放課後の寄り道2
寛子と由美はそれぞれ身体に異変を感じて、後ろを振り返ると一人の男性がこちらを見ていた。
その男性の容姿は、20代前半ぐらいの歳に見えて身長も180cmはあるだろう、何より男性の白い髪が寛子達に強い印象を与えた。
寛子と由美は黙って、男性を見ていると、陽菜がいきなり男性に「お兄ちゃん!」と言ったので、寛子達はビックリした。
「ねえ、陽菜ちゃん……この人が、お兄ちゃんなの?」
「うん、そうだよ!寛子お姉ちゃん」
寛子達は陽菜の会話で白い髪の男性が、陽菜の兄だと分かると、男性に話し掛けた。
「あ、あの〜、陽菜ちゃんのお兄さんですか?」
陽菜の質問に男性は答えてきた。
「そうだ!………妹が世話になったみたいだな!有難う!」
男性は低い声で答えながら、寛子達の傍に歩いてきた。
男性が寛子達の近くまで来ると陽菜が笑顔で男性に抱き着いた。
男性は陽菜の頭に手を置くと「やれやれ!」と小さく呟いた。
陽菜は喜んでいるみたいで、寛子達も安心した。
陽菜は寛子達の、名前をそれぞれ男性に紹介した。
「えっね、お兄ちゃん紹介するね!寛子お姉ちゃんと由美お姉ちゃんと和美お姉ちゃんだよ!」
寛子達は陽菜に紹介されて男性に頭を下げて挨拶をした。
「初めまして海外 寛子です」
「初めまして、後藤 由美です」
「こんにちわ、斉藤 和美です」
寛子達が挨拶をしてきたので、男性も寛子達に軽く頭を下げて名前を名乗った。
「俺の名前は【黒羽 零】だ!妹が、お世話になって、済まなかった!」
零がそう言うと、陽菜の手を握り、陽菜に話し掛けてきた。
「お前は直ぐに迷子になるからあれ程、俺から離れるなと言っただろ!」
「だって、あそこのゲームセンターにある「紅のパンダ」さんが可愛かったんだもん!」
「はぁ〜!………また、ぬいぐるみか!」
「うん!凄く、可愛いんだよ!お兄ちゃん取ってよ!」
「駄目だ!」
「え−−−!?何でよ!」
「家にどれほどの、ヌイグルミがあると思っているんだ!」
「だって!可愛いんだもん!」
「駄目なものは駄目だ!」
「お兄ちゃんのケチ!キライ!」
寛子達は陽菜と零の会話を聞いていて、陽菜が自分達と同じゲームセンターに行きたがっているのが分かったので、零に一緒に行かないか聞いてみた。
すると、陽菜は大喜びをして零の傍を離れ、寛子の後ろに隠れて零に向かって舌を出して「べー!」としたので零は陽菜に手を出して「もう、帰るぞと!」と言ったが、陽菜は寛子の後ろに隠れて「ぬいぐるみを取ってくれるまで帰らない!」と駄々を捏ねていた。
寛子は零にもう一度、一緒に行きませんかと聞くと、零は「やれやれ!」と言って寛子達に同行すると返事をした。
五人でゲームセンターにやってくると和美は早速、アーケードの方に向かって寛子と由美は陽菜と零と四人でUFOキャッチャーの方へ向かって行った。
紅のパンダがあるUFOキャッチャーの所に来ると、由美が財布から百円を出すと早速、UFOキャッチャーに投入してゲームをやってみた。
「いっちょ、頑張りますかね!」
「由美お姉ちゃん頑張れ!」
「陽菜ちゃん任せてね!」
由美はそう言ってクレーン操作をし始める、ぬいぐるみが寝っ転がっている場所にクレーンを持ってくると、そこに位置を決めてクレーンを投下させた。
クレームは爪を開いて横になっているヌイグルミの上に降りてきた。
爪がヌイグルミを掴むとヌイグルミを持ち上げた。
しかし、ヌイグルミは爪の間からコロッと落ちてしまったのだ。
「………あ~あ、落ちちゃった!」
「由美お姉ちゃん、ファイトだよ!頑張って!」
「そうだね!諦めたら、そこで終わりだもんね!」
「そうだよ!」
由美はもう一度、百円を取り出すとUFOキャッチャーに投入してやってみたが、やっぱり失敗で終わった。
由美はムキになって、あっという間に千円ぐらい使ったが、一つも取れないでいた!
由美は頭に血が昇ってしまい、「そのUFOキャッチャーはインチキよ!」と言って右手に雷を作った。
それを見て、寛子と陽菜は由美を後ろから捕まえて「壊すのは止めて!」と言って由美を止めていた。
それを見ていた零が「何をやっているんだ!」と言って財布を取り出した。
「取り敢えず、由美ちゃんだったか?とにかく、落ち着け!」
「……………は、はい!」
由美は零の言葉で落ち着いたので、零は「なら、俺が取ってやる!」と言うと財布から百円を出してUFOキャッチャーに投入して、クレーンを操作し始めた。
零がクレーンをヌイグルミの上に持って行くと、ヌイグルミの中心ではなくて、頭の方に位置を合わせるとクレーンを下ろした。
それを見た由美は、「そこじゃダメ!」と言った。
しかし、「まあ~、見とけ!」と言うとクレーンの方を見ていた。
クレーンはヌイグルミの頭の上で爪を開いて降下して、ヌイグルミの頭の上で空ぶったので、由美は「やっぱりね!」と言うとUFOキャッチャーの方を見ていた。
しかし、爪が閉じた時に、爪がヌイグルミのタグに引っかかり、ヌイグルミを引こずっていたのだ。
フォークはそのまま、出口までヌイグルミを引こずっていた時に、もう一つの横になっているヌイグルミを一緒に引
こずって出口までやって来て、二つのヌイグルミが落ちてきた。
「「す、凄い一回で二体取れた!」」
「やっぱり、お兄ちゃんはすごいね!」
零は寛子達の言葉には反応しなくて、UFOキャッチャーの中に手を入れると二つのヌイグルミを取り、一つは陽菜にやって、もう一つを由美の方へ突き出して言った。
「……………やる!」
「えっ?いいんですか?」
「陽菜は一つで充分だ!二つはいらない!」
「あ、ありがとうございます!」
由美はヌイグルミを受け取ると笑顔で零に頭を下げた。
そして、ヌイグルミを手に入れた由美と陽菜は凄く、喜んでいた。
寛子達は目的は果たしたので和美を探そうとアーケードのコーナーに探しに向かった。




