17:新生、高円寺高校
17:新生、高円寺高校
ベンチにドカッとこれまでのエース二人が座る。
疲れてはいないが肩の荷が下りて安心した二人は後半が始まった試合の様子を見る。
試合には二人の影に隠れて実力を隠していた新たなエース、部長がチームの指揮を執る。
二人の代わりに投入した二年生も、ベンチに置いておくにはもったいない実力を持ち、試合に出ていた他のメンバーも個々が部長のようなオンリーワンの才能を持っているわけじゃないが、選りすぐりのメンバーだ。
面と向かって言うのもメールや手紙で伝えるのも恥ずかしいけど、とても頼りになる仲間たちと思っている。
部長の叫びにチームの全員が答える。
「八重と佳澄の穴は全員で埋めるわよ! ついでに試合の方もそう易々と負けないわ!」
「「おぉおおお!」」
しかし勢いがそのまま試合の結果につながるのは実力が拮抗している相手に対してのみだ。
残念ながら二人のエースから新エースに切り替わった新生、高円寺高校では敵うはずもない。
せめてもう一人アクセントになる選手がいれば、話は違ってくるかもしれない。
「本当に頼りになるなぁ、部長は」
「でも、もう一手足りないから点差が縮まらない」
口を揃えてそう言う二人は、一人の少女を見る。
「いけるか?」「いける?」
先輩たちのその声に一日だけ高円寺高校のユニフォームを着ている少女は力強く首を縦に振る。
「一緒にできる最初で最後の試合を負け試合にしないように…………お願いな!」
先輩のお願いを叶えるのは後輩の義務だ。
由那の中で何かが弾ける感じがした。
中学時代に自分を一人ぼっちした身の丈に合わない秘めたる力のリミッターがこのとき外れた。