放課後の寄り道1
昼休みの出来事から由美と和美は不機嫌なまま、午後からの授業を受けていた。
二人の機嫌は直らないまま、時間が流れて放課後になった。
寛子は由美と和美に一緒に帰ろうと言うと二人とも「良いよ!」と返事をしてくれたので三人で帰る事にした。
寛子は鞄を持つとそのまま教室を出ようとした時に弘雅の席をチラッと見て思った。
(結局、今日は一日中、来なかったわね!何をしているのかしら?)
そんな事を思っていたら、由美達が廊下で「何してるの?」と叫ぶ声がしたので寛子は慌てて由美達の方へ行った。
三人で帰りながら、今日の昼休みの事を話していた。
「はぁ〜!今日は災難だったわ!」
「そうだよね!まさか、黒柳さんが出て来るとは思わなかったわ!」
「由美も和美さんも運がなかったわよね!」
「「本当に思い出すとムカツク!!」」
「二人とも本当に災難だったもんね!」
「何、一人だけ他人事に言ってのよ!」
「そうだよね!寛子ちゃんは、何もなかったから、そう言えるのよ!」
「ふ、二人とも落ち着いて!謝るから!」
「あっ!そういえば、寛子に昼休みにアイスを奢って貰ってない!」
「わ、忘れてた………ゴメン!」
「なら、今から私達に付き合ってもらおうかな?」
「ど、何処に行くつもりなの?」
寛子がそう言うと、由美と和美はヒソヒソと話し出して、行き先が決まったのか、寛子を見てニッコリと笑って言ってきた。
「私達、今日はストレスが溜まっているのよね!」
「うんうん!」
「……………で、何処に決めたの?」
「「ゲームセンターに行こうよ!」」
「えっ!?」
寛子は予想外の場所を言ってきたので、ビックリした。
「確か先週から入ったアーケードの『ラグナロク』が私、やってみたかったの!」
「私はUFOキャッチャーで『紅いパンダ』のぬいぐるみが取りたいな〜!」
「………二人ともノリノリだね!」
由美と和美はテンションを上げて二人で話していた。
その二人を見ながら寛子は「元気だね!」と思った。三人はゲームセンターのある通りを歩いている途中で、自販機を見付けたので寛子達はジュースが飲みたくなり、それぞれジュースを買ったのだか、和美の買ったジュースに寛子と由美は驚いた。
「ね、ねえ?和美さんが買ったジュースって、見た事がないけど、それって何?」
「これ?これは、期間限定の【ファンタ青汁】よ!」
「「ファンタ青汁!?」」
「そうよ!私も最初は買うのを戸惑ったけど、いざ飲んでみたら病み付きになっちゃって、今では毎日、飲んでるよ!」
「「………そ、そうなの?」」
寛子と由美は絶対に美味しくないはずと思った。
そしたら和美は二人に一口、飲んでみてよと言っていた。
「ねえ!最初は由美の方から飲んでみてよ!」
「えっ!?………私は遠慮するわ!」
「そんな事、言わないで一口だけだからね!」
「ちょっと、和美!嫌だってば!」
由美は後ろに少しずつ下がりながら、必死に拒んだ。
しかし、和美は由美の口にジュースをつけて一口、飲ませた。
「!?!!!!!!!!!」
由美は声にならない叫びを上げて、近くの狭い路地に駆け出してそして吐いた。
その姿を見た和美は「お口に合わなかったのかな?」と言っていた。
そして、次に寛子の方を見て「さあ、寛子ちゃんも!」と言いながら寛子にジリジリと近寄ってきた。
寛子も後ろに下がりながら「いらない!」と必死に拒んでいたが、和美は由美の時と同じで寛子に素早く近づくと寛子の口にジュースを当てて一口、飲ませた。
「!!!!!!!!!!!!」
寛子も声にならない叫びを上げながら、由美の近くに走って行くと狭い路地で吐いた。
その姿を見た和美は、ファンタ青汁を美味しそうに飲みながら、首を傾げた。
寛子と由美は気分が優れるまで5分ぐらい必要だった。
二人の気分も少しは良くなってきて和美に言った。
「「貴女!なんて物を飲ますのよ!!!」」
「二人とも何を言ってるの?」
「「だから、そのファンタ青汁の事よ!」」
「二人とも味覚大丈夫?」
「「貴女には言われたくない!」」
寛子と由美は顔を真っ赤にして和美に言ったが和美は、首を傾げて「?」な表情だった。
寛子も由美も深く溜息を吐いて、和美には何を言ってもダメだと思って、「ゲームセンターに行こう!」と和美に言った。
和美も「うん!」と頷くと三人は歩き出した。
寛子達はゲームセンターの看板が見えたの急いで歩き出した時に、寛子は横の狭い路地から飛び出して来た小さい女の子とぶつかってしまい、尻餅をついてしまった。
寛子とぶつかった女の子も尻餅をついたまま瞳に涙を貯めていた。
それを見た寛子は慌てて、女の子に声を掛けた。
「ごめんね!大丈夫?」
「う、うん!」
「いきなり、飛び出してきたから、避けきれなくてごめんね!」
「こっちこそ、飛び出してごめんなさい!お姉ちゃん」
寛子は立ち上がると、お尻に付いた砂を手で振り払うとまだ、座り込んでいる少女に手を差し伸べた。
「立てる?」
少女は寛子の手を握るとそのまま起き上がった。
由美と和美が少女の服に付いた砂を払うと、話し掛けた。
「お名前、聞いてもいいかな?」
「うん!いいよ!私の名前は、陽菜って言うの!」
「へぇ~!陽菜ちゃんか!良い名前だね!お姉ちゃんの名前は由美って言うのよ!でね、こっちのお姉ちゃんが寛子で、もう一人のお姉ちゃんが和美だよ!」
「分かった!由美お姉ちゃんだね!」
「可愛い!!!」
「えへ!ありがとう由美お姉ちゃん」
「持って帰ってもいいかな?」
「「ダメ!」」
寛子と和美が直ぐにツッコミを入れた、少女はキョトンとしていた。
寛子が陽菜が一人なのが疑問に思い、陽菜に聞いてみた。
「陽菜ちゃんは一人で遊んでるの?」
「ううん、…………お兄ちゃんとはぐれたの!」
「迷子なの!?」
「うん!」
「まいったな!」
寛子は由美と和美の方を見て「陽菜ちゃんのお兄ちゃんを探そう!」と言うと二人も頷いて、陽菜にお兄ちゃんの特徴を聞いてみた。
でも、陽菜が答えた内容にはお兄ちゃんを探せる様な特徴はなかったので、三人は取り敢えず、陽菜を連れて交番に行こうと決めて、歩きだそうとした時だった。
寛子の背中が少し疼いた。
そして、由美も右腕が少しビリっとした。
((………な、何なの?))
二人は何が起こったのと思いなが後ろ振り向くと、そこには一人の男性が立っていた。




