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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(決戦編)
193/305

21:原石のまま2


 毎朝のように続く真剣勝負は二人がバスケに出会ったときからずっと続けられていた。


 バスケットボールの溝が擦り減って見えなくなったものを使い続け、家のベランダにぶら下げた手作りのゴールを背に片方が守り、もう片方が攻める。


 今年の五月初頭。ちょうど世間はゴールデンウィークのときに姉の子津由美は、U―18女子バスケットボール代表に帯同して世界を相手に戦ってきた。


 もちろんチームの中には赤坂高校の長岡萌や田村高校の三浦姉妹などの常連組はもちろんいて、逆に代表の招集を受けてもチームに合流しない逆常連組の元千駄ヶ谷中メンバーは一人もいなかった。


 それが影響したのかどうか、今年の代表戦はいつも以上に酷い結果だったが、キャプテンの子津個人の成績だけ見れば例年以上の成果を見せていた。


 大会で優勝したのは、いつから優勝し続けているのか分からないアメリカ代表だった。


 予選ブロックで同組だった日本が、その優勝国を相手に互角に渡りあった奇跡の試合は決して一人だけの力じゃないだろう。


 しかし何度も相手をフリーにさせてしまい、一対一の状況下で守りきった一人の活躍は大きかったのもまた事実だ。



 同じ大会に違うチームで出場しても朝の練習は日常として行われた。



「お姉ちゃん。私、最近、知ったことがあるんだ」


「何? 今日は軽めにしてすぐ上がるわよ」


「――今日の試合は楽しみにしておいて」



 何気ない日常の会話でも変化はあった。


 基本的に周りに関心を示さない妹が、最近はそうでなくなった気がした。


 何がきっかけになったのか由美には分からない。


 分かるのは、自分以外の誰かを見て妹がそこを目指そうとしている。



「勝つのは、私よ」


「それはどうかな!」



 この日の試合は変則的な時間で行われる。


 というのも、前日に行われた反対側のブロックの準決勝戦が今日へ持ち越されたからだ。


 昨日は、急な停電とブレーカーが破壊されていたことで照明を使えなくなって残り一試合の予定を消化できずに翌日に持ち越しになったのだ。


 奇しくも今日行われる準々決勝、準決勝の前哨戦となる試合は、前年度優勝校と無名校の試合のため見に来ている人は少ない。これがもし昨日行われていたとしてもそれは変わらなかっただろう。


 その前の試合で疲弊した十有二月学園は、一日経った今日でも天野や西條をスタメンには起用せず守備的な布陣だ。


 全国が決まる大事な試合だが、前の試合で疲れが抜けていないのを考慮しての事だろうが、コート上には目立った活躍が出来そうな選手はいない。


 怪我を隠して強行出場しているエースの風見鶏さえ一人で試合を決めることはできないと周りは見ていた。



 それは、また十有二月学園という創部一年目で全国へ行き、予選では霜月高校を倒している学校のことを再認識させられる試合になった。



 去年のように大会の途中から加わった風見鶏の代わりになる選手。



 それを用意していないはずがなかった。



 十有二月学園はそういうチームで、全国では史上最凶のダークホースとして君臨する。



 ――準決勝戦は、ただ一方的に十有二月学園が蹂躙しただけの試合となり由那たちのブロックの一日が始まる。



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