04:由那の過去
04:由那の過去
男子とのミニゲームに由那、滴、愛数のメンバーで勝利した女子バスケ部は、思っていたよりも多くの時間を練習に使えていた。
三人でフットワーク・パス・シュートなどの基礎練習をした後は男子バスケ部と一緒にミニゲームをする。
それがいつもの練習になりつつあった。
あの後、佐須揚羽を見つけられなかった滴と由那はパス練習をしながら反省を呟いていた。
「あーもう、なんか腹立つ。どれだけすばしっこいのよ」
「でも三咲先輩が話だけしといてくれるっていうから」
「そういえば、由那からお話しがあるって聞いてたけど?」
愛数が考えなしに思い出したことを聞いてくるが、由那もちょうどいい機会だと思った。
「あのね。私、明日から日曜日まで東京に行ってくる。平日はお婆ちゃんの一周忌で、土日は中学のときお世話になった人たちと会う約束があって」
「由那の中学って言うと、確かセンダガヤ?」
「そういえば、由那の中学がどこかの強豪って勝手に思っていたけど、センダガヤって…………千駄ヶ谷!?」
「うん? 私は千駄ヶ谷中学出身って言わなかったっけ?」
「愛数は聞いてるよ~」
「もしかして私だけ知らなかったの? 聞かなかった私が悪いんだけど。素直には納得できないわね」
「それでね。私がバスケを辞めたと思ってガッカリさせてしまった先輩たちに謝って、ちゃんと元気だって見せてくる。それがお世話になった人たちへの恩返しだと思うから」
「そう、別にいいんじゃない。大会の登録は来週の始めまでだし、今週末は特に試合もいれてないし」
「試合の予定なんて永遠に入っていないという現実」
「――愛数は黙っていようね。任せておいて、由那の居場所は私が守っておくから、安心していってきなさい」
「うん。ありがと」
***
後輩たちの楽しそうな様子を体育館の二階から見ていた。
一度すれ違っただけだが、以前戦ったことのある日高が言ってた少女は面白いと思った。
無意識にあの動きができるなら、プレーもそれに伴って凄いはず。
現に目下に見える男子とのミニゲームはなかなか興味深かった。
そこへ加わってプレーしようとは思わなかったが、見ているだけで心躍ることなんてほとんどなかった。
「あの子、ちょっといい感じだよ」
「あれが今の竹春のエース、というわけね」
「なんだい。やきもちかい?」
「さあね。あんたも落ち着かないなら、あそこに混ざってくればいいじゃない」
「それはできない相談だね。できれば僕はヒールがいい。飛び切りカッコいい感じのね」
「意味が分からないわ」
「帰国子女だからね。日本語は難しいよ」
揚羽の隣に立つ佐前燕は、現エースの由那を捻り潰したくて頬を高揚させていた。
次の投稿は明日、日曜日の予定です