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10分間のエース  作者: 橘西名
インターバル(憧れの舞台編)
298/305

58:再訪2

 千駄ヶ谷中の攻めが単調なのは、一年生が連携の練習もせずいきなりPGを任せられたからだ。


 それに気づいた副部長が田崎を使って修正を図る。


 言い方は田崎らしさが出ていた。



「葵ちゃん。清花の勢いに合わせる必要はないよ?」


「おい」



 栗原が遠くから田崎を睨むが、田崎は無視を決める。


 昔は居残り練習をするくらいの仲だったので、今はこのくらいの距離感というだけ。



「ほら声が大きいだけ。パスは自分の出したいところに出していこう」


「・・・・・・はい」


「ほら、元気出していこう。良くわからない人とやるのは不安かもだけど」


「いえ、そんなことはないです。田崎先輩とバスケができるだけで昇天ものです。大興奮です」



 語尾に疑問を感じつつも田崎は、次の攻めの組み立てで新崎の横に付く。


 パスコースを指示するのでなく、仲間の特徴をアドバイスしていた。



「清花はイノシシみたいに猪突猛進だから、前を向けるようなパス。でも反対に寧々はボールを持ってから仕掛けたいから手元にパスをね」


「はい。栗原先輩と愛宕先輩にパスを出すときは気をつけます」



 相手チームにいる末莉が感じたように覚え初めの連携はぎこちない。


 十回やって一回しか成功しないのもざらだ。


 だが結局はその繰り返しでしか上達はないのだ。


 絶対王者の千駄ヶ谷中にとっては我慢の時間が続く。


 ベンチでハラハラどきどきの副部長は、指を咥えて見守るしかない。



 ***

 好調の天応中。末莉はPGの牧と二人だけにしか分からない合図を交わす。



「次は中央を切り開こう」


「いつものだね」



 予選でも早いパス回しで相手を崩す戦法をとっていた天応中だが、ドリブルで長い時間ボールをキープする。


 他の選手がゴール下に入るのを待ってからパスを出す。


 それは守る側からすると、密集した場所に安易にボールを出してもらったようなもの。


 だがこれも敵との間に割り込むように末莉が相手と味方との間で壁となることで、密集地帯でボールを受けた味方にゴール下までの進入路を作る。


 末莉の意表を突いたプレーに驚いたのか相手の対応は後手に回る。



「こんのぉおお!」


「遅いよ!」



 出遅れて飛びついてくる栗原は交わされ、せい、三木とつないで最後はレイアップを決める。


 このプレーの流れに見覚えのあった悠奈は末莉に声援を送り、末莉と牧はハイタッチを交わす。



「よし、狙い通り」


「やったね」



 プレーのどれをとっても彼女たちが積み重ねた練習の成果だ。


 しばらく離れていたチームでも末莉が中心になっているのは、最後の思い出作りにとチームが末莉の関われる回数を増やしているからだ。


 リバウンドが強力なセンターがコート上で違う存在感を出し始めて、劣勢の千駄ヶ谷中は悲鳴に似た叫びを上げていた。


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