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10分間のエース  作者: 橘西名
高校生編(竹春高校)
49/305

29:スタイル

 滴からすれば今対戦している相手は、去年まではテレビの向こう側にいた人たち。


 夷守中という千駄ヶ谷中と合わせて二強と呼ばれる最強の中学にいた人と、自分が互角以上にやれていることが凄く嬉しい。


 中学時代の貯金と直前での特訓でここまでこれたのは色々な人の協力があったからだ。


 チームメイトでいえば同じバスケ経験者の由那と練習後に1on1で勝負をしたことが何度かある。


 戦績は滴の五戦全勝だったが、疲れているところでの勝負だったのでそれ

が単純にお互いの実力とはいえないだろう。


 由那がどこの中学出身なのか聞けずじまいだったが、必死に練習してきた自分と同じかそれ以上の強豪校に彼女はいたんじゃないかと勝手に思っていた。


 滴が女子バスケットボール部に入部してから驚きの連続なのだが、その中で一番驚かされたのは昨年の県代表として異質の強さを誇った学校との練習をこのチームがしていたことだ。


 入部当初から初心者とは思えないプレイを垣間見せる三咲や、基本的なプレイはできる愛数。


 それがどうやって覚えたものなのか、最初は由那が教えたものだと思っていたがそれが違った。


 高校女子バスケット界をよく知っている人がいる学校で練習をしていたからだ。


 その中でも天野箕五子という人が段違いで上手かった。


 中学時代は怪我に悩まされて活躍していなかったが、その実力は全国常連の学校のエースと遜色がないといわれるだけがあると散々思い知らされた。


 しかし直前練習では滴が大変お世話になった人でもある。


 本職がポイントガードの天野は、滴からそのいろはを教えて欲しいと頼まれて、実践で覚えてもらおうと3on3を提案した。


 十有二月学園の下級生チームに天野が入り、レギュラーメンバーに滴が入る。


 天野が全国区の選手であろうと、天野個人での得点力がほとんどないので戦力はほぼ互角のチーム編成になる。


 この二チームがどこで差が出るのかと言えば、試合をコントロールするポイントガードが重要な鍵を握っている。



 滴のチーム先攻で滴がボールをキープする。



「中学時代はチームのキャプテンを務め、練習メニューや試合のオーダーも自分で決めていたんだってね?」


「はい。私、誰かに言いましたっけ? いえ、まずは練習に集中します」


「いいよ、いいよ。こっちのメンバーはみんな初心者だから、そうそうボールは取られないよ。それよりも一つ聞いてもいい?」


「……はい」


「滴はポジションにこだわるタイプなのかな?」



 バスケでポジションというと、点取り屋のパワーフォワードやゴール下を制するセンター、試合をコントロールするポイントガードなどあるが、滴はそういったポジションに拘ろうとは思っていない。


 彼女の中学時代の立ち位置が、チームをまとめることと試合で点を取ることの両方をしていたこともあって、滴はスモールフォワードで自由に動き回り、状況次第で点取り屋と試合のコントロールもしていた。


 滴の表情から何かを読み取って天野は呟く。



「やっぱり似ているのかな。昔はそんな顔をしてたんだよなぁ」



 滴と天野が会話をしている間にレギュラーチームの一人がゴール前に詰めてきている。


 滴は目の前の天野にカットされないようにパスを出すと、正確なシュートでゴールを決めてくれる。



「そうそう。周りを見ることが出来る視野の広さは大事だよ」



 次は本職がどうやって味方を使うのか見る番だ。


 天野はボールを持つ前に周りを見る数秒で味方へパスを送り出した。


 それが決定機を必ずしも作り出すとは限らないが、試合のリズムを作るというポイントガードの役割は十分果たしている。


 しかしここから滴用のプレイで天野は敵の牙城を崩していく。


 それはポジションに拘らず、昔の天野とプレイスタイルが近い滴にならできるかもしれないバスケットだった。


次の投稿は水曜日になります。

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