02:渡り鳥ふぁんたじー1
風見鶏一姫には尊敬する少女がいた。
一姫の両親は三年くらいで転勤することが多く、色々な国を飛び回って生活している。
そんな彼女にとって日本にいた三年間というのは、思い出深いものだったという。
一姫が小学生高学年の頃に、よく遊ぶ少女が一人いた。
その子の名前は良く覚えていないが、優しさとカッコ良さを兼ね備えた名前だった気がする。
その子は自分のことを良くこう呼んでいた。
「私は魔法が使えるスーパーな小学生よ」
成長途中の胸の前で腕を組む少女はどこか誇らしげだ。
誰しも小さい頃は、アニメを見てスーパーとかギガとか付けておけば根拠のない自信を得たものだ。
家にテレビのない一姫はわからない言葉を聞き返した。
「ねえ、魔法とかスーパーとかってなぁに?」
聞き返されると思っていない少女は困るが、表情を崩さず自信たっぷりに続ける。
「この世すべてを統べるものにそのようなことは些細なことよ」
難しい言葉が並びだすと幼い頃の一姫は黙ってしまう。
少女は自分の魔法に名前を付けたらしく一姫に自慢をする。
「一姫。私の魔法は“幸福の魔法”っていうんだよ。それでもう一つ考えたんだけど、この完璧な私を目指す一姫が使えるのは“憧れの魔法”しかないね! これ間違いないよ!」
“憧れの魔法”というのはどうしてか一姫の心に強く残った。
しかしそれがどのようなものなのか一姫の頭には入ってこない。
また別の日に二人は一緒にいた。
「この間の続きよ!」
「なにをするの?」
「特に何もしないけどね!」
この少女が一生で一度しか使えない魔法を使うのはこのしばらく後のことになる。