19:強敵の予感
五人が揃ったことを由那からのメールで知った亜佐美は、一先ず安心して、お祝いの返信もせずノートパソコンの電源を入れた。
パソコンには練習メニューや過去の対戦相手との映像資料があるが、一番大事なのは他校のマネージャー間でやり取りをする電子メールを確認することである。
どうすればマネージャーがより試合で選手と同じように戦っていけるかを、考えていった結果、横のつながりを持つことが絶対に必要なことだと誰かが言い始めて、全国上位の学校なら当然のように情報のやり取りをしている。
そして機密に当たる情報を取引道具に、思っている以上の情報が入ってくることがある。
ここ数週間に亜佐美が欲しかった情報というのは、由那たちの対戦相手がどこなのかと言うことだ。
練習試合をするのだから、少なくとも一週間前には相手の方へ連絡をしているはずだ。
また、ベスト四以上の高校なら練習試合のスケジュールも数ヶ月先まで埋まっているのが普通。
「なにか変なのよね。どうして生徒の頑張りようを見るためだけに、強豪校と試合をさせるのかが……」
たった一ヶ月あまりで勝つことが出来るほどこの県の上位校は甘い相手ではない。
頂点に君臨する十有二月学園はもちろん、県から全国へ出場できるもう一校も全国で勝ち進めるだけの力を持っている。
はっきりいってしまえば竹春高校がこの二校に勝てる見込みは一パーセントもない。
「少なくともうちと当たる事はないんだけど、きたとしても断っていたし。まさか別の県なんて――」
――それはありえないことなのだろうか、亜佐美は思った。
去年の竹春高校と十有二月学園は試合をしているのだが、そのとき調べたてみると校長が無類のバスケ好きでいろいろな学校とのツテがあるということを亜佐美はそこで思い出した。
「身近なところにしか聞いていなかったけど、全国版で検索をかけて見ようか。知り合いがいる学校には直接メールを送って。なるべく早く情報が欲しいところだわ」
それから三十分もかからずに全国の各高校のマネージャー仲間から返信があったが、こんな時期に遠征をする高校は見つからなかった。
「私の思い過ごしと言うのならいいのだけど。どうも腑に落ちないのよね。……どちらかといえば、ここで対戦校が見つかった方がほっとしたというか」
ピロリンという電子音で新着メールが届いていた。
それは知らない人のアドレスだったが、知り合いの知り合いから来るメールでよくあることなので特に注意することなくそのメールを開いた。
近年悪質なものが増えたウイルスを仕組まれたメールという線もあったが、件名に名前の知っている高校名とこのメールの差出人と思われる人の名前があったので亜佐美はそのメールが信用できると判断した。
「プレイングマネージャーの神様からメールが来るとは思わな………………はっ?」
亜佐美は今いる場所が学校のパソコン室だと言うことも忘れて声を上げて疑問を問いかけてしまった。
それくらい驚くべき内容がそのメールには書かれていたのだ。
「いやいやいや。これは……」
ありえないでしょ。
亜佐美はそう信じたかった。
しかしその希望は、数日後に由那が顧問からきかされた対戦校の名前を聞いて打ち砕かれることとなる。
少しシリアス気味? な展開をしていたので
次からはほのぼのとGW前のひと時を書いていく予定です。
投稿は二日後を予定しています。