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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(決戦編)
196/305

24:原石と宝石の姉妹 上


 真彩に対して三人のマーク。


 一人一人が守備のスペシャリストで絶対に抜かせないようにしているつもりだと思うが、マークが増えたことで真彩の選択肢が増えしまっていた。


 姉である由美も知らない彼女の持つ特定条件が今の状況になる。



「ついてきてよ!」



 目の前にいるのが三年生だろうと関係なく強気な真彩は、相手を引っ張ってドリブルをしていく。


 何度も真彩に振り切られている月見と、それに続いて出雲、さらに少し離れてもう一人。


 ただ横にスライドするだけの真彩のドリブルは、もう相手の眼には慣れてしまっているようだ。まさかそれが、真彩の欲しかった最後の条件だと相手は知るはずもない。


 つい先日の竹春高校との共闘まで封印していたドリブルであり。


 朝の練習ではやりたくてもやれないドリブルでもある。



「ほら、遅れてる! もっと早く鋭くこいよ! ほら、ほら、ほらっ」



 月見は、この動きに慣れているはずなのに次第に半歩、一歩と出遅れるようになっていた。


 その根底にあるのは、真彩が相手の動きを見る動体視力だ。


 真彩は自分が持っている恵まれた眼力と俊敏な足腰で、こちらの動きに慣れたと勘違いしている月見を容易にトレースして、出雲が月見の横へ出て来るタイミングを計った。


 二人の人間の間は狭いけど、ボールを通すだけなら簡単なもの。


 そこへパスを出す動作を入れると面白いことが起きる。



「やばっ」「ちょっと!」



 間を通すパスが来ると思って出雲が一歩踏み出し、月見は切り替えして戻る――――――――すると、その二人が衝突して尻餅をついてしまった。


 その顛末をニヤリと見てから、平然とドリブルに戻る真彩は、三人を置き去りにして、苦も無くレイアップを決めた。


 後半の頭に見せたのが今の真彩にできる全力のプレイであって、何の偶然もなければマグレでもない。れっきとした実力だ。



「何人来ようと、私は止められないよ」



 その言葉通り、真彩の快進撃は続いた。


 マーク二人以上が真彩より前にいる状況なら、そのどちらかのスピードを模倣して、もう片方が来るタイミングで切り返すものだから、相手は味方が敵になっていた。



「これはなんとも……厄介ね」



 これの対処としては、真彩のスピードに慣れている月見か出雲だけのマークに戻せばいつかは止められる。霜月の選手ならこの試合中には修正できるはずだ。


 しかし1on1で絶対の自信を持つ真彩が他を用意していないとも限らない。


 ちょうど昨日の試合で留学生の金髪ツインテールがしていたことに近いことを、やろうとしているのを由美は覚えていた。


 そんなキャプテンの思いを知らない二人はできることをするだけだった。



「どうする?」「判断に困るね」



 動揺はしているが、全国ほどの重圧は感じない。


 試合も後半なので対応は早かった。


 二人の判断は、この場をいったん他の誰かに預けることだった。


 いつかは来るだろうと思った相手が真彩の前に立ちはだかる。



「こうするしかないでしょう?」


「ようやく、勝負だね。お姉ちゃん」



 霜月高校の最後の砦、子津由美が子津真彩を止める。


 ここが勝負のターニングポイント。


 そのくらい試合に出ている選手はみんな分かっていた。



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