16:友情の約束
16:友情の約束
我ながら残酷なことをしてしまったと思う。
昨日は年下の子にやる気を出してもらうために、彼女たちの秘密を感付かせるようなことを言っておいて、当日には二人に逆切れしてしまったのだから。
そもそも、どうして私が部長なのか一番納得がいっていないのは私なのだ。
部長なら八重か佳澄でしょ。
ふつう。
誰が見ても。
試合はまだ終わっていないけど、前半を終わって十点差。
短い休憩時間に当の二人を含めたレギュラー五人が集まって話すことになった。
辛そうな顔一つしないで八重が言う。
「やっぱ、ダメみたい。悔しいけど――」
「待って、せめて試合が終わってからにして! 今、話そうと思ったのは私の性だと思うけど、チームの士気が落ちたら相手にも失礼だから」
「大丈夫、大丈夫」
佳澄がそういうのでしばらく聞くことにする。
何のことだか分からないチームメイトも静かに聞いている。
「怪我、とかじゃないんだ。私たちのは」
彼女は勝負をするときのような真剣な瞳で訴えかけてくる。
「でも身体のどこかが壊れちゃってるから、私と佳澄はもう試合にフル出場できない」
それは怪我だろ、って思ったのは一人だけじゃないはずだ。
「まあ、入院して一年くらいリハビリを積めば治るらしいんだけど、最後の一年間をみんなと一緒に過ごせないなら、そのあとバスケができても意味がないって結論になったんだ」
俯く八重が涙声になっている、のはすぐに分かった。
彼女たちがそうなったのも、いまこうしているのも誰の性かは明白なのだ。
でもそれをいったら二人は怒るだろうから、ツンケンしたことを言い返してしまう。
「なによそれ……そんなことを今言うの?」
「あぁ、今言うね。こんな機会は滅多にないし、これからはいっぱい迷惑をかけるだろうから」
八重は正面を見上げハッキリとこういった。
「これだけ鍛えたみんななら、私たちの代わりは十分できるから、今年の全国大会はまかせた! でも私たちも一クオータか二クオータくらい出る! 絶対に出る! そしてまた優勝する!」
瞳に涙を溜めて零れそうになっていたのに、八重の発言で素に戻ってしまう。
それにこれだけモチベーションを下げることを突然聞かされたのに、思いのほか士気は下がっていない気がする。
なぜだろう?
「入学したときいっただろ」
“私たちは全員で勝つバスケをしたい!
一人や二人が良いだけで、それに合わせて全員が動くんじゃなくて、
その人がダメでも二人目、三人目が代わりになれるチームなら
絶対にインハイで優勝できる!”
「ああ――」
自然とみんなが声を漏らしていた。
「だからあとはまかせた!」
ずっと一緒にいた雲の上の存在だと思っていた同級生は、
やっぱり雲の上の人で、
敵わないやと思う。
でも、託された三年越しの思いは叶えてあげなくちゃと全員の気持ちを盛り上げた。
まとめてかけたので、ここからしばらく一日置きで投稿します。