると、零は寛子を見て答えた。
「………これの能力か?」
零は右手を突き出すと黒い炎を出した。
寛子は背中の疼きを感じて思った。
(なんで、私に干渉してくるの?………一体、その能力は何なの?)
零は黒い炎を消すと「炎だけじゃない!」と言って、今度は黒い氷を作った。
「!?」
寛子と由美はビックリした、二人はてっきり炎だけと思っていたのに、今度は黒い氷を零は作ったので寛子は、零に能力について質問した。
「零はひょっとして、全ての能力が黒いのですか?」
零は寛子の質問に静かに頷いた。
寛子は何故、そのような能力を持っているのかを零に聞くと、零が語り出した。
「この能力については、詳しくは分からないが多分、俺の一族に秘密があると思う!」
「れ、零さんの一族ですか?」
「そうだ!俺も陽菜も代々続いている【黒羽】の子孫なのだが、俺達の一族は訳があって少人数しかいない!」
「なら、零さんと陽菜ちゃんの他には余り、いないんですか?」
「………そうだな!【黒羽】の血を引いているのは親父と俺と陽菜と………」
零がそこまで言うと何故か黙り混んだ。
寛子は(どうしたのだろう?)と思って首を傾げた。
すると、いきなり陽菜が答えてきた。
「後はね、いなくなった私達のお兄ちゃんだよ!」
「!?………陽菜!」
陽菜が言った後に零が顔を歪めて陽菜に「アイツの事は言うな!」と言った。
すると陽菜は、泣きそう顔をして、零に言った。
「………だって、私達のお兄ちゃんだよ!何で言ったらダメなの?」
「そ、それは………俺らを捨てて行った奴だからだ!」
「私達は捨てられたの?お兄ちゃん!」
「…………ああ、だからアイツの事は忘れろ!」
零がそう言うと、陽菜はポロポロと涙をこぼして泣き出した。
寛子達は、二人の会話の内容が理解が出来なかったが、泣いている陽菜を寛子が優しく頭を撫でて、「もう、泣かないで!」と言った。
寛子の言葉に陽菜は必死に涙を堪えた。
寛子は陽菜に優しく「陽菜ちゃんは偉い子だね!」と言うと零の方を見てから聞いてみた。
「零さん………辛い事を聞いてごめんなさい!でも、もう一つだけ聞きたいのですが、零さん達の両親の他には一族の人はいないのですか?」
寛子が申し訳なさそうに零に尋ねると、零が答えた。
「いる!いや、いたはずだったと言うべきかな、親父の弟がいたが20年前に死んだ!」
「!?………す、すいません!……知らなかったとしても、失礼な事を聞いて………」
「………いや、気にするな!………叔父は自業自得だ!」
「何かあったのですか?」
「済まないが、それは言えない!」
「そ、そうですよね!ごめんなさい、人の家族の事情に首を突っ込んで……」
「いや、こっちこそ、見苦しい所を見せて済まなかった!」
「いえ、構いません!でも、陽菜ちゃんも零さんと同じ能力を持っているのですか?」
「陽菜は現段階では持っていない!陽菜は能力をまだ、覚醒させていない!」
「えっ!?だって、陽菜ちゃんはどう見ても10歳ぐらいですよね?普通だったら5、6歳ぐらいで能力で目覚めますよね!」
「俺にも分からないんだ!多分、【黒羽】の血を引いてるから俺と同じ能力を持っているはずなのだが、陽菜は能力に目覚めないんだ………」
「そんな事って………」
この世界では100年前に人間が超能力を持って生まれてくる様になってから、現在ではこの世界に生きている人間は絶対に能力を持っているのだ。
能力を持っていない人間など見つかった例がないのだ。
能力の覚醒は一般では5~6歳ぐらいで個人差があっても、遅くて8歳ぐらいには能力に目覚めるのだ。
このぐらいの年齢で能力に目覚めて、身体に馴染んでいくように[慣らしの時]が必要なのだ。
その[慣らしの時]は、5~6歳ぐらいで覚醒するのが、丁度いいのだ。
しかし、零が言った事が本当ならば、陽菜が10歳になっても能力を覚醒させていなければ、もし能力が覚醒した時に身体に何かしらの負担を掛けてしまうかも知れないのだ!運が悪ければ死んでしまう事もあるのだ。
寛子は零の言葉に絶句していたが、零にその事を陽菜に伝えているのか聞いてみた。
「零さん、その事は陽菜ちゃんには伝えているのですか?」
「…………いや、伝えていない!」
「!?………どうして?」
「お前は最悪、死んでしまうのだと!伝えられるのか?」
「…………言えないです……でも、それじゃ陽菜ちゃんが、余りにも可哀相です!」
「俺は陽菜にこのまま能力に目覚めないで欲しいのだよ!」
「どうしてですか?」
「俺達、【黒羽】の一族の能力など陽菜には持って欲しくないのだ!」
「そんな事言わないでください………」
「お前は知らないから言えるのだよ!俺達【黒羽】の呪われた血を…………」
「【黒羽】の呪われた血ですか?」
「そうだ!俺達には呪われた血が流れている!」
「どういう事ですか?」
「それは…………何でもない!」
「気になります!」
「済まないな!これは俺達の問題だからな!」
「…………そうですよね私がとやかく、言う事ではないですよね!」
「でも、不思議な奴だな!俺がこんな事を初対面の奴に話したのは初めてだ!」
「そうなんですか?」
「ああ、そうだ!それに陽菜が家族以外で、あんなに懐いたのも初めて見た」
「陽菜ちゃんがですか?」
「陽菜は人見知りが激しくて、いつも遊ぶ時は一人だった!………だから、アイツは友達はいらないと何時も言っていた」
「………そんな風には見えなかったです」
「そうだな!今日の陽菜は凄く楽しそうだった!有難う!」
「こっちも楽しかったです!」
「そう言って貰うと助かる!」
零は寛子達にお礼を言うと、陽菜の手を握りだして「母さん達が心配するから帰るか!」と言うと陽菜も頷いて寛子達の方を見て言ってきた。
「お姉ちゃん達、今日はありがとう!また今度ね!バイバイ!」
「「「またね!バイバイ!」」」
寛子達は陽菜達に手を振って見送った。
陽菜達の姿が見えなくなり、寛子は時間を見ると17時40分だったので寛子達は家に帰る事にした。
寛子と由美は和美と別れて、二人で家に向かってる途中でお互いが感じた事を言った。
「ねえ、由美!今日ね……零さんが使った能力で、私の背中が何故だか疼いたの!」
「えっ!寛子も?……私も右手がビリビリして、痛かったの!」
「ゆ、由美もなの!?」
「うん!……でも一体、どう言う事なの?」
「分からない………帰ってお母さん達に聞いてみようよ!お母さん達なら何か知っているかも、しれないから、聞いてみよう!」
「そうだね!なら、早く帰ろ!」
寛子と由美は急いで帰っていった。
 




