59:再訪3
天応中キャプテンの牧とライン友達になっていた悠奈は、昨晩のうちに末莉のことを色々と聞いていた。
末莉はリバウンドやスクリーンプレイ等のフィジカルが強いタイプでボールハンドリングは並。
だからゴール下でボールを奪えても自分で決めきれる程のセンターではない。
だがそんなことはどうでもいい。
「末莉のバスケは見ていて気持ちがいいね」
「うーん。やっぱりウチに欲しいなぁ」
悠奈の隣にはパーカーを目深にかぶる部外者がいた。
バスケ初心者の悠奈が解説役に連れてきた”バスケに詳しい人”。
噂によると試合をしている二校に詳しいらしい。
「やっぱり末莉はすごいもんね。でも私の相棒は渡しませんよ」
「いやー、そっちもだけど、”八重たち”から聞いているもう一人も」
「もう一人?」
「ほら相手側の後ろでちょろちょろしている四番」
「それが気になるの?」
「名前は田崎だったかな。千駄ヶ谷中の正レギュラーで、八重たちの教え子」
「じゃあその子を倒せば、予選で優勝したも同義。リベンジにはもってこいの相手じゃない。ほら末莉、あの子を倒すのよ!」
「・・・・・・まぁ、まずは相手に本気を出させないとね・・・・・・」
ぼそぼそとつぶやくその女性は、知り合いのいない母校の試合を冷ややかな目で眺めていた。
だって悠奈をはじめ、末莉たち天応中が倒せばリベンジと思っている相手は、ただの正レギュラーではなくて、昨年の全国大会優勝時の一年生エース。
その選手が試合に関与せず一年生のフォローに回っていて、実質四人を相手に優位に進める天応中はどこまで食らいつけるのか憂いていた。