忘れていた!
凛は、父親が自分達に見せたいものが、どうしても気になった。
「見せたいもの?」
『ああ、そうだよ!』
「それって、何なの?」
『それは………今は言えない!』
「電話じゃ、言えないんだ………」
『そういう事!』
「お父さんの職場には、早く行った方がいいの?」
『そうだな……出来るだけ早い方が良い!』
「う〜ん、私だけじゃ決められないから、お母さんに変わるね!」
『分かった。お母さんに変わってくれ!……あっ!後から、凛とお母さんの写メを送ってくれ!出来れば、寛子の制服を着たのを希望する!』
「えー!!恥ずかしいよ!」
『これも思い出だ!』
「んもぉ〜、そんな時に使わないでよ!」
『あはは…すまん、すまん!なら、お母さんに変わってくれ!』
「分かった!お母さん、はい!」
凛は携帯を母親に渡すと、ソファーに座っている由美の隣に座った。
「感動の再会だったね!凛ちゃん」
「そうですか?確かにお母さんに会えて感動しましたけど、お父さんの後半の行動はちょっと……」
疲れた表情する凛に、由美が笑う。
「叔父さんは、昔から変わらないね!」
「そうなんですよ!何時も突然、突拍子もない事を言ったりするから、私達に迷惑が掛かるんですよ!」
「正に我が道を行くだね!」
「単に自己中なんですよ!」
「凛ちゃん、ヒッドーイ!!」
「そうです!私は悪女なんです!」
キリッと、凛が目を鋭くする。
「プッ!……キャラが似合ってないよ!」
由美が大声で笑う。
「そ、そうですか?」
(ちょっと、そこまで笑いますか?)
ちょっと本気で演じたのだが、由美に大いに笑われた為、凛は凹んだ。
一方、陽子は電話で京介と何やら、深刻な話しをしているのか、表情が真剣だった。
「分かったわ!……それが本当なら、凛は………」
『ああ、陽ちゃんが思ってる通りになるさ!』
「そっか……でも、凛の事は取り敢えず良しとして、それより京ちゃんがしている事の方が………」
『分かっている……でも、大丈夫だ!心配するな!』
「そう………京ちゃんが、そう言うなら私は何も言わないわ………」
『すまないな………本当に迷惑ばかり掛けて……』
「いいのよ!今に始まった事じゃないしね!でも、なるべく早く、そっちに行ける様にするわ!」
『そうしてくれ!余り、時間が残されて無いからな……なら、仕事にもどるから子供達に宜しく伝えといてくれ!』
「分かったわ!京ちゃんも、身体に気を付けてよ!」
『大丈夫!昔から身体だけは丈夫だから!それじゃ、大変だと思うけど、頑張ってくれ!』
「京ちゃんもね!バイバイ〜」
『おう!』
京介との話を終えると、陽子は何やら、ニコニコした表情で凛達の前のソファーに座った。
やけに、ご機嫌な母親を見て、凛が訪ねる。
「何か、凄くご機嫌じゃないの、お母さん?」
「うふふ、分かる?」
「分かるよ!そんな、幸せそうな顔を見れば………何かあったの?」
「うん、あったよ〜!」
「えっ!なに、なに?教えてよ!」
「それはね〜………内緒!」
「あっ!ずる〜い!何で教えてよくれないのよ!」
「それは、京ちゃんとの約束だから、教えてあげられないの!」
「また、お父さんか………」
「そっ!だから、京ちゃんの職場に行くまで、ヒ•ミ•ツ!」
陽子は可愛いしくさで、ウィンクをした。
「「……………」」
凛と由美は、思わず無言になる。
「な、何で黙るのよ?貴女達!」
凛と由美は、お互いを見て言った。
「お母さんの歳で……」
「それはOUTですよ……」
ピキッ!
陽子に青筋が浮き上がる。
でも、顔は笑っている為、その姿は余計に恐ろしく思えた。
「う、嘘、嘘!に、似合っていたよ!」
「か、可愛かったですよ?陽子さん」
由美の言葉に、陽子が反応する。
「ん〜?由美ちゃん……何で「可愛かった?」なのかな〜?」
陽子の右手が、由美の顔へジワジワと、関節を鳴らしながら向かってくる。
「ヒッ!」
由美は隣にいた凛を盾にした。
「ち、ちょっと、由美さん!なに私を盾にしてるんですか!!」
「凛ちゃん……ごめん!私の為に散って!!」
ガシッ!!
「イヤーーー!!」
部屋に、凛の悲痛な叫びが響き渡る。
由美は凛の後ろで、ガタガタと震えながら「凛ちゃん、ごめんね!」と、何度も呟いていた。
その頃、怪しい人物が海外家に忍び寄っていた。
「あら〜、何か楽しそうね〜………私を除け者にするなんて〜お仕置き必要みたいね〜!」
その女性は、ニコニコしながら海外家へゆっくり向っていた。
ピキーン!!
「!?」
突然、陽子が玄関の方を振り向く。
「突然、どうしたの?お母さん!」
凛は氷の入った袋で、顳顬を冷やしながら母親の方を見る。
「いや、何か悍ましい気配がしたの!」
「それって、まさか零さんのお兄さん?」
「まさか!?」
由美と凛は、顔を強張らせる。
「ううん……違う!そんなんより、もっと恐ろしい………」
陽子が青ざめた顔で言う。
「れ、零さんのお兄さんより、恐ろしい存在って………」
「近くまで来てるわよ!貴女達!!」
陽子が二人に言うと、凛と由美は身構える。
凛と由美は、陽子の言うとおり、確かに強い気配を感じる。
二人は、その正体が何者なのか、分かると深く絶望した。
「そ、そんな………」
由美が震えながら言う。
「あ、あ、あ………」
凛の頭に、遥か昔に封印した、幼き頃の忌まわしき記憶が蘇ってきた。
ギイィーーーーー!
部屋の扉がゆっくりと開く。
由美と凛は震えながら、ゆっくりと部屋に入って来た人物を見る。
陽子は深く溜息を吐いた。
「やっぱり、貴女だったのね……」
「出来れば……会いたく無かったです……」
「お、お母さん……」
ニッコリ笑顔で、美沙子が黒いオーラを放ちながら言った。
「あら〜楽しそうね〜!何で、私だけ仲間はずれなのかしら〜?」
「そ、そんな事は無いよ、お母さん……」
「そうかしら〜?あら〜その子はひょっとして……凛ちゃん?」
美沙子が、凛に気付くと凛はビクッと反応した。
「お久しぶりです……美沙子さん……」
「7年ぶりね〜!どうして此処にいるの〜?まあ、そんな事は置いといて〜会いたかったわ〜!!」
「!?」
美沙子が凛を抱きしめよと、凄い速さで凛に近付くが、凛と美沙子の間に陽子が割り込んだ。
「させないわよ!美沙子!!」
「ケチ〜!ちょっとぐらい良いじゃない〜!」
美沙子が舌打ちをすると、陽子が美沙子を睨めつける。
「貴女が、小さい凛を無理やり着せ替え人形みたいするから、この子は美沙子アレルギーになってしまったじゃない!!」
「そうだったかしら〜?昔の事は、よく覚えてないわ〜」
「惚けてもダメよ!凛には、指一本触れさせないわ!」
「怖いわね〜」
「五月蝿い!美沙子!」
「そんなに〜怒らないでよね〜!」
「で、今日は何しに来たのよ?」
「忘れていたわ〜今日来た理由わね〜明日の事は相談に来たのよ〜」
「「「あっ!?」」」
美沙子の言葉で、三人は思い出した。
「あら〜ひょっとして、明日の事、忘れてたのかな〜?」
三人は同時に頷いた。
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