09:勘違いの三人目?
由那と三咲の試合を見ていたのは大きく分けて四つの人間に分けられる。
一つは賑わいに誘われた野次馬。
一つはこの試合を仕組んだ幼馴染。
一つは部員候補としてその試合に何か思うところのある女子。
一つは突然変異種の如きその場の空気を読まない女子である。
「はにゃん。何をしていたんだろう?」
大神の隣で試合を観戦していたはずの滴はいつの間にか姿を消し、変わりにずいぶんと背の低い女子がそこにいた。
大神を目印に人混みの中から目的の人物を探して、由那たちの所へ連れて行こうとする秀人は、その異変に気付かずに二人に紹介した。
「俺はここにいる滴が三人目にいいと思うんだ」
その場にいる秀人以外がポカンとした顔をしている。
それもそのはずだ。その場に現れたのは、およそ高校生とは思えないような小柄な少女で由那のクラスメイトでもある女子だった。もちろん名前は『滴』などではない。
三咲からしても妙にチンチクリンな奴が現れたものだと思っている。
「はい、じゃあ私はバスケ部ということで大丈夫ですよ」
その声にようやく秀人が異変に気付いて、慌てて手を離すと少女はムスッとした。
「そんなに距離を置かれると正直ショックですよ。顔はイケメンなんですから、さっきみたいに名前を間違えるのはしょうがないかもですけどね」
「ねえ、どうして上下さんがここにいるの?」
「はい、上下愛数です」
秀人は勘違いとは言えず、「入ってくれるなら」という由那の言葉もあって上下愛数も山田三咲先輩に続いて女子バスケ部に入部することになった。