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10分間のエース  作者: 橘西名
インターバル(憧れの舞台編)
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46:普通の女子高校生 2


 香川乃音が弄られている間に三人は体育館近くまで来ていた。


 部室代わりの空き教室に入り、手早く練習着に着替える。


 キアラを迎えに行った遅れを取り戻すように黙々とウォーミングアップを始め、今日の練習メニューである三人一組のミニゲームに飛び込みで参加する。


 ここのところ、中京高校の練習メニューは実戦形式が主体となっている。


 その理由は大きく二つある。


 一つは、旧体制のチームが三年生主体だったため、新体制のチームを新たに選出しなければならないチーム事情があり、もう一つは直近に大事な試合を控えているためだ。



「あ~あ、お姫様のせいで組み合わせ抽選会終わってんじゃん」


「そんなのはなくて、実際は、じゃんけんとか外周の着順だけどね」


「すまぬ」


「……謝罪の意思が感じられない」



 既にメンバー分けが終わっていたため、三人はそのままメンバーとなった。


 この三人が一緒になることは、諸々の事情で何度かあった。


 例えば、今日のようにキアラを連れてくることに時間がかかって遅れてしまうことや、キアラが教師から頼まれた用事を全く理解しないで行動した結果、迷子になっていて同じように遅れてしまうこと等々。


 そのせいもあってか、三人のチームワークはだいぶ仕上がっている。


 あの大会が終わってから2週間経過した今の中京高校で、しっくりくるメンバーの一つでもある。




 ***

 ミニゲームはコート半面を使ったもの。


 八点先取で勝ち抜けて、負けたチームが交代する。


 負けたチームもただチーム毎の交代をするわけでなく、負けたチーム間で入れ替えができるので、より強力なメンバーで再戦が可能となる。


 競争心と確かな実力が問われるルールの中で、最多連勝記録を持つのが彼女たち三人だ。



「キアラ、止めろぉ!」



 相手チームのシュートを助走なしでブロックできるキアラは、基本性能がとにかくずば抜けている。


 ある程度のピンチも一人で切り抜けられるのは、非常に強力だ。


 それができると信じていた乃音は、落ちてきたこぼれ球を拾い、ルールに従って一度センターラインまで戻る。



「真冬、ボールを直ぐ戻して!」


「はいよ」



 センターラインから再開し、返球されたボールで乃音が敵陣に切り込む。


 憧れの先輩を追いかけて入学した香川乃音は、生粋のドリブラーだ。



「新海先輩直伝のドリブル突破!」



 基本無口だった新海から直伝されたわけでなく、先輩の後姿を見て彼女は成長した。


 一年間以上じっくり観察して、レギュラーに匹敵するドリブルを身に着けつつある。


 ドリブルだけなら、今のチーム内でトップクラスだ。


 スピード重視の一直線なドリブルに誰も追いつけず、飛び込んだ先できれいなレイアップを決める。



「次は真冬が決めれば?」


「そうね。じゃあボールを取ったらちょうだい」



 次のオフェンス時、真冬がスリーポイントシュートを決めて点差を広げた。


 真冬は、インサイドでも、アウトサイドでも力を発揮できる希少なオールラウンダータイプ。


 開成高校にいる“いとこ”の影響かもしれないが、スリーの威力は絶大だ。



「それじゃ、最後はお前が決めとけ!」


「ウイ」


「乃音、ちょっとパスが雑じゃない?」



 スティールした乃音のパスは、通常より高めに放り投げられた。


 心配する真冬の声を袖に、それを受けるキアラにとっては些細な問題だ。


 彼女の全力のジャンプは高く、長い滞空時間がある。


 空中戦なら、部内どころか県内でも早々敵がいないだろう。


 そこから繰り出す両手ダンクシュートは、ブロックに入った相手チームの先輩の腕を吹き飛ばしながら、ゴールリングにボールをねじ込む。


 なんとも一年生らしからぬシュートだ。



「ウイ、良きボール」


「これで昨日と併せて十連勝~」


「そう考えると結構すごいわね」



 外から中への攻撃が得意な香川乃音。


 その正反対に位置する中から外への攻撃が得意な佐倉真冬。


 ゴール下で無類の力を発揮するキアラ・セラフィム。


 彼女たちが、現段階で中京のレギュラーに最も近く、これからの中京の基本戦術になるのかもしれない。



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