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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(開幕編)
78/305

01:海の向こうから

序章になります。


 佐須姉妹は、春休みを利用してスペインへの家族旅行へ来ていた。


 日本では見られないような景色や街並みを見ているだけで心癒される日々が続くが、三日も経つとどこか物足りなく感じていた。


 気分を変えて身体を動かしに公園へ行くと、地元の十代後半くらいの青年達が談笑している。


 話の内容が分からなくても興味本位で聞き耳を立てていた姉妹は、青年達に気があると勘違いされて声を掛けられてしまった。


 まだ十五、六歳の日本人を面白がって身長百八十以上が数人で取り囲む。


 気の強い高一の姉が言い返そうとするが、五人の外国人男性に迫られて怯える妹を庇うので精一杯だった。


 そこへ青年達の壁を掻き分けて第三者が颯爽と介入した。



「へいへい、ボクの友達に乱暴はしないでくれよ♪」


「なにこいつ――――――――えっと、日本語?」



 少女は青年たちと姉妹の間に割り込んできて日本語に続けて流暢なスペイン語で会話をする。



『未成年に手を出すのは犯罪だよ?』


『別に、何かしようってわけじゃない。歓迎しているだけさ』



 彼女は黒色の短髪で顔立ちも日本人そのものだが、言いたいことをはっきり言えて、自信満々に話す姿は外国人らしさが垣間見られる。自分たちとは違うと思った。


 青年達との多少の誤解を解き、一段落したところで姉妹の方へ振り向く。


 彼女はニッと笑顔を作った。



「この人たちさ。別に悪い人じゃなさそうでね。コレを一緒にしないかって誘われちゃった。コレって分かる?」



 彼女は足元に転がるボールを持ち上げて指先でクルクル回すと、気が強そうな姉の方にボールを投げつけた。



「助けてもらったのはお礼をいう。けれどそれは断っておくわ」



 姉は受け取ったボールを地面に数回突いてからボールを投げ返す。


 すると彼女は眼を輝かせて姉に詰め寄る。



「でも得意でしょ。なんとなく分かるよ? あぁ相手が男で警戒しているのか。大丈夫、大丈夫、相手が男でもボクとキミならやれるさ」


「生意気ね。言っておくけど妹の方は全くできないわよ?」


「ボクは二人分って数えてくれて大丈夫だよ。これでもそこそこ有名なつもりだし」


「知らないけど……少しだけ、付き合ってあげる」



 姉妹とボクっ子の日本人チーム対スペインのマドリードハイスクールの男子と3on3のバスケットをすることになった。


 バスケにあまりいい思い出のない妹も仕方なく返事をして試合はすぐに開始される。



「朝御飯前のいい運動になれば十分だわ」



 姉がボールをキープし、妹がゴールの下を無意味に八の字でぐるぐる回る。


 無意味な動きの渦中に入り込んでマークを引きはがしたボクっ娘へ、ピンポイントなパスが綺麗に入った。


 彼女は自分の思い描いていた通りのパスが来たことに驚いて小さく声を上げる。



「おぉう、ナイスパス」


「あたりまえよ」



 初対面で息の合ったプレーをする二人に翻弄される男子チームは、ドリブルでゴール下へ乱暴に突撃してくる。


 それを後ろから姉がスティールし、ボールは妹の元へ回って、それをボクっ娘が受け取って一気にゴールへ沈めた。


 怒涛の攻撃で劣勢に立たされる男子も身長のミスマッチを突くパスで点を取り返し、パスの起点になっている姉に厳しいマークがつく。



「さすがにアメリカに次いで強豪国なだけあってストリートもレベルが高いわね」


「そうゆうキミも相当じゃない? 男子とやりあえる女子なんてそういないって」


「そういうあんたもやれてるじゃない!」



 隙を突くパスで男子に全く反応をさせず、ゴール下のボクっ娘にボールを送る。


 彼女は難しい角度でもそのボールを確実に決める。


 すべてのシュートをゴールに放り投げているという表現が合う彼女のプレーは、両チームの選手より数段上の実力を見せている。


 女子が男子に勝つというありえない試合模様はあっという間に時間が過ぎて行った。


 姉妹は彼女に貸してもらったタオルで顔を拭う。


 その間に男子チームの言っていることをボクっ娘が通訳してくれた。



「僕らと同じぐらいやれるなんて正直驚いた。こんな女の子がいるなんて、本当に驚いた、って言ってる」


「それは光栄ね。それと通訳もありがとう。彼らにもありがとうといってくれる? そろそろ戻らないと母と父に心配をかけてしまうわ」


「そのくらいサービスサービス。もうしばらくこっちにいるでしょ? また会おうよ」


「いいえ、今日の便で帰るわ」


「うーん、それは残念」


「気の合う友人ができたみたいで楽しかったわ」


「ふふ、もうボクらは親友でしょ。あっ、名前言ってなかったよね。ボクはマドリッドのスーパーガール、佐前ささきつばめっていうんだけど」


「ええ、そうね。私はバスケに革命を起こす、佐須さす揚羽あげはっていえばいいのかしら」



 出会いから別れまでほんの短い時間だったが、意志の通じ合うものを感じた二人は仲良くなり、その後もメールや電話で連絡を取り合う関係が続く。


 そんな二人が再会したのはそれから数ヶ月過ぎたある日の事だった。


新キャラの『佐須さす揚羽あげは』と『佐前ささきつばめ


通称、揚羽様になります。次の投稿は予定通り水曜日から本編スタートです!

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