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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(開幕編)
92/305

15:証明して!

15:証明して!




 決勝戦の始まる少し前。


 八重と佳澄、部長の三人が密かに集まっていた。



「決勝は二人にも頭から出てもらうよ」


「やだ部長。監督みたい」


「当然、運動不足で手足がプルプルしてたところ」


「あはは……それともう一つ」


「何だ?」「なに?」


「いつまで誤魔化すつもりなの? もう教えてくれてもいいんじゃないの?」


「なんだよそれ」「意味が分からない」


「へえ、まだそんな態度をとるの。一年の頃からレギュラーだからって調子にのっているのかしら」


「「そんなことはない(わよ)」」


「あるじゃない! 同級生だった私たちは知ってる。佳澄が持ってきてくれた練習メニューを部活でやった後にも二人は残って練習をしていた! 試合になれば他の人の二倍以上の働きをして疲れていても頼れるエースとして頑張ってくれた! そんな二人が去年の冬からおかしいことはみんな気付いてる」


「そんなはずないじゃん。疲れもないし、怪我だってしてない」


「そう、私たちは健康よ」


「なら、決勝戦で証明して」



 部長は二人を指さして普段より厳しい声で言う。



「インカレで優勝経験のある人たちが相手なら、私たち高校生レベルの力じゃまず勝てない。でもあなたたちのバスケなら負けない。怪我とかしていないっていうなら、勝って証明して!」



 二人が返事をすると、試合に遅れないようにベンチに戻った。






 ***

 試合の主導権は大学生チームが握っていた。


 大学生チームはポイントガードの選手以外が百八十センチ以上の高身長であることをフルに使って攻めも守りも安定した立ち上がり。


 対する高円寺高校はオール三年生でこれまでの試合に出っぱなしだった由那をベンチに下げている。


 試合開始からフルスロットルの八重に相手チームの選手が話しかけてくる。



「インハイ前だっていうのにレギュラーで来てくれたことには正直感謝してるよ。でも勝負は勝負だから、人生の先輩として勝負の世界の厳しさを教えてあげるわ」


「そりゃどーも。こっちこそ私たちより強い相手がなかなかいなくて退屈していたところだったよ」


「例え、あなたたちが黄金世代と呼ばれていてもそんなものは関係ないわ」


「関係ないなら、それにふさわしい顔をしてくれない?」


「どういう意味よ」


「そのままの意味だって」



 ゴール前でボールを受け取った八重にもう一人マークがつくが、それに構わずダンクに行く。


 これまでの試合なら大人を相手にしても、それを吹き飛ばすような力強いダンクを決めている。


 しかしこれまでの試合を研究していた相手は、正面からだけではなく挟み込むように後ろからも飛びかかってそのシュートを止めに来る。



「身長が同じくらいあれば、防げないシュートなんてないのよ!」



 後ろから伸ばされた手にボールをはじき出され、それをもう一人のエース佳澄が運よく捕球すると、これも素早いチエックが入る。


 パスコースも見事に塞がれ、たった二試合で徹底的に研究してきた相手に敬意を表し、佳澄は独特のステップを踏む。


 佳澄の武器は相手の意表を突くアウトレンジからのシュート。


 それを可能にするのは、もしかしたらドリブルで来るかもしれないと思わせることだ。



「引っかからないわよ。ドリブルで来るケースは二割もないのだから」


「そう。よく知ってるのね。でも!」



 八重と佳澄が攻撃参加して得点できなかったことは今までなかった。


 その考えから絶対に落とせないと思い、また感覚に頼ってドリブル突破を試みる。


 ゴール下までいったらすぐにシュートを打とうと思っていると、手の中からボールが失われていた。



「速攻!」


「戻って!」



 両チームのキャプテンが叫んで、全員が反対側のゴールへ向かって走り出す。


 高校生チームもマンマークで守備をするが、あと一歩の所で抜かれて速攻を許してしまう。


 このようにあと一歩の攻防で勝ちきれないまま、試合は前半の十分を迎えようとしていた。



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