表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/108

再会(後編)

予定より少し遅れしまいました。

陽子は旦那(海外 京介)との話で夢中だった。


「ねえ、京ちゃん!今日ね、とっても嬉しい出来事があったのよ!何だと思う?」


『うーん……僕と話しが、出来た事!』


「それもあるけど、もっと嬉しい事よ!」


『何だろね……あっ!寛子に彼氏が出来たとか?』


「それもあるけど、違いま〜す!」


『!?……ちょっとまて…ひ、寛子に彼氏が出来たのか?そいつは、何処の何奴だ!!』


「ちょっと、落ちつてよ!京ちゃん!」


『あ、ああ……すまない……』


「本当に親バカよね、京ちゃんは!」


『し、しかしだな……一人娘に、変な虫がついたら大変だからな!!』


「大丈夫よ!京ちゃんほどでは無いけど、凄くいい人よ!」


『よ、陽ちゃんが、そう言うなら信じよう………しかし、機会があったら、会ってみたいな………』


「ふふふ…また今度ね!話を戻すけど、京ちゃんと話したい人が居るのよ!代わっても良いかな?」


『僕と話したい?一体、誰なのさ!』


「それは、代わってからのお楽しみ!」


『うーん……誰だか分からんが……分かった!代わってくれ!』


京介が承諾すると、陽子は隣に居る凛に携帯を渡した。


「ち、ちょっと、お母さん!」


「大丈夫!お父さんを喜ばせてあげなさい!」


「ま、まだ、心の準備が出来てないのに………」


「大丈夫、大丈夫!」


陽子と凛が小声で話していると、携帯から京介の声が聞こえる。


『おーい!陽ちゃんと、馴れ馴れしく話してる者に告ぐ!誰だか知らんが、事の次第では死んでもらうぞ!』


「「「…………」」」


物騒な事を言っている京介に、三人は苦笑いだった。





凛は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせると、京介に話し掛けた。


「えっと、お久しぶりです……私が誰だか分かりましか?」


『ん?………女の声?……お久しぶり?……僕は君と面識があるのかな?』


「はい、あります!」


『面識があるのか………誰だろ?』


「そうですよね……分かりませんよね……」


やはり、声だけで自分の事が分かる筈もないと思っていたのだが、ひょっとしたら、母親みたいに娘だと気付いてくれるのではないかと、父親に僅かな期待をする凛だった。


『……………』


(やっぱり、分かる訳ないよね………)


凛の期待は見事に外れたと思った。


しかし、京介が次の瞬間、何かに気付いたのかのように話だした。


『ちょっと待て………その声……その口調………ひょっとして君は……しかし、そんな事はあり得ない……』


京介は、自分がいま話している相手が、7年前に失ってしまった娘に思えて仕方なかった。


凛は期待を込めて、もう一度、訪ねる。


「私が分かりますか?」


『そ、そんな……やっぱり…君は……………凛なのか?』


「そうだよ!お父さん!!」


父親は、自分の事を分かってくれた。


凛は嬉しくて、涙が出てくる。


(気付いてくれた……7年も会ってないのに……私……お父さんとお母さんの子供に生まれてきて、本当に良かった………)


『そうか………理由は分からないが、帰って来てくれたんだな…凛』


「うん!ただいま、お父さん」


『おかえり!これからは、ずっと一緒にいれるのか?』


父親の言葉に、凛の顔が曇る。


「それは…無理だと思う……今は訳あって、お兄ちゃんの身体を借りているけど、私の存在は、近い内に消えてしまうの………」


『…………そうか』


凛の言葉に、陽子がショックを受けた。


「そんな……嘘でしょ……」


ショックを受けている母親に、凛は顔を振る。


「本当よ………お兄ちゃんの中には、ずっとは居れないの……私の魂が、お兄ちゃんの中に居られるのは、多分……三ヶ月が限界だと思うの……」


「さ、三ヶ月!?」


「うん…黙っていて、ごめんね…お母さん……」


「そ、そんな!!」


陽子は、ショックのあまり、その場に座り込んでしまった。


直ぐに凛が駆け寄る。


「お母さん…私ね、後悔はしてないよ!」


「でも……」


「だって、お母さん達に、もう一度会えたし、それに、後三ヶ月も一緒に過ごせるんだよ!こんなに、嬉しことないよ!」


凛は嬉しそうに笑った。


「そうね……なら、沢山の思い出を作らないとね!」


「そうだよ!沢山、作ろう!」


陽子は、本当は胸が張り裂けそうなほど辛かったが、凛にそんな姿を見せまいと、無理やり笑顔を作った。


そんな中、携帯から声が聞こえる。


『おーい!おーい!』


「あっ!お父さんの事を忘れてた!!」


慌てて、返事をする。


「お父さん、ごめんね!」


『いや、いいよ!それより、さっきの話しは本当はなのかい?』


「う、うん………」


『そうか………一つ質問してもいいかい?』


「なに?」


『凛が、いま使用している身体は、本当に篤の身体なのかい?』


「そうだよ!どうして?」


『いや……何でもない』


「ん?」


『そうか………だから、駄目だったのか………』


京介が何やら、独り言を言っている。


「お父さん?」


『あっ!すまん、すまん!ちょっと、凛とお母さんにお願いがあるんだが、聞いてもらえるかな?』


「なに?」


『三ヶ月以内に、お父さんの職場に来て欲しいんだ!』


「お、お父さんの職場に?」


『ああ、見せたいものがあるんだ!』


「見せたいもの?」


『そうだ!来れば分かるよ!』






この時、父親の見せたいものが、自分に深く関わるものだと知る由も無かった。

いつも読んで下さり有難うございます。


感想・意見・誤字脱字報告もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ