03:練習!
千駄ヶ谷中のポイントガードとして活躍した上園だが、どのポジションでも活躍できるユーティリティプレーヤーとしても彼女は有名だ。
ミニゲームはすぐに再開され、Aチームに入った上園は、琴音の母親がいたゴール下へ入り、琴音からのパスを涼香が受ける。
まだボールをつく手元から視線を切るのが怖い涼香は、少しドリブルで進んだだけで止まり、パスを出すために顔をあげて仲間の位置を確認する。
するとある場所がぽっかりと空いた状態になっているのを見つける。
彼女本人は気づいていないことだが、そこには自分が年上だと言い張る小学生がゴール下にノーマークでいた。
涼香は迷わずそこへパスを出す。
「はい、待ってた! ここしかないと思ってた!」
「うるさっ」
上園がボールを持つと、罠にかかった小鳥を食らおうとBチームの両翼のうちディフェンスに定評のある純が上園の正面に現れた。
一言聞いただけでもわかるが、純は日常から人の邪魔をするのが得意で、相手の心を読んでいるかのようにオフェンスの嫌がる位置に必ず現れる。
「小学生やババアにだって手加減しない。ボールはもらう!」
「んー」
上園はボールをもらってからゴール方向を振り向けないまま純のマークを受けていた。
千駄ヶ谷でエースを務めていた上園からすればこの程度のマークを振り切るのは容易だが、思っているより身体がついてこないから強引な突破はしないで一度サイドにいる琴音にボールを渡す。
そこから純を振り切り、リターンされたボールを受け取って小ジャンプからゴールリングへ向けてボールを放つが、そのボールはリングを大きく外れてしまう。
「どんまい! 次は守備だよ」
リバウンドを捕球されてしまい攻守が入れ替わる。
守備になると上園がマークをするところで身長のミスマッチが必ず起きる。
高いだけでパスは通るし、リーチも短いため振り切るのも簡単だ。
パスの出し手であるポイントガードの初に琴音がマークして自由にさせないようにするが、ミスマッチをついたパスを出されてしまう。
初からゴール下の初母へ、そして純がすぐ近くへ走りこんだ。
上園がジャンプしないと届かない高さにボールを保持したまま、すぐ近くに詰めてきた純に落としてクイックを利かせたシュートが決まる。
これまでにないほど充実した連係に琴音は感心するが、残念なことにそこで時間切れだった。
貸し体育館の使用時間が残り五分で終わってしまう。
すぐに身支度を整えてそれぞれが帰路につく。
母親たちは先に帰っていき、琴音と涼香、純、初、上園が一緒に帰った。
帰り道の途中で上園に話をしてみると家がないような、よく分からない状態だったので今日のところは琴音の家に泊まることになってその日は解散した。