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10分間のエース  作者: 橘西名
インターバル(憧れの舞台編)
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51:茉莉の苦悩 上

 一時帰還するように事務所から言われた茉莉は、中京高校と王華高校とが試合をした翌日に、約五時間を車移動して所属事務所まで戻ってきていた。


 茉莉は、疲労を隠し切れない運転士兼マネージャーに労いの言葉を伝え、車を降りる。


 すると事務所付近の駐車場に知り合い二人がスマホ片手に待っていた。



「久しぶり。ナイスタイミングだったかな?」


「この稀代のスーパーアイドルを待たせるなんて、随分と偉くなったものね」



 一人は、天応中学の同級生で同じバスケットボールの牧。


 もう一人は籠球小町で一緒だった一年先輩アイドルの早見悠奈。



「どうしてここにいるの? というか二人って知り合いだったの?」


「いや、たまたま一緒になっただけ。それでいつの間にかスマホの落ちものパズルゲームの対戦モードに嵌って――」


「ねぇ、次の対戦始めるわよ。茉莉が来ちゃったから、ラストゲームだし」


「私を待っていたのに、ゲームを再開するの?」


「これがしつこいのよ。早見さんが初め一勝して、その後は連敗が続いているからやりたいのは分かるけど」


「知ってる? こいつめちゃくちゃ強いのよ!」


「あぁ」


「あぁって何? この姿が滑稽とでもいいたいの!」


「いや、牧は落ちものパズルゲームに愛されし者だから、強くて当然だよ」



 何それ、と早見が叫ぶが、パズルゲーム愛されし者は最短で勝負をつけ、二人がここで待っていた本題へ戻る。


 牧は、茉莉から連絡をもらっていた。


 ただし、しばらく前に携帯の連絡で、大事な大会に出られなかったからと引退試合への招待を固辞していたのだ。


 どうしても茉莉に来てもらいたいから、こうして直接伝えに来ている。


 だって、絶対に試合を組めないはずの相手――強豪との試合が組めたのだ。



「茉莉は嫌がっているけど。引退試合の相手は、予選で私たちが負けた相手なの。そんな相手と茉莉を含めたベストメンバーで戦えるのは、これで最後だからチームを代表してお願いに来たよ」


「それだけの理由で来たの?」



 茉莉でなく、早見が返事をする。


 部外者からの率直な感想。


 同じ場所、時間を過ごし部活動に対する思いは分かる。


 それは、こうして面と向かって言われた茉莉も分かっているようだ。


「そんなの適当な理由で、当日引っ張っていっちゃえばいいでしょーよ」


「ありがと、帰ってきたんだからぜひ参加させてもらうよ。でも人攫いみたいなのは、コンプライアンス的にダメだと思うよ?」



 キアラをハイエースした人の発言とは思えない壮大なブーメランが炸裂しているが、この場だとマネージャーと茉莉しか知らないことだった。



「次は私の番だね」


「うん、一番謎なのは早見さんかな?」


「もう同じ所属事務所で、正式なコンビとなった私に他人行儀すぎるんじゃない?」



 茉莉の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。三つくらい。


 何故なら早見悠奈といえば、早見の両親が経営する早見プロダクション所属のアイドル。他にもトゥインクルスターズという双子アイドルユニット等、新人を主体に業界を席捲して、年商が数千万円~億単位で稼いでいて、茉莉の所属事務所の数百倍違う。



「冗談だよね?」


「私はカメラのないところで、冗談を言わないタイプ」


「あー、もしかしてかわいい子には旅をさせろ理論で、自分の娘を弱小事務所に送って、そこでトップアイドルを目指す的なアレですか?」



 茉莉が勘で本質を突くと、冷静に早見が続ける。



「それじゃこんな所だけど、新ユニットとしてよろしくね。ユーフォルビアの茉莉」



 こうして引退試合の予定、早見との新ユニットが駐車場で決まった。

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