39:幕間
準決勝は昼食後に行われるため、つい先ほどまで試合をしていた竹春高校にも一時間弱の休憩時間がある。
選手たちは身体を冷やさないように気を付け、食べ過ぎない程度に適度な昼食を摂る。
観覧に来ている人達は、早めの昼食を摂って会場に戻ってきていた。
二十分ぐらい経つと試合間隔のあいた霜月高校が軽めの調整を始める。
それと同時刻に午後から来る組がぞくぞくと登場していた。
代表選手を抱え実質地区最強の霜月高校見たさで仕方なく来ているものもいた。
誰だって負けた大会に再び足を運びたくはないものだ。
それを監督とかコーチとかお節介な人とかに嫌々連れてこられたのが午後組の大半だ。
その筆頭が金髪ツインテールの小柄な少女だ。
「……コハル、まいご……」
「ここの席って空いていますか?」
雛壇になっている観客席中央の特等席目当てで爽やか系の少女がアリスに話しかけていた。
アリスはチームのみんなから離れて、一番いい席に座っていた。そのときに小春と離れてしまい、代わりに不知火が両隣の空いているアリスの左側に座った。
「ありがとう」
「……こまる……」
「えっ、何か言いましたか?」
“こはる”と“まいご”を混ぜただけで言葉通りの意味じゃない。
ただ一人ぼっちだと少し心細いと思っているのは大会で敗退して気持ちが沈んでいるからなのかもしれない。
そこへ残る一席を見つけて特徴的な髪色の少女がやってくる。
「おっ、特等席がちょうど一人分空いてる。いっれてー」
「……」
「!」
「なんだ。泣き虫がいるじゃん」
「泣き虫じゃないです!」
「……さわがシイ」
「とりあえず、座っていい?」
黒色、金色、赤色と絶対に混ざりあわない色彩が揃ったとき新たな運命が動き出す?
***
雛壇の最上段を後ろへ行って、コートから離れたところで遠巻きに見下ろす学校がいた。
竹春高校と縁が深く、今日見せた最後の手札で霜月高校を超える人材がようやくそろった創部二年目の学校。
部を結成してフルメンバーが揃った状態なら全国出場を逃していない学校は、次の試合に冷めていた。
自分たちと同じような言い方をすれば、両校の手札はこの予選で出し切っている感が強い。
攻撃に分があるとは言い切れない竹春は、エースが向こうの堅い壁を突破できなかったら八方ふさがりだ。
そしてその確率は非常に高い。
決勝を戦う相手の選別のために亜佐美が予想した勝者は決して喜べないものだった。
「ここまで来たのは出来すぎ……とは言わないわ。これより先に行きたいなら、せめて去年の竹春たちより強いという所を見せなさい。私たちは先に決勝で待っているわ」
足早に十有二月学園は会場を後にした。