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10分間のエース  作者: 橘西名
高校生編(竹春高校)
51/305

31:センターの仕事

 ホーム戦無敗の記録を持つ赤坂高校と渡り合うには、得点を重ねていくだけでは半分も足りていない。


 そもそも負けていないチームというのは、攻撃以上に守備がしっかりしているところが多い。


 確かに竹春高校の攻めのパターンは元千駄ヶ谷中エースの由那と高校最速の栄子に加え、ポジションに拘らない滴の攻撃的なポイントガードで無限大の可能性を秘めている。


 しかし守備の面では絶対的なパターンというものが元々ないもので、組織的な守備をするのが最も堅実なものだ。


 だがあるポジションを制すれば攻守でアドバンテージを得ることができ、守りのパターンを作り出せるものがある。


 それがセンターというポジションだ。



 山田美咲は、そういった期待があってバスケ部に勧誘された



 三咲が所属する柔道部は男子と女子があるが、彼女は主に男子の方で練習をしていた。


 それは彼女の体格が男子を相手にしても部長以外には勝ててしまうほど優れていて、それにくわえて運動神経の良さや反応速度の速さがあったからだ。


 彼女が小さい頃から続けている唯一の競技と言うこともあり、ときには熱の入った言葉で言い争い熱血がすぎることもあるが、そのほとんどは好きな競技に全力で取り組む気持ちの現われだった。


 それが空回りし、周りに勘違いされてその場所にいられなくなったのが、ちょうど由那たちが勧誘をしていたときだ。



 当時の彼女は自分が一番であることが何より重要で、ここらへんで一番強い柔道部の部長に何度も挑戦状を送りつけたが全て却下されて我慢の限界のところへ由那と夏樹が勧誘にいった。


 その結果、強引に連れて行ったことで夏樹は犠牲になり、由那と三咲の勝負があった。


 三咲からすれば同じ女子で自分より凄い相手に始めて会ったことは驚きで、柔道部に拘る必要がなくなった三咲はバスケ部に加わった。


 それから十有二月学園にいって練習するようになってからは、亜佐美の思惑通り去年の全国中学生大会MVPの西條との特訓でチームの柱になれるセンターへと急成長してもらった。



 バスケは西條の方が先輩だが、学年が上の三咲に対してどう接すればいいのか悩んでいると、三咲が気にするなといってきた。



「それじゃあ、三咲さん。まずセンターはポジション取りが重要です。三咲さんくらいの体格とパワーがあれば、それだけでもだいぶ違うと思います」


「分かった。それで私は何をすればいい?」


「それは私と競り合って覚えてください。説明は苦手です」



 実践で感覚を掴ませるのは危険な手だが、生憎、天才肌の西條秋葉も山田美咲もそういうやり方が性に合っているのは十数年間も生きている間によく分かっていた。


 短期間で覚えなければならない事は山のようにあるから、少しでも多くのことを身近にいるライバルを相手にすればその分吸収も早くなるというものだ。


 手の空いている子手伝ってもらい、ゴール前にふわりとしたボールをあげてもらう。


 その落下地点を予測して的確なジャンプを三咲はするが、ボールは西條の手の中に納まってしまう。



「まず一本目は私の勝ちです。どんどんいきましょう」



 二本目は低くて速いパスがジャンプをしなくても取れる場所を通るが、したから抉るようにそのボールも西條に取られてしまう。


 三咲から見て西條がとるポジションはゴールを中心にして少しはなれたところ。


 そして自分より前に必ずいるようだ。


 それならばと思い、ボールの落下地点からは外れるが西條が取るポジションより少し前にいきボールに飛びつくと、ボールが指に掠っただけで捕球し損ねてしまう。



「なかなかいい判断だと思いますけど、応えはもっと単純です」



 四本目は一本目と同じふわりとしたボール。


 ここまで頭で考えてボールを追ってきたが、今度は西條の位置を見てそこがベストと決め付けてポジションを奪い取りに掛かる。


 実はこれでも正解なのだが、MVPのプライドがある西條は、押される力を逆に利用する形で三咲を前のめりにさせてその身をくるりと回転させて巧みにボールを取った。



「私の動きやポジションで考えると難しいのかも。きっと田崎さんの動きを真似るのがいいと思います」



 そういわれて三咲は由那との勝負を思い返すと何度もギリギリのところで彼女がプレーしていたのを思い出した。


 そのギリギリのプレーは、果たして本当にギリギリだったのかと三咲の中で疑問が生まれる。


 それは三咲からはギリギリで負けたと思い込んでいるだけで、由那からすれば余裕がある状態で勝負をしていたのかもしれないと思った。


 それにそのときと今は状況が良く似ている。



「――わかんない。でも言いたい事はわかる」


「ならもう少しヒントを」



 西條は人差し指を立ててそれを矢印に見立てていう。



「きっと三咲さんはボールを取ろうとして力が前のめりに掛かっているんです。だからその力を逆方向にすれば、そのままポジションも見えてくると思います」



 それをヒントに三咲は練習を再開した。


続けて土曜、日曜と投稿できそうです。

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