42:現在地1
――王華サイド。
理想的な放物線を描いてゴールの中心を射抜く中京のスリーポイントシュート――王華のエース今宮は、その驚異的なシュート精度に感心していたが、それを脅威と感じて動揺するような節は見られない。
ベンチにいたときとはまるで別人のように余裕のある表情へ変わっている。
「へぇ、やるね。これで何本連続?」
「そんな呑気な。えーと、他の中京の人のシュートを挟んで五本連続……だったかな」
「私は十ニ本っ」
「はいはい、一人で決めてくれるんで周りは休めて守備に集中できてますよ。そのおかげで、ロングシュート以外はほとんど止められるようになっていますよ」
今宮の隣を走る恵は、試合の流れが変わっていることを感じ取っていた。
中京のリズムは狂い始めていて、その修正が全くできていない。
ただ一人、絶好調のシューターが点差を致命的な状態にならないように粘っている。
「でも、あのシューターの人は苦しそう」
「きっと試合慣れしていないのよ」
「三年生なのに?」
「これだけの緊張感の中での経験――公式戦での試合経験がほとんどないのよ。体力的な劣化ではないから、自分では分からない。でも周りから見れば呼吸のリズムが徐々に乱れていることが分かる。それでもシュートは入るのだから、絶好調に違いないだろうけど」
「えっと、ベンチで座っているときはあんな感じで、この世の終わりにみたいな顔していた人がコートに戻った瞬間にこんなに分析できて、ちょっと怖いんですけど」
「恵、あとでゆっくり話しましょう」
「はいっ、今日は用事があるので、真っ直ぐに帰らせていただきます!」
ピシッと敬礼のようなポーズを取る恵の動きは素早かった。