誤ちの始まり
「しっかりするんじゃ!エル!!」
今にも事切れそうなエルに、必死に回復能力を使うエスト。
しかし、エルの傷は治らない。
それでも必死に回復能力を使うエストだった。
「どうしてなのじゃ!何故、傷が癒えないのじゃ!このままでは、エルが、、エルが死んでしまうのじゃ……」
泣きじゃくるエストの頭を撫でるエル。
「エスト、ありがとう…でも、これでよかったのよ」
「何がよいものか!儂らはこんな事、望んでなかったのに……」
「ごめんね……貴女達に、こんな事させちゃって…」
「何故じゃ?何故なのじゃ?!こんな事に何の意味があるのじゃ!?どうして主神は儂らを戦わせたのじゃ!!」
泣き叫ぶエストは地面に何度も何度も拳を叩きつける。
「儂は無力なのじゃ……何故、主神は儂を攻撃型で創ったのじゃ……儂の能力ではエルを助けられぬ……」
己の存在を悔やむエストの手を握るエル。
「……自分を責めないでエスト!貴女のせいではないわ……私達は創造神さまに創られた時から、創造神さまの命令に背くことは出来ないのですから……それに私は決して行ってはいけない事をしてしまった……だから消されて当然よ」
エルは後悔する。
自分が犯した罪により、姉妹達に悲しい思いをさせてしまった事を、自分だけが消されるならそれでも良いと思ってた。
しかし創造神が下した命令は姉妹での戦いだった。
「私が人間を創ってしまった為に、貴女達に辛い思いをさせてしまった……」
「私達の使命は星の監視。星への干渉は絶対に駄目!何故、エルは人間を創った?」
今まで黙っていた天使の1人、緑髪の背の低い天使がエルに質問する。
「ウル?」
姉妹の中でも滅多に喋らないウルに、エルも
驚く。
「答える!何故、エルは禁を犯した?」
「それは……寂しかったの」
「意味不明、答えになっていない!納得する理由を話す!」
「そうね……貴女達の星が羨ましかったなの」
「羨ましい?どうして?」
「私達は監視する星を創造神さまに決められ、星の生命が尽きるまで監視しなければならない。でも、私の監視する星は生命を禁じた星!何故、創造神さまがそんな事をしたのかは分からないけど、生命がいない星は孤独で寂しかった……見て、土と水しかないこの世界……草木一本も生えない星!それに比べて生命にありふれた貴女達の星が羨ましかった。」
「………」
ウルはエルの言葉を聞いて気付いたしまった。
エルから目を逸らし黙ってしまう。
エルは致命的な傷を負っているが、今まで抑えて感情が爆発した。
そして、必死に姉妹達に訴える。
「私ね、貴女達の星を覗き見していたの……楽しそうだった。草木が生茂った大地、人間や他の種が色んな物を作り、発展していく世界……それに比べて私の星には何もない。だから、私は禁を犯した!!万能型と創られ色々な能力を授かった。けど、こんな1人の世界で何をすればいいの?寂しさを紛らす能力なんて持ってない!!ねぇ、教えて!私はどうすればよかったの?私達は創られた存在だけど兵器じゃない。人間と同じように痛みや嬉しさや悲しさも感じるだよ!どうすればよかったの?……ねぇ」
エルの必死な問いにエスト達は答えられなかった。
皆、知っていた。
エルが1人で何もない、この星で歌っていたのを……
同じ創造神から創られたエスト達は他の姉妹の存在を感じる事ができた。
それは時として相手の感情までも感じてしまうのだ。
だから、エルが1人歌っている時、とても悲しい感情が自分達に流れてくる。
だから、誰もがエルの事を責めることが出来ない。
「「「「…………」」」」
誰もエルの問いに答えられずにいた。
沈黙の中、エスト達の背後から声が聞こえた。
「気付けなくて、すまなかった」
空間が割れる。
「「「「「!?」」」」」
割れた空間から男性が現れた。
 




