家庭の事情
寛子と由美は陽子に連れて行かれ、1階へ降りて来て、リビングのソファーに座って待っていた。
待っている間に美沙子と陽子が夕食の用意を済ませてテーブルに並べていた。
夕食の準備が終わると、二人ともソファーに座り会話が始まった。
「美沙子、ごめんね!夕食をご馳走になって!」
「いいのよ~!昔はよく食べに来てたじゃないの~?」
「あの時はまだ、私も美沙子も子供が生まれる前だったからよ!」
「もう、あれから20年もたったのね~………懐かしいわね~」
「そうね!まさか、私達が子供を産むなんて考えもしなかったわ!」
「あの事件が無かったら、私も陽子も子供を産む気なんてなかったわ~!」
二人は、何故か私達を見てながら昔話しで思いに浸っていた。
寛子と由美は二人が何を話しているのか分からなかったので、二人に聞いてみた。
「陽子さん、その20年前からお母さんと知り合いだったんですか?」
「そうよ!私達は生まれてずっと、一緒だったのよ!」
「嘘!?陽子さんとお母さんは幼なじみなんですか?」
「貴女達と同じよ!」
由美と寛子は陽子の話しを聞いてビックリしていたら、美沙子が二人に話しだした。
「私と陽子は、家の付き合いでずっと、生まれてからずっと一緒にいたのよ!」
「美沙子さん!昔から家の付き合いって、言いましたが、お母さんが男性だったのも知ってるんですか?」
「うん!知ってるわよ~!………昔の名前もね~!……五………」
「ストップ!美沙子!それ以上、言ったら怒るわよ!」
「冗談よ~………怖いわね~!陽子!」
「…………………」
(この人、知ってるんだ!お母さんの本名も………)
寛子も由美もまさか、自分達の母親が幼なじみだったと知らされて、驚いていた。
でも、先程から母親達が言っていた、20年前の事件が気になっていた。
「ねえ、お母さん……さっき、美沙子さんが言っていた20年前の事件て何なの?」
「それはね………内緒だよ!」
「えー!何で内緒なのよ!………お母さん、隠し事が多いよ!」
「そうだね………でも、時間が経てば二人共分かることだよ………今はこれしか言えない!」
陽子と美沙子は私達を見て、黙り込んだ。
(一体、何があったのよ?………何で私達を見て黙り込む必要があるの?)
寛子は、隠し事ばかりの陽子に不信感を感じたが、しかし自分の母親なので気持ちを切り替えようと話題を変えた。
「ねえ、お母さん!私達に話があるって言ったけど、どんな話しなの?」
そう、寛子が言うと陽子が話しが脱線していた事に気が付き、美沙子にの方を見て頷くと、次に寛子と由美を見て真剣な表情で語りだした。
「あのね、二人共よく聞いてね………まずは、寛子に付いて話すわね!寛子は私の旧姓を知っている?」
「全然知らない?」
「私の旧姓は【天羽】が私の旧姓なの………」
「【天羽】?………どっかで聞いた事があるような気がするな~?」
「まあ~、旧姓は覚えとく程度でいいんだけどね!でもこれからが、本題だよ!」
「う、うん!」
「私達の一族の話しは昨日したよね?」
「確か………代々、超能力を持って生まれて来て、男が生まれた時は能力を限界まで使うと女体化する事と先祖が天使だったよね?」
「よく覚えてるじゃない!………でもね、まだ言ってない事があるの!」
「な、なに?………」
「寛子は私が元男だと、知っているよね!」
「知ってるよ!お母さんが能力を使い過ぎて、男に戻れなくなったんだよね?」
「確かに能力を使い過ぎて、今の姿になったんだけどね………実はね、【天羽】の一族で今まで女体化が解けないのは、私だけだったの!」
「えっ!?だって、私達の一族は代々、能力の使い過ぎで女体化が解けなくなるって、お母さんが言ったじゃん!!」
「嘘ついて、ごめんね………でも、寛子が特別な子供だから、そう言うしかなかったの………」
「特別って………どうゆう意味があんの?」
「【天羽】の一族でね、女体化が解けなかった異例な存在が私なの………普通はね、女体化しても長くて三週間ぐらいで男に戻るの!だから、決して子供を宿す事はないのよ!………でも、私は男に戻れないだけじゃなく、貴女をを宿して生んでしまったの………」
「そんな………私って、異例なの?」
「………ごめんね寛子!今まで一族にそんな者が現れた事が無かったの………」
「………………」
「そして………貴女をお腹に宿した私は一族の中での生きて行くにはきつかったの!………だから、私は一族から逃げる様に家を出て【天羽】の性を捨てて、お父さんの性を名乗る様になったの!」
「何で今更………そんな事を話すのよ!!!」
「寛子………それはね!今日の夕方に暁先生から連絡があったの、寛子が空間干渉能力を使った事を教えて貰って、今は言えないけど時期が近づいて来ている事が分かったからよ!」
「何で、その能力とお母さんの隠し事が私達に関係あんのよ?」
寛子はもう、何がなんだか分からなくなって、陽子に叫んでいた。
娘に不信感を抱かれているのが、分かっていても陽子は唇を噛んで我慢していた。
(………ごめんなさい寛子………でも、本当に今は言えないの!)
由美は興奮している寛子の、横から肩に手を乗せて落ち着かせようとしていた。
「寛子、落ち着いて!………きっと、陽子さんも理由があって、まだ言えないのよ!」
「…………ありがとう、由美!」
その二人を見ていた陽子は由美に心の中でお礼を言っていた。
(由美ちゃん、ありがとね!貴女が寛子の幼馴染で本当に良かったわ)
一方、寛子は由美に落ち着いた後にお礼を言って、陽子の方を向くと話しをし始めた。
「ねえ、お母さん!」
「何?」
「お母さんは一族から、出て行ったんでしょ?………ひょっして、私の祖父も祖母も生きているんじゃないの?………前に言った、死んだって嘘でしょ!?」
「…………生きているわ!でも、会わない方がいいわ!」
「いいよ!………今更、会っても何を話していいのか分からないし………」
「本当に、ごめんね!………隠し事ばかりして………」
「もういいって!!由美が言うように、言えない理由があるんでしょ?」
「そうね………時期が来るまでは、私達からは言えないの!」
「………分かった!その件は、聞かないことにするね!」
「寛子、由美ちゃん!ありがとう!…………でもね、寛子にもう一つ言わないといけない事があるの!」
そう、陽子は言うと真剣な表情で寛子を見つめて言った。
「な、なに?まだ何かあるの?」
「寛子の身体についての秘密なの………」
陽子は、静かに語りだした……………




