03:異端児
大神に連れられて昼休みの体育館に滝浪滴は連れて来られた。
そこにはすでに大勢の人だかりができている。
それもバスケットゴールを中心にハーフコートを囲うように集まっているため、そこで何かが行われているのを見ているようだ。
「どうしてそんなところで男子が女子に一本背負いされてるのよ?」
その中を見て、まず始めに思ったのが柔道着を来た女子に、二メートルはあるだろうかという男子が投げ飛ばされているのは何故だろうという疑問だ。
「あいつは頑丈だから、例えコンクリートの上に叩きつけられたって平気だ」
「え、私に見せたかったものって、ビックリ人間の衝撃映像なの?」
もしコンクリートに投げつけられ、無事であってもなくてもそれは衝撃映像に違いない。
ここはコンクリートでなく板張りの体育館なので打ち身程度で済むだろうけど、昼食前にそんなものは見せないで欲しい。
「いや、これを見せたかったわけじゃない。バスケの勝負を見せて欲しいってリーダーに頼まれたんだ」
「リーダーって……小学生でもないんだから止めた方がいいわよ」
滴の中でリーダーというと、数人の子供が集まって面白おかしく遊んでいる姿が思い浮かぶ。
大神という世界の中心は自分という男とは、イメージがかけ離れていると思って少し笑ってしまう。
前を向くと大神の言った勝負が始まるようだ。
勝負をするのは、確か同じクラスの田崎という子と背の高い上級生の人。
上級生の人は柔道着を着ており、さっきまで男子柔道部で昼の練習をしていたところを、無理やり連れて来られたらしい。
その代償としてここまで無理やり連れてきた男子が一名、いや一命、犠牲になっていた。
勝負のルールは、柔道女子にかなり有利のようだ。
まず田崎さんは攻めだけ、柔道女子は守りのみ。
しかも三ポイントラインより外側のシュートは無効。また、レイアップなどゴール下から簡単に入るシュートも禁止である程度離れた所からのシュートしか得点にならない。
十本連続で田崎さんが得点できなければ負けということらしい。
「いや……これは無理でしょ」
いくら初心者だからといっても、体格差は男子と女子よりも酷い。
柔道女子は先ほど投げ飛ばした男子と身長でそう負けておらず、百九十センチ近い身長がある。
対する田崎さんの身長は私と同じ百七十センチくらいだろうか。
審判役の男子バスケ部員が変則1on1勝負開始の笛を吹き、柔道女子から田崎さんにボールが渡された。