騒ぎ
寛子と由美は手を振っている和美の席へと向かって行った。
二人は丁度、席が空いていなかったので和美に感謝した。
二人は席に着くと、ふと疑問を感じて、和美に話し掛けた。
「あれ?和美って何時もはお弁当だったよね?」
「そうだよ!でも、昨日は【ある物】を作成していたら、寝るのが遅くて寝坊したから、お弁当を作り損ねたのよ!どうしようかな〜って思っていたら、二人が食堂に行くのが見えたから私もこっちに来たのよ!」
((ある物ってファンクラブだろ!!))
二人は心の中で、ツッコミを入れた。
気を取り直して由美が聞いた。
「でも、よく席が取れたよね?」
「それは、寛子ちゃんが此処に座るからって、言ったら直ぐに席を譲ってくれたのよ!」
「で!何を交換条件したの?」
「寛子ちゃんと由美の写真で…………あっ!?」
「「ほぉ〜………生きて帰れるとは思わない事ね!」」
「ゴメン!で、でも、席が確保出来たんだしね!」
「でも、私達の写真をいつ撮ったのかな〜?………和美!」
「そ、それは企業秘密です!………由美さん…顔が怖いです」
由美の右手に雷が作られているのが分かり、それを見た和美はブルブルと震えていた。
それを見ていた寛子は、苦笑いしていたが、ふと周りの視線に気が付いた。
他の生徒達が寛子達を見てヒソヒソと話しているのだ!その状況に由美と和美も気が付いた。
「ねえ由美、さっきから見られているんだけど……」
「はぁ〜……やっぱり、こうなると思ったわ!」
由美は深く溜息を吐いて言った。
「寛子は今は学園では噂の人なのよ!だから一目、見ようとして、こんな状況になったのよ!」
「ええ−−−?」
「だって、寛子の容姿は目立つからね!」
「……そんなに変かな?」
「………あんた、何処まで天然なの?………はぁ〜もう馴れるしかないのよ!」
「何か………嫌だなぁ〜」
「嫌がる事はないのよ!だって、寛子ちゃんには魅力があるんだから!」
「……………いらない!」
寛子は和美に聴こえない様に呟いた。
由美が気を取り直して、気にしても、しょうがないと言って、ご飯を食べようと言ったので、寛子も和美も頷いて食べ始めた。
「和美!気になっていたけど、どうして寛子ちゃんなの?」
「それは付き合いが浅いのに呼び捨てはマズイでしょ!」
「勝手に学園のサーバーに寛子のファンクラブを作ったのに?」
「!?………どうして、知ってるの?」
「とある方から、の通報でね!」
「…………うぅぅ!誰だ!チクったのは!」
和美は悔しそうに言った。
寛子と由美はコイツはこれからも、監視しないといけないと思った。
寛子も和美とは、長い付き合いに成りそうと思った。
由美は寛子にファンクラブを作った思惑を聞いてみた。
「それにしても、何で寛子のファンクラブなんて作ったの?」
「それは、寛子ちゃんの魅力を伝えるためよ!」
「和美…それってどういう事かな?」
「そ、それは寛子ちゃんは絶対に美人だし、私は学園でも上位だと思ってるの!」
「やっぱりね………和美が考えそうな事だわ!」
「ねえ、由美は分かってくれるよね!」
「まぁ~寛子の容姿を見ればみんなそう思うでしょうね!」
「そうでしょ!そうでしょ!やっぱり、由美は分かってくれるんだ!」
「余り、和美の事は理解したくないけどね!」
「酷いわね……由美!」
「それより、肝心の本人は………」
由美と和美は寛子の方を見つめた。
すると、寛子は否定する様に言った。
「そんな事ないよ!私なんかより、由実の方が美人だし!」
「「……………もう、これはダメね!………ワザとやってない?」」
寛子のそんな言葉に二人は深く溜息を吐いた。
そんな事をしていたら、周りの生徒達の視線が強くなった事に気が付いた。
そんな中、二人の一年生らしき女子が寛子達に話し掛けたそうにモジモジしながらこっちを見ていた。
由美が「どうしたの?」と聞くと一年生らしき女子は話してきた。
「あ、あのう先輩方に憧れまして、握手して欲しいと思いまして、もし御迷惑でなければお願いします!」
寛子達は驚いて、少し唖然としたが直ぐに気を取り直して、笑顔で「良いよ!」と返事をした。
その返事に女の子は喜んで手を出して来たので三人は握手をすると、「キャー!やった!」などを言ってお辞儀をして去っていった。
それを見ていた他の生徒達も、一斉に寛子達に握手を求めてきた。
「な、何なのよ!」
「分かんないわよ!」
「止めて!!!!」
三人は人混みに揉まれていった!
「ちょっと、どこ触ってるのよ!!!」
「止めて下さい!!!」
「止めろって、言ってるやろ!!!」
三人の言葉は生徒達には、聞いて貰えず人混みの中でもがいていると一人の女性の声がした。
「あなた達、何をしているんですか?ここは騒ぐ場所では御座いませんのよ!」
その声を聞いた生徒達は一斉に、寛子達から離れて声の方を振り向く。
寛子達は混乱していて何が起こったのかが分からなかった。
「もう、大変な目にあったわ!」
「制服がシワだらけ………もう嫌だよ!」
「絶対に許さない!」
そんな事を寛子達が言ってると、先ほどの声の持ち主が声を掛けてきた。
「貴女達も大丈夫?」
「「「!?………誰?」」」
寛子達は声の方を振り向くとそこには、一人の女性が立っていた。




