表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10分間のエース  作者: 橘西名
中学生編(上園&松林中)
3/305

02:松林中


 九州の田舎にある松林中学女子バスケットボール部では、数人の子供に大人が混ざってバスケをしていた。


 なぜ大人がいるのかというと、人数合わせに自分達の母親たちを巻き込んでの3on3をしているからだ。



 Aチームのポイントガードである霧沢(きりさわ)琴音(ことね)は、ゴール下にいる自分の母親の霧沢鈴音を囮にして、サイドに展開していた七ツ(ななつえ)涼香(すずか)にパスを出した。



「霧沢さんのお母さんにあまり負担はかけられないからね」


「それはどうでもいいけど、ひとりで行けそうなら行って!」



 この中では唯一の初心者である涼香だが、運動能力は極めて高く、たった一日の練習で身につけたドリブルで一人をかわして易々とレイアップを決めた。



 対するBチームも(じゅん)(うい)の悪友コンビ、(うい)の母親と協力して得点を奪っていく。



 ――――と、ついじっくり見てしまったが、ここはどこなのだろうと、寝起きのようなふわふわした視界で上園(うえぞの)青空(せいら)は辺りを見回していた。



 上園は感覚を確かめるように右手を握りしめるが、ぷにぷにした感触がするだけで目の覚めるような発見はなかった。



 いや毎日鬼のような練習をしている自分の手が小学生のときみたいにぷにぷにしていた、というのはあまり嬉しくない発見だ。これはまた練習量を増やさなければならないと上園は内心思うのだった。



 それにしても深い眠りから目覚めた直後のようにまぶたが重たい。


 辛うじて開けた視界からは、見慣れた鈍い橙色とタップダンスのような軽快な音が聞こえていた。



 上園が体を起こして周囲をキョロキョロ見渡しているのに気付いて、琴音が近付いてくる。



「どうしてここに……というか、いつからいたの? もう完全下校の時間だよね」



 上園は中学生にしては身体の大きい琴音を見あげるように、目覚めたばかりで回転数の遅い頭をフルに使って考えてみる。



「……だれ?」



 そんな言葉しか出てこないが、それを聞いて琴音が考えるしぐさをしてから優しい口調で話してくれる。



「それじゃあ、まず自己紹介――私は琴音。あなたのお名前は?」


「上園よ。うえぞのせいら」



 毅然と答える上園に琴音は思いもよらぬ提案をする。



「いいね、暇なら一緒にバスケをやらない? ちょっと運動不足のオバサンがさっそくバテちゃってね。知らないお姉さん達がたくさんいるけど大丈夫かな?」


「……望むところ。それに見ての通り私のほうが年上ね」


「うん? まあいいか」



 どうしてそこで言葉が詰まるのか上園には分からなかったが、バスケと言われて黙っていられないという本能で松林中の練習に加わることにした。



 この時点では、まだ上園は自分の変化に気付いていなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ