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10分間のエース  作者: 橘西名
高校生編(竹春高校)
56/305

36:少女の気付いた異変

 由那の決意は二人だけの秘密にして亜佐美はみんなを送り出した。


 ここまでの試合を見れば滴がこの学校のエース。その次に三咲、栄子が目立った活躍をしているよう見せている。


 由那もシュートを打って点は取るが、主にパスの中継役として影を潜めていた。


 相手が由那に対して何もしてこないという事は、ここまでは上手くいっている。


 その成果が花を咲かせば、凄いものをここにいる人たちは見ることができるだろう。



「滴、適当にパスをお願い」


「え? あ、うん」



 滴は何かに気付きかけるが、由那と亜佐美が立てた作戦を知らないためそれがどういうことなのか分からない。


 由那は上がりきらずに下がり気味にボールを受け取ると、松岡と1on1になる。



「今度はあんたが来るの? 長岡先輩が来たからには、かっこ悪いところはみせられないってね」


「悪いけど――」



 由那は一呼吸で目の前の相手を簡単に抜き、シュートコースが開けたところでシュート体勢に入った。



「まず点差を十点まで縮めさせてもらうよ」



 追いつける位置にいた松岡が飛び掛ってくるのを見て由那はジャンプシュートを放つと、松岡の腕が由那の腕を叩き、シュートが入ってなお審判の笛がなった。


 ファールをもらいフリースローを決める。


 お手本のような三点プレーが見事に決まった。



「これで三点」


「――生意気な奴。そんな偶然のマグレは次で止める」



 嫌な形で得点を許した赤坂高校は、攻撃に移る際にもたつき、その隙を由那が見逃さなかった。



「ボール、もらいますね」



 赤坂高校ボールで試合が再開されると同時に、パスコースに突然現れた由那がボールをカットしてそのままゴールを奪う。


 その姿は数年前の全国大会の再現をしていると思ったのは試合を見たことのある亜佐美だけではないはずだ。



「なんかいまのプレーは見覚えがあるような……」



 長岡はあごに手を当てて考え込むが、外見が中学一年生の頃と似ても似つかない由那と当時の一年生エースの姿を結びつけることはできなかった。



「なん、なんだよこいつ」



 混乱する松岡に、入ってきたばかりの先輩が声をかけるが、その先輩もワンプレーで由那に抜かれてしまう。


 いまコート上に実力が段違いの選手がいる。


 それに気付いていないのか、それとも受け入れられないのかわからないが、難攻不落の強豪校に確かな一撃を竹春のエースは与えた。


 得点のほぼ全てを由那が決めているため、竹春高校側は守備固めにもなり、混乱に乗じてターンオーバーする回数が劇的に増えたことで点差は縮まっていった。


 そして五分ほど経ったところで愛数が気付いた。



「ねえ、由那。さっきから真っ赤な顔してるよ」



 顔色もそうだが、由那の走り方も少しおかしかった。


 怪我をしているわけではないのに片足をかばうようにしている。


 そして由那の走り方がおかしくなってからすぐのプレーで一番恐れていた自体が起こってしまった。


 由那がスリーポイントシュートを決めて、守備につこうと反転したとき足をもつれさせ倒れてしまった。


 すぐに立ち上がらない由那にそばにいた三咲が起こしに行くが、どうもおかしい。


 コートには顔を真っ赤にして動かなくなった由那がいた。


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