旅は道連れ(中編)
すいません。メンテナンスで、予約が出来ませんでした。
陽子の言葉に、美沙子は固まる。
「無理よ〜!陽子も分かっているでしょ〜?【黒羽】の一族が【天羽】の領土に入ったら、どんな仕打ちを受けるか!それに零クンの事は私達で庇う事が出来るけど、流石に2人は無理よ〜!」
美沙子の言う通り【黒羽】の一族は過去に【天羽】と【光守】の一族に対して、大罪を犯した。
その大罪は、現在となっても消える事は無いのだ。
その事は陽子にも十分に分かっていたが、娘から聞いた陽菜や零の人柄を考えると、今の【黒羽】の人々は昔と違い、監視する必要は無いと思えたのだ。(一部の人物を覗いて)
だから【天羽】に戻るついでに、当主に零と陽菜の父親を紹介したかったのだ。
陽子は反抗的な態度で話す。
「そうかしら?」
「絶対に無理よ〜!貴女も知っているでしょ〜!当主の性格を〜」
「知っているけど………それでも、やって見ないと分からないでしょ!!」
「もお〜、頑固者ね〜!昔から言い出したらきかないんだから〜!もう、私は何も言わないわ!陽子の好きにしなさい〜!」
「ありがとう!美沙子」
陽子は早速、零の携帯に電話を掛ける。
プルル……ガチャ!!
『はい、もしもし零です!』
(うわっ!はやっ!!)
「あ、零クン?陽子だけど」
『あっ、陽子さん!この前はお世話になりました』
「こっちこそ無理やり泊めて、ごめんなさいね!」
『いえいえ、楽しかったので問題はありません。それより、どうしたんですか?』
「明日の事なんだけどね!明日の朝7時30分までには、私の家に来て欲しいのよ!」
『分かりました。では、明日は宜しくお願いします!』
「うん、此方こそね!」
『では、準備の方がありますので、失礼します』
「待って、零クン!」
陽子は電話を切ろうとした零を呼び止めた。
『まだ、何があるのですか?』
「うん……その……零クンのお父さんに用があるの」
『親父にですか?』
「そう……今、零クンの近くに居るかな?」
『いえ、親父は仕事に行っているので、多分遅くにしか帰らないと思いますが?』
「そう………」
『何が親父に伝言があるのなら、伝えときますが?』
「じゃあ頼もうかしら!あのね零クン……明日はお父さんにも、御同行して欲しいのよ!」
『はい?お、親父もですか?』
予期せぬ要件に、零は驚いた。
「そうなの!零クンも【黒羽】と【天羽】の関係は知っていると思うけど、【黒羽】が罪を犯したのは、昔の事であって、今の零クンや寛子から聞いた妹さんを内容から見て、大丈夫だと思えたの!だから、この機会に【天羽】の当主に、ハッキリと伝えたいのよ!〝今の【黒羽】の人達は大丈夫だって!″だから、その為には、どうしても零クンのお父さんと、当主を会わせないといけないのよ!」
『…………』
零は悩んでいた。
陽子の言っている事は、凄く嬉しい事なのだが、しかし、【黒羽】には、現に堕ちた兄がいる。
【天羽】の人達は堕ちた兄(刀馬)の存在がある限り、決して許さないのではと、思えて仕方がなかった。
無言になる零に(やっぱり、言う時期が早かったかな〜……)と後悔している陽子が、恐る恐る話かける。
「やっぱり、駄目かな?」
『…………』
「ごめんなさい……無理を言って……この話は、なかっ…!?」
『陽子さんは、刀馬の存在をどうするつもりなのですか?』
陽子が話してる最中に、零が質問した。
「零クンのお兄さんの事?ああ、それなら大丈夫よ!」
陽子は自信満々に答える。
『何か良い方法でも、あるのですか?』
「うん、零クンのお兄さんに付いては、お兄さんの能力を奪ってしまえば良いのよ!」
『の、能力を奪う?』
零は陽子の言っている意味が理解出来なかった。
陽子は零が困惑していると思い、説明を始めた。
「ねえ、零クン!」
『は、はい!』
「この前のお兄さんと、私の闘いを憶えている?」
『憶えています!』
「私が[白の天御]でお兄さんを、攻撃した後の事は?」
『それも、憶えています!』
「なら、分かるわね!」
『えっ?意味が分からないのですが………』
「分かんないかな〜?あの後の、お兄さんと美沙子の話よ!」
『あっ!?』
零は兄と美沙子の話の内容を思い出す。
「そうよ!お兄さんは〝【光守】から、能力を奪い自分に移植した″って言っていたわよね?だったら、その逆も可能な筈よ!」
陽子の言っている事は理屈は分かった。しかし、同時にある疑問が浮き上がる。
『確かに、その理屈は分かりましたが、仮に刀馬の能力を奪えたとしても、誰が[堕ちた者]の能力を受け取るんですか?』
零の言う通り、仮に刀馬から[黒の刻印]の能力を奪えたとしても、その能力を受け取るだけの器が無ければ、大抵の者は力に飲み込まれて、第二の刀馬になってしまうのだ。
零は刀馬と同じ[黒の刻印]の能力を宿しているのだから[黒の刻印]の能力が如何に危険なものだと、分かっていた。
『あの時、美沙子さんが言いましたよね!〝天敵となる能力を移植したから、拒絶反応を起こした″と………あの能力を、もし由美さんや美沙子さんが受け継いだとしても【光守】の血が反発して、刀馬と同じように拒絶反応が出てしまう!また、陽子さんや寛子さんの場合だって、同じ因子を持つが故に[黒の刻印]へと、目覚めてしまうかもしれない………』
一度は兄(刀馬)を、この手で必ず殺すと誓った零だったが、陽子のいう方法が可能なら、〝また優しい兄に戻ってくれるのでは?″と思ってしまった。
しかし、冷静に考えると刀馬から、能力を奪ったとしても、その[黒の刻印]の能力を受け継、制御する者がいなければ意味がない。
『やはり、刀馬は殺すしか、方法はありません………』
沈んだ気持ちで零が話す。
「あら、そんな事を心配していたの?その件なら、大丈夫よ!」
悩む零に対して、陽子はあっさりと答えた。
『だ、誰か適材な人がいるんですか?』
陽子の言葉に、零は一筋の希望が見えた。
「うん、その人はね………」
『その人は?』
「貴方よ!零クン!」
『……………俺っ?』
「そう、君!」
陽子の言葉に、思考が停止する。
『………………』
「おーい、おーい!大丈夫?」
陽子の呼び掛けで、止まっていた思考が再び動きだす。
『だ、大丈夫です……でも、陽子さんから突然、指名されたので困惑してしまいました!』
「ごめんね〜!突然だから、ビックリしたでしょ!でもね、ちゃんと訳があって、零クンを選んだんだよ!」
『俺を選んだ理由?それは一体?』
「まず先程、零クンが話した通り、私達の四人は[黒の刻印]の能力を受けきる事は出来ないわ!でも、最初から、同じ能力を持っている人間なら、問題は無いでしょ?」
『しかし、俺が刀馬の能力を受け継いだとして、力に飲み込まれたら、今度は俺が第二の刀馬になる可能性も出て来るんですよね?』
(あの優しかった兄を狂わせた能力を、果たして俺は制御出来るのだろうか?)
そう思った零の心の中は、不安で一杯だった。
「私はね……零クンなら、きっと[黒の刻印]の能力を制御してくれるって信じてるの!だって、貴方は〝寛子を護る″って、あの時、約束してくれたからね!」
陽子の言葉を聞いた零は、弱い自分を恥じいた。
大きく呼吸をして、気持ちを落ち着かせると、右手を強く握り拳を作る。
バキッ!!
自分の顔を握った拳で殴り、気合を入れ直した。
「ち、ちょっと、何があったの?零クン」
心配そうに、陽子が零に訪ねる。
『大丈夫です!!……そうでしたね……俺は寛子さんを護ると誓いました!だから、そんな能力なんて、俺が逆に取り込んでやりますよ!!』
「そうよ!その調子よ!」
『陽子さん、有難う御座います!お陰で、目が覚めました!』
「ふふふ、御礼なんていいわよ!………でも、」
陽子は笑いながら答えていたが、突如、声のトーンを落とし零に言う。
「………覚悟だけでは越えられない壁があるのよ……今の貴方では[黒の刻印]の能力を制御するどころか、逆に取り込まれてしまう………だから、貴方には【天羽】の実家に行った時に、ある儀式を受けて貰いたいの!」
たった今、気合を入れ直したばかりの零だったが、突然の陽子の変わりように動揺してしまった。
しかし、動揺した心も直ぐに平常心に戻った。
理由は、陽子の言葉が零に中に火を付けたのだ。
『………確かに、今の俺は陽子さん達の足元にも及ばないでしょう……でも【天羽】で、その儀式を受ければ強くなれるのですか?』
零の言葉を聞いた陽子は、口元をニヤリとさせた。
「強くなるわよ!今の貴方の数倍もね!でも、その儀式を成功させる確率は30%ぐらいよ!もし、失敗した場合…………貴方は死ぬわ!それでも、受ける覚悟はある?」
『俺は寛子さんを護ると誓った時から、覚悟は決めてました!だから、俺は彼女を護る為なら、どんな事だってするつもりです!』
零の覚悟が聞けて安心する陽子だった。
(ねえ、京ちゃん……寛子の彼は貴方に、そっくりよ!何か妬けて来ちゃったわ!)
零と京介は似ていると思うと、自然と笑ってしまう。
「分かったわ!なら、詳しい説明は【天羽】に実家に着いてからするわ!」
『はい!宜しくお願いします!』
「いいのよ!零クンに、無茶を頼んでるのは、私だもの!でもね、絶対に無理だけはしないでよ!貴方が死んで、一番悲しむのは寛子だと憶えていてね!」
『はい………分かっています!』
「ごめんね、言ってる事が矛盾しているよね………でも、零クンが寛子と、この先、一緒に闘って行くのであれば、強くならないと駄目なの!その事だけは分かって………」
『大丈夫です!これも生き残る為には、必要な事なんですよね!』
「そう………いずれ訪れる〝約束の時″は、そう遠くないのじゃ……7年前の〝あの時″に扉は開かれた………そして、〝選ばれた者″の1人になるのじゃ!」
陽子は何かに取り憑かれたかのように言った。
その言葉を聞いた美沙子さんと凛は、顔を真っ青にする。
「よ、陽子………」
「お母さん………」
意味が分からない由美は、二人に訪ねるが答えてはくれなかった。
そして、零も意味不明な言葉の意味を陽子に聞く。
『ど、どうしたんですか?突然、口調が変わって……それに〝約束の時″って何なんですか?7年前の〝あの時″とは一体?』
零のの呼び掛けで、陽子は正気に戻った。
「あれ?私……どうしたの?」
『それは、こっちが知りたいですよ!それより、〝約束の時″って、なんですか?それに、7年前の〝あの時″に何があったんで…!?』
ガタッ!!
零の言葉を聞いた、陽子は携帯を落としてしまった。
「ど、どうして、零クンがその事を知っているの………?」
陽子は直ぐ様、美沙子の方を見る。
美沙子は、首を横に振りながら言った。
「さっき、陽子が自分で話したのよ………」
何時も読んで下さり有難う御座います。
次は9/12に更新予定です。




