16:自己紹介
集合時間に近付くにつれてバラバラと人が集まって来ていた。
まず初めに来たのは、撮影スタッフのプロデューサーとカメラマン、割と何でもできるアシスタントの計三人。
女子バスケットボールが人気急上昇中と言っても、プロの世界で金メダルの活躍をしている女子サッカーや女子ソフトボールのような認知度はない。そのため少ない予算を上手くやり繰りしてこの企画は実現されている。
天賦の才を持つ少女たちが活躍する姿は、最高に面白くて見ている人に元気ややる気を与えるものだった。
それは去年の秋に流された第一回の放送がショートコーナーながらもたくさんの声が寄せられたことから明らかだ。
男子に引けを取らず高校生離れのプレーをする少女達が誰なのかに始まり――特に一年生で全国優勝したチームを牽引した彼女は誰なのかに行き着いた。
中学でも二年生のときからエースを張りインターミドル三連覇。高校へ上げって直ぐのインターハイでも最優秀選手に選ばれた。
第二回の今回も彼女は呼ばれている、というかこの学校の――。
「今回もよろしく頼むよ」
「お久しぶりです。こちらこそ、お願いしますね」
番組スタッフと握手を交わす今宮ひかるが今のメンバーでは連続で籠球小町に選ばれ、今季の高校女子バスケットボール界でトップクラスの実力を持つ人の一人だ。
去年から変わらず明るい茶髪を二つに結び、年齢不相応な妖艶さを含んだ笑顔は一回り年齢の離れた番組スタッフを震わせた。
全員が揃ったことを確認して、アシスタントが皆を呼び集める。
番組スタッフが簡単な自己紹介と今日のスケジュールの説明をして、次に茉莉たちが挨拶と自己紹介をする。
「指名をしてもらったので、私から。東山茉莉、中学三年です。私はアイドルチームですが、自分にできることを精一杯に頑張ろうと思います!」
ポニーテールを上下にピコピコさせ、良く通る声で茉莉は言う。
同じくアイドルチームに属すショートヘアの子が続ける。
「もしかしたら見覚えあるかな~くらいにはテレビに出てる、早見悠奈です。今日はよろしくお願いしまーす」
茉莉と同い年で、茉莉より一年長くアイドルをやっている悠奈は、可愛らしく小さく手を振りながら笑顔で挨拶をする。茉莉と違ってテレビ用の顔を上手に作れるくらいには場数を踏んでいる。
あとは籠球小町の人が順番に挨拶をして、最後にバックアップメンバーが挨拶をした。
バックアップメンバーには、話題性と両チームの実力を少しでも埋められるような地元の選手が加わっている。
一人は会場校の主力選手の一人であるメアリー・ヘブン。
もう一人は碧南中学で有名な三浦姉妹の妹の方。
肩にかかるくらいの栗毛と頭の左上で小さく括っていて部分がリスの尻尾のように愛くるしい。少し大人な籠球小町と比べれば子供っぽく見えるが、近い将来に籠球小町と呼ばれるだろう。妹の実力もドリブルスピードだけなら中学生で一位なので、高校生を相手にしても十分戦えるはずだ。
「……三浦妹、よろしくお願いします」
余分な時間がないため急いでそれぞれのチームに分かれてゼッケンを身に着ける。
ユニフォームは、特別用意されていないのでそれぞれの学校のユニフォームや体操着を着ていた。体操着組なのは、茉莉と悠奈、キアラの三人だけだ。
【籠球小町チーム】
4番:今宮ひかる PF 王華高校二年(名古屋)
5番:日高遥華 PG 赤坂高校一年(福岡)
6番:佐倉深雪 SF 開成高校三年(三重)
7番:小倉あかね C 鳳凰高校三年(京都)
8番:上園青空 G 千駄ヶ谷中三年(東京)
(※上園青空は、高円寺高校一年の野田佳澄の代理で参加)
【アイドルチーム】
4番:早見悠奈 SG 湘南第一中三年(東京)
5番:東山茉莉 PF 天応中三年(東京)
6番:三浦妹 SF 碧南中三年(名古屋)
7番:キアラ・セラフィム C 中京高校一年(名古屋)
8番:メアリー・ヘブン PF 王華高校二年(名古屋)