再会(後編)
予定より少し遅れしまいました。
陽子は旦那(海外 京介)との話で夢中だった。
「ねえ、京ちゃん!今日ね、とっても嬉しい出来事があったのよ!何だと思う?」
『うーん……僕と話しが、出来た事!』
「それもあるけど、もっと嬉しい事よ!」
『何だろね……あっ!寛子に彼氏が出来たとか?』
「それもあるけど、違いま〜す!」
『!?……ちょっとまて…ひ、寛子に彼氏が出来たのか?そいつは、何処の何奴だ!!』
「ちょっと、落ちつてよ!京ちゃん!」
『あ、ああ……すまない……』
「本当に親バカよね、京ちゃんは!」
『し、しかしだな……一人娘に、変な虫がついたら大変だからな!!』
「大丈夫よ!京ちゃんほどでは無いけど、凄くいい人よ!」
『よ、陽ちゃんが、そう言うなら信じよう………しかし、機会があったら、会ってみたいな………』
「ふふふ…また今度ね!話を戻すけど、京ちゃんと話したい人が居るのよ!代わっても良いかな?」
『僕と話したい?一体、誰なのさ!』
「それは、代わってからのお楽しみ!」
『うーん……誰だか分からんが……分かった!代わってくれ!』
京介が承諾すると、陽子は隣に居る凛に携帯を渡した。
「ち、ちょっと、お母さん!」
「大丈夫!お父さんを喜ばせてあげなさい!」
「ま、まだ、心の準備が出来てないのに………」
「大丈夫、大丈夫!」
陽子と凛が小声で話していると、携帯から京介の声が聞こえる。
『おーい!陽ちゃんと、馴れ馴れしく話してる者に告ぐ!誰だか知らんが、事の次第では死んでもらうぞ!』
「「「…………」」」
物騒な事を言っている京介に、三人は苦笑いだった。
凛は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせると、京介に話し掛けた。
「えっと、お久しぶりです……私が誰だか分かりましか?」
『ん?………女の声?……お久しぶり?……僕は君と面識があるのかな?』
「はい、あります!」
『面識があるのか………誰だろ?』
「そうですよね……分かりませんよね……」
やはり、声だけで自分の事が分かる筈もないと思っていたのだが、ひょっとしたら、母親みたいに娘だと気付いてくれるのではないかと、父親に僅かな期待をする凛だった。
『……………』
(やっぱり、分かる訳ないよね………)
凛の期待は見事に外れたと思った。
しかし、京介が次の瞬間、何かに気付いたのかのように話だした。
『ちょっと待て………その声……その口調………ひょっとして君は……しかし、そんな事はあり得ない……』
京介は、自分がいま話している相手が、7年前に失ってしまった娘に思えて仕方なかった。
凛は期待を込めて、もう一度、訪ねる。
「私が分かりますか?」
『そ、そんな……やっぱり…君は……………凛なのか?』
「そうだよ!お父さん!!」
父親は、自分の事を分かってくれた。
凛は嬉しくて、涙が出てくる。
(気付いてくれた……7年も会ってないのに……私……お父さんとお母さんの子供に生まれてきて、本当に良かった………)
『そうか………理由は分からないが、帰って来てくれたんだな…凛』
「うん!ただいま、お父さん」
『おかえり!これからは、ずっと一緒にいれるのか?』
父親の言葉に、凛の顔が曇る。
「それは…無理だと思う……今は訳あって、お兄ちゃんの身体を借りているけど、私の存在は、近い内に消えてしまうの………」
『…………そうか』
凛の言葉に、陽子がショックを受けた。
「そんな……嘘でしょ……」
ショックを受けている母親に、凛は顔を振る。
「本当よ………お兄ちゃんの中には、ずっとは居れないの……私の魂が、お兄ちゃんの中に居られるのは、多分……三ヶ月が限界だと思うの……」
「さ、三ヶ月!?」
「うん…黙っていて、ごめんね…お母さん……」
「そ、そんな!!」
陽子は、ショックのあまり、その場に座り込んでしまった。
直ぐに凛が駆け寄る。
「お母さん…私ね、後悔はしてないよ!」
「でも……」
「だって、お母さん達に、もう一度会えたし、それに、後三ヶ月も一緒に過ごせるんだよ!こんなに、嬉しことないよ!」
凛は嬉しそうに笑った。
「そうね……なら、沢山の思い出を作らないとね!」
「そうだよ!沢山、作ろう!」
陽子は、本当は胸が張り裂けそうなほど辛かったが、凛にそんな姿を見せまいと、無理やり笑顔を作った。
そんな中、携帯から声が聞こえる。
『おーい!おーい!』
「あっ!お父さんの事を忘れてた!!」
慌てて、返事をする。
「お父さん、ごめんね!」
『いや、いいよ!それより、さっきの話しは本当はなのかい?』
「う、うん………」
『そうか………一つ質問してもいいかい?』
「なに?」
『凛が、いま使用している身体は、本当に篤の身体なのかい?』
「そうだよ!どうして?」
『いや……何でもない』
「ん?」
『そうか………だから、駄目だったのか………』
京介が何やら、独り言を言っている。
「お父さん?」
『あっ!すまん、すまん!ちょっと、凛とお母さんにお願いがあるんだが、聞いてもらえるかな?』
「なに?」
『三ヶ月以内に、お父さんの職場に来て欲しいんだ!』
「お、お父さんの職場に?」
『ああ、見せたいものがあるんだ!』
「見せたいもの?」
『そうだ!来れば分かるよ!』
この時、父親の見せたいものが、自分に深く関わるものだと知る由も無かった。
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