21:五人でやるバスケ
竹春VS十有二月学園(天野&西條)
竹春高校の基本戦術は、得点力のある由那、滴、栄子の三人で点を取り、残りの三咲と愛数はそれぞれの仕事をするというのが考えているものになる。
由那と滴は経験者だけあってシュートまで行くドライブやシュート自体が中距離から打てるためどんなポジションでも得点に繋がるプレイができる。
栄子も特定条件化なら二人以上の得点力があるため、陸上部で鍛えた足を使えるパワーフォワードを任せようと思っている。
身長が百九十以上ある三咲にはセンターをやってもらい、オフェンスリバウンドとディフェンスリバウンド、さらに頭一つ抜けた高さで前線でのパス回しの起点にできれば相当な戦力になる。シュート精度も低いわけではないが、守備の面での活躍を期待している分できれば得点後はすぐに自陣に戻れるようにしておきたい。
愛数にはできればポイントガードをやってもらいたいが、パススピードが遅く、ドリブルをしながら周りを見ることもできないためパスの中継役が担当だ。
GWに入り、毎日のように十有二月学園で練習をさせてもらえることになった。
そこには亜佐美だけの力でなく、怪我から復帰した部長の天野箕五子の助力があった。
部員からは愛称のミイで呼ばれる気さくな部長は初対面の五人に挨拶をする。
「はじめまして。十有二月学園女子バスケットボール部、部長の天野箕五子です。二年生で山田さん以外とは一学年上になるけど、気軽にミイって呼んでね」
天野は同じ女子バスケットボール部の西條と比べるとだいぶサイズが小さく怪我明けのせいか動きもどこか鈍そうにみえた。
それでも一年生だけで十有二月学園を全国大会へ導いたのはまぎれもなくいま目の前にいる天野なのだ。
「は、始めましてっ。私が竹春高校女子バスケットボール部で部長をやらせてもらっている田崎由那です。いつも練習場所を貸してもらってありがとうございますっ」
「いいよ、いいよ、そんな緊張しなくても。アサミンの幼馴染なら、もう仲間みたいなものだし、こっちも人手不足でなかなか実践的な練習ができなかったからちょうど良かったし」
「いえいえ、そんなこと」
「――何をしているのよ、あんたらは」
そのままお見合いを始めそうな天野と由那に亜佐美は練習方針を相談する。
五人が集まった最初の合同練習。
これまでは各ポジションごとの練習をしていたが、せっかくなら練習試合を出来ればと言う話になった。
「由那、あんたんとこの新人は確かバスケ経験者なのよね。栄子ができるのは知っているから、試合をしたら面白いと思わない?」
由那はいきなりの試合は難しいと思った。
竹春での練習は本当に基礎的なことしかしていない。
ドリブルとシュートが形だけ出来ているが、実践となれば身体がこわばり、自信をなくしてしまう。
「自信なんて要らないわ。いま由那たちに必要なのは一に経験、二に経験なのよ。最低でも毎日と三試合分くらいはやらないと話にならないわ」
「私も調整を兼ねて出るからさ。やろう、やろう」
天野の後押しも合って竹春高校と十有二月学園の試合が始まる。
次話は今日中に出来ればと思っていますが、予定では来週の水曜日を予定しています。